詩旅 つむぎ

エッセイ|恋人との暮らし|パニック障害やHSPと向き合いながら日々の想いを紡いでいます…

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エッセイ|恋人との暮らし|パニック障害やHSPと向き合いながら日々の想いを紡いでいます|X(Twitter)も見てね🫧|2024.2〜note開始🕊️

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8年ぶりにできた恋人が、私の夢を推してくれた話

自分を、平凡未満だと思う。 「私がいるんだから、絶対大丈夫よ」 そう—— やっと言われた。 ・・・ まだ朝か夜かも曖昧な、薄暗い道を歩く。 何もわるくないのに謝っていた。 雑音とともに乗り込むにんげん、私。不気味に揺れる通勤電車。車窓にはやせ細った男が映っている。 たまたま私の前に座っている人が立ち上がった。投げ入れたティッシュがごみ箱にすとんと入った時のような、わずかな幸福だ。 なんとかしてもぎ取った座席。 数分ですら立っていたくない。 電車はまた次の駅に到

    • 新居の鍵を受け取った。等身大で生きていく

      「私がいるから、絶対大丈夫よ」  葉桜が光と踊っていた。風に吹かれ、帽子が飛ばされそうになる。自分から探そうと思わずとも、春になると視界には花が差し込んでくれた。花壇に植えられたチューリップを見て、あなたは顔をほころばせながら笑っている。  私はふと見上げた。  空が青い理由をたしか昔勉強した気がするが、もう、忘れてしまった。あなたと出会うまで、私はそもそも空の色なんて確認していなかったように思う。空が綺麗だという感想すら、いまいちピンときていなかった。  ただ今なら思

      • 父、30歳こえた私と手を繋ぎたい理由

        「もう、今日くらいしかないだろう」  私の父はわかりやすい。動きを見たり、表情を見たりすれば一発である。何度も窓の外に目をやったり、もう朝に掃除をしたはずの場所を何度も布巾でこすっている。ぼんやりしているふりをして、私の方に目線を向けているのがばればれすぎて可笑しくなってしまう。 「しばらく一緒に出かけられないかもしれないしね」  そう気恥ずかしそうに私は答えてしまった。もっと、孝行を伝えたらよかった。後付けだったとしても、「いつでも帰ってくるからね」くらい——  来

        • 今年の春「ごめんなさい」を卒業する

           ふたりで迎える春は、これが初めてである。  春夏秋冬、人は毎年季節が巡ることを知っている。だが明確に、あの年の夏、など記憶にあるだろうか。それも、幸福なものにかぎるとしたら、どれほどの人が心に携えているのだろう。   春という季節はあっという間だ。「一夜」のように短い。どうやら全国で毎年桜が咲いていたようだが、どうにも私の記憶には見当たらない。さすがに桜という花の存在は知っていたが、私に必要ないものだった。神様や天国のように、掴むことのできない空想であったからだ。  

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        8年ぶりにできた恋人が、私の夢を推してくれた話

          愛する人よ。私は休む勇気がほしいな

           目の奥が、じんわりと熱い。  私が感じる幸福は、いつも砂粒のようだった。手でしっかりと掴めない。指の隙間からさらさらと抜けていくのを、涙とともに追いかけていた。待って、待って、と。  私は週5日正社員として勤務し、そこそこの残業をしながら忙しい日々を送っている。だがきっと他の人が私の仕事をしたら簡単にこなせてしまって、まさかこれを「忙しい」と形容するなんてと鼻で笑われてしまいそうだ。  日々仕事を終えたら、身体がぐったりとする。夜空を見上げると、そのまま後ろに倒れてし

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          同棲のために10年分断捨離したら、棚からぼたもちだった話

           想像したことがなかった。  誰かと肩を寄せ合い、生活することを——  ・・・・  今の私は父とともに暮らしている。いわゆる実家暮らしと言って差し支えない。  10年前私が一人暮らしをしていた頃、会社に何とかしがみ付き、仕事に忙殺されていた。家に帰ればひとり。会社に行ってもひとりのような気分だった。  学生時代友人はいたが、とてもじゃないがこんな惨めで鬱々とした自分の姿は見せられないと思い、気づけば私は友人全ての連絡を絶ってしまった。  当時夜は長く、昼も長く感じ

          同棲のために10年分断捨離したら、棚からぼたもちだった話

          パニック発作が起きた朝、呼吸を整えるためにやっていたルーティンを6年ぶりに再現する

           どうしてこんなに自分は弱いのだろう。  6年前の私。もう何度も思った。「強い」「弱い」の定義も曖昧なまま、私はとにかく自分を弱いと言って咎めていた。  朝、いつも通り起き上がる。鬱々としている自分を誤魔化すか、もしくは深く考えないようにして身体を動かす。頭を使って少しでも動いてしまえば、身体と心がショートしてしまいそうだったから。  洗面台の前に立つが、鏡はほとんど見ない。顔を洗い、髪を濡らして寝癖を直した。  今日は問題ない。いける。会社にいけるぞと意気込んで私は

          パニック発作が起きた朝、呼吸を整えるためにやっていたルーティンを6年ぶりに再現する

          「好き」を仕事にして「嫌い」になる覚悟はある?

