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すき

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歩けども、歩けども

歩けども、歩けども

歩きながら、考え事をしている。

信号が、赤に変わった。大通りと細い通りが複雑に絡まる交差点、高速道路の入り口でもある。青に変わるまで、結構、時間かかりそう。向こうから、トラックが来た。交差点に差し掛かる、数十m前からブレーキを踏み、緩やかに停止した。前に、3人乗りのようだ。運転席と助手席の間に、座高を高くした、金髪の若者が座っている。運転しているのは、1番のおじさんっぽい。彼は、とても退屈そうに

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がんばんなさいよ

がんばんなさいよ

「"がんばれ"ってあまり人に言わない方がいい」
「無理に頑張らなくていいんだよ」

昨今の社会ではそんな言葉をよく聞く。
確かにそれもそうだと思う。
頑張る、特に無理をして頑張ると何かしらの負担がかかり、心や体に支障をきたすこともある。
それはわかっているのではあるが、人には頑張って立ち上がらなければいけない時もあるし、何かを頑張ったことで自分の未来が開けていく時もある。

そして私には、自分がし

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人生を幸福に仕上げるコツはウインナーコーヒーにあるのかもしれない 《会社員》

人生を幸福に仕上げるコツはウインナーコーヒーにあるのかもしれない 《会社員》

「こんな簡単なこともできないのか」

会社で言われる度に落ち込んでいた。
私には、"簡単なこと"ができない。

・・・

およそ10年前——

特に栄えてはいないが、田舎とは言えないような町。ほどほどに人々が笑い、青ざめて見える。涙を忘れたかった日々。風に流され、空き缶が不気味に音を立てながら転がっている。

駅前の混雑も落ち着き、会社員たちが概ね出勤しきった午前10時半頃、私はゆらゆらと町を歩い

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今週末の日曜日、ユニクロで白T買って泣く

今週末の日曜日、ユニクロで白T買って泣く

今週末の日曜日、私はユニクロで泣く。

いつも行く、イオンの4階に入っているユニクロで。きっと、震えながら白のエアリズムコットンオーバーサイズTシャツ(5分袖)を手に取って、泣く。

何の話か全くわからないと思うけど、今、たった今3時間前に起きたことを、心臓をばくばくさせながら、今日は書く。

私の家は、奈良にある。近鉄電車の快速急行が止まる駅。そして、家の94%を、地元の20代以下に開放している

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さよならあの日のロッテンマイヤー

さよならあの日のロッテンマイヤー

子供心。
かつて子供だった私たちが理解している感情で、例えそれを忘れ去ってしまったとしても、水底に沈んでいるだけのようなものだ。
それは、ふと心が波打った時などに戯れに水面に浮かんで来ては、一部分だけ読めなくなってしまった暗号のように、謎めいた風を装って、記憶を刺激してくる。

で、大人心という言葉があるのか知らないけれど。
大人心というものは、子供には理解がてんで及ばない。
なぜなら、子供はまだ

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そのための春

そのための春

 自転車がパンクした。家からちょっと走ったところで後輪からパンッという音がして、ペダルを漕ぎ出してからついに「ああ、やっぱりパンクか」と現実を受け入れた。
 買ってからまだ3ヶ月も経たないが、空気が抜けてしまったのだろうか。空気入れを借りるため、近くの自転車屋へと駆け込んだ。

 新代田の近くの商店街にあるサイクルショップ。その店先におばちゃんがひとり佇んでいて、「あのう…」と小さく声をかけた。

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広告だらけの羅生門

 ある日の暮方の事である。一人の下人が、羅生門の下で雨やみを待っていた。<PR:梅雨におすすめ!コスパ最強の折り畳み傘は?>

 広い門の下には、この男のほかに誰もいない。ただ、所々丹塗にぬりの剥はげた、大きな円柱に、蟋蟀 <PR:読みが難しい語3万語を採録!難読漢字辞典> が一匹とまっている。羅生門が、朱雀大路にある以上は、この男のほかにも、雨やみをする市女笠や揉烏帽子<PR:今年こそ差がつ