           私は今、好きなことを仕事にできていない。 「おはようございます」  挨拶をしたら挨拶が返ってくる。そんなあたたかい職場だ。私が昔勤めていた会社はそうではなかったから、今の環境は心踊るほど豊かな環境である。  今の会社に入社して半年以上経った。  だいたい仕事のことは理解し始めてきた、なんてまだまだ到底言えそうにない。毎日慣れない業務の連続。わからないことが積み重なると、頭の中が真っ白になってしまう。加えてすぐに人と比較してしまい、自分の矮小さに落ち込んてしまう。定時

          「好き」を仕事にして「嫌い」になる覚悟はある?

          無趣味でもいい。まずは自分の満たし方を知って、緩やかな生活を

          「趣味なんですか?」  今までの人生で、この質問を受けたことのない人などいないだろう。私はこれにうまく答えられた試しがない。  趣味=特技とまでは言わないけれど、趣味というくらいなんだから、そりゃあその分野には詳しいよね、だって好きなんだから。みたいな圧を感じてしまう。全て妄想なのだろうけれど。  でも皆、無意識に質問してしまうだろう。例えば読書が好きと言ったら、じゃあ好きな作家さんは誰?と続けて聞かれる。これに私は"面接っぽさ"を感じてしまう。答えられるのだけれど、細

          無趣味でもいい。まずは自分の満たし方を知って、緩やかな生活を

          文章を書いて生きていくなんて夢物語をさ

          「これお願いします」 「確認、報告待ってます」 「◯◯は何日までにお願いしますね」  きっとそんな内容が朝からSlackとLINEに届いている。開くのは出勤してからにしようと思い、電車内でつらつらと文章を書いている。  文章を、エッセイを書いていたいのに、朝から仕事のことで頭がいっぱいだ。  それでも私は書いて生きたいから。誰かに決めてもらったわけでもなく、何か報酬があるわけでもないのに、ここnoteの更新を続けている。  世には働きながら資格を取ったりしている人もいる

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          春なんて、うまくいくはずないんだから

           入居審査に落ちてしまった。  私の人生、うまくいったことなどそうない。これくらい想定内だ。私は常に自分を取り巻くあらゆることが、"うまくいかない"と思って生きている。  最近あたたかい日が増えてきた。目に入ってくる緑。瑞々しさを帯びた太陽。アスファルトからくる僅かな照り返し。痩せたカラダ。乾いた貯金。  春にはあまりいい思い出がない。  記憶のほとんどを私は美化しないところがある。  入居審査に落ちてしまった。  大事なことなので2回言った。  数ヶ月前から交際

          春なんて、うまくいくはずないんだから

          拝啓10年前うつ病だった私へ。今の私を見てどう思いますか?

           初めてうつ病になったのは、およそ10年前。  新卒で入った会社で、仕事量に押しつぶされ、責任に疲弊し、罵詈雑言を身体中で浴びたのち、私は目を血走らせながら家の玄関で倒れ込んでいた。  家にたどり着けた時はまだよかった。  私は帰りの道でよく座り込んでしまった。あと5分歩けば自分の家に帰れるというのに。  帰る理由がわからなくなってしまうのだ。帰って何をする。ひとりで何をしたらいい。シャワーを適当に浴びて、コンビニの弁当をもそもそと食べて、そうして横になるだけではない

          拝啓10年前うつ病だった私へ。今の私を見てどう思いますか?

          人生を幸福に仕上げるコツはウインナーコーヒーにあるのかもしれない 《会社員》

          「こんな簡単なこともできないのか」 会社で言われる度に落ち込んでいた。 私には、"簡単なこと"ができない。 ・・・ およそ10年前—— 特に栄えてはいないが、田舎とは言えないような町。ほどほどに人々が笑い、青ざめて見える。涙を忘れたかった日々。風に流され、空き缶が不気味に音を立てながら転がっている。 駅前の混雑も落ち着き、会社員たちが概ね出勤しきった午前10時半頃、私はゆらゆらと町を歩いていた。 太陽があまりに目にしみる。 私はくたびれたスーツを身にまとっていた

          人生を幸福に仕上げるコツはウインナーコーヒーにあるのかもしれない 《会社員》

          パニック障害になった私が決めている3つのルール

          「治るのに10年かかりますよ」 異世界に飛ばされたような、白い部屋だった。 ・・・ ・・・ 朝起きる、というよりは"気がつく"ような状態が続いた。 身体の隅々まで疲れきっているはずが、心が休まらないかぎり、私の身体は眠ってはくれなかった。所謂"気絶"を毎日繰り返していたと思う。 身体中が震えた。 特に手が震え、足が震えた。歯が奥の方から勝手にガタガタと動き出す。震えは次第に、しびれに変わった。そして数分後には腕全体が、自分のものではなくなっているかのように冷たく、

          パニック障害になった私が決めている3つのルール