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母をたずねて三千里は距離感バグりすぎ。

母をたずねて三千里は距離感バグりすぎ。

母をたずねて三千里といえば昔やってたアニメ。めちゃ昔にやってて、私は子どものころに再放送かなんかで見たような見てないような。

この種類のアニメといえば、フランダースの犬とあらいぐまラスカルだ。

が、フランダースの犬にしても、あらいぐまラスカルにしても、そしてこの母をたずねて三千里にしても、その物語の詳細をまったく覚えていないのが心苦しい。

フランダースの犬もあらいぐまラスカルも、タイトルだけ

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【鞆の浦リモンチーノ】瀬戸内レモンのフレッシュな芳香で「福」を呼ぶリキュール(広島県福山市)

【鞆の浦リモンチーノ】瀬戸内レモンのフレッシュな芳香で「福」を呼ぶリキュール(広島県福山市)

「鞆の浦リモンチーノ」は、広島県福山市や瀬戸田町のレモンを蒸留酒に漬け込んだリキュールで、栄養士の資格を持つ3人の女性が中心となり、2020(令和2)年から週末や余暇を利用して造っている。鞆の浦の古民家を改装した酒造所で、「ともの」代表の村上百合子さんに話を伺った。

「レモンは自然農法にこだわっています。果皮を使用するので農薬はもちろん不使用。安全安心な食材を口にしてもらいたいし、格段に香りがい

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猫は日中何してるんだ考

猫は日中何してるんだ考

あんずがわが家に来てから1年半くらいたった。あんずというのは写真の彼女のことである。

公園で首輪をつけたまま迷子になっているところを保護され、保護団体の譲渡会でわれわれと出会い、縁あってわが家にやってきてくれた。

普段私は在宅勤務をすることが多く、朝から妻が仕事にこどもたちが保育園に行くとわれわれ2人きりの時間になる。
とはいえ日中あんずが仕事部屋に来ることはあんまりない(さみしい)。いつも何

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ヒミツの女子会

ヒミツの女子会

かんぱ〜い

予定外の乾杯だった。

その日は息子の学校行事のために私は休みをとっていて、母を誘ってランチをする予定にしていた。

私の妹の子どもも私の息子と同じ小学校に通っている。
私も妹もフルタイムで仕事をしているので、学校行事のために終日休みを取ることは少ない。
その日は、妹も休みが取れたということだったらしい。

せっかくだから、みんなでランチをしようということになった。

私たちはランチ

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イトーダーキ「ワイがエヴァンゲリオンに乗るってこと!?」

イトーダーキ「ワイがエヴァンゲリオンに乗るってこと!?」

イトー「おいおいおい、話があるって言うから東京まで来たのはいいけどさ、ワイにこの巨大なロボットに乗れってかい? それは話と違う気がするんですけど」

潮永「いいから黙って乗ってください。おもしろいことにはすぐに首を突っ込む人でしたよね?」

イトー「……潮永さんね、いくら私でもそれはキツイですって」

潮永「あ〜、せっかく東京まで来たのに? ほら、あそこで大川さんも森井さんも見てますよ?」

大川

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世界は色を変えて、

世界は色を変えて、

世界は色を変えて、進んでく。
それは、目にも鮮やかで、
私たちはそれを幸せだと言う。

尊いと、
宝物だと、
愛おしそうに見つめてる。

その横で、
誰かのすすり泣く声がする。

痛い、
汚い、
暑い、
苦しい。

誰の声だろう。
誰が泣いているのだろう。

まだ、間に合うのだろうか。

その声が、消えてしまう前に。
涙が溢れて、世界が水浸しになる前に。

あの山のむこうに(2023.09.06)

あの山のむこうに(2023.09.06)

「あの山のむこうに・・・」
そう言うと次男(2歳)がびびる。

鬼だのなんだので簡単には脅しが効かなくなった次男への唯一の有効手段が今のところこれだ。

どういう経緯でこの「あの山のむこうに・・」を使うようになったのか自分でも忘れてしまったが、どうしても次男が言う事を聞かない時、例えば幼稚園のお迎えでなかなか靴を履こうとしないとか、オムツを替えようとしないとか、歯磨きをしようとしないとか、そういう

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