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夕遊の映画座

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マガジン機能の練習中。見て良かった映画の感想をまとめています。おすすめを紹介していただけると、喜び踊ります。
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努力と仲間とダンスへの情熱と。映画『熱烈』中国、2023年

努力と仲間とダンスへの情熱と。映画『熱烈』中国、2023年

元気がでる映画シリーズ第2弾。ダンス(ブレイキン)は全然知りませんが、見ているだけで熱くなれるのがいいところです。主演の王一博(ワン・イーボー)はローティーンの頃からダンスがすごい人なので、彼のダンスの凄さがメインだろうなと思って見に行ったら、見事にいい意味で裏切られました。

お金持ちの息子で、チームのスポンサーでもあったケビンに逃げられた杭州のダンスチーム「感嘆符!」。昔、チームのコーチは昔、

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イギリス少女たちの武闘派コメディ。映画『ポライト・ソサエティ』イギリス、2023年

イギリス少女たちの武闘派コメディ。映画『ポライト・ソサエティ』イギリス、2023年

えーっと、今まで見た映画で一番キャッチコピーに悩みました。イギリス映画なんですけど、主役はパキスタン系の姉妹。家族はイギリスのパキスタン系の社会で生活してるんですけど、主人公のリアはイギリスの地元の女子校に通ってて、いろんな友だちがいるし、空手(カンフー?)教室にも通ってる。そして、夢は映画のアクションスタント。

イギリスに住むアジア系の女の子が主人公の映画といえば、なんといっても『ベッカムに恋

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映画『THE FIRST SLAM DUNK』復活上映に行ってきました。

映画『THE FIRST SLAM DUNK』復活上映に行ってきました。

7月下旬から約1ヶ月、ひたすら仕事先と自宅にこもって忙しかったので、お盆頃にはとうとう限界。なにもアウトプットできなくなりました。というわけで、友達を誘ってエネルギー補給。また映画館で見れてうれしいです。

スポーツとかアニメに全く疎い友達を誘ってのデートでしたが、見終わった後、「すごくいい映画だった!」って言ってくれたのでよかった。せっかくなので、原作も超絶プッシュして、感想を聞かせてくれるよう

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中国の建物と街並み詳説絵巻『建築知識』2024年7月号

中国の建物と街並み詳説絵巻『建築知識』2024年7月号

発売前から評判だった専門雑誌を予約購入。中国ドラマや映画をみるときや小説読むときの参考になればと思ったのですが、ファンシーな表紙のイラストの真逆をいく、「新石器・古代王朝から清朝まで」のすさまじく楽しい特集内容に歓喜しています。

建築については全然わからないので、すみません、内容のすばらしさを表現する語彙力ありません。とにかく開くページ、開くページの素敵な建築のイラストと詳細すぎる説明に見応え、

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奈良と鹿と初夏の散策。『空海―密教のルーツとマンダラ世界』奈良国立博物館

奈良と鹿と初夏の散策。『空海―密教のルーツとマンダラ世界』奈良国立博物館

友だちと久しぶりの奈良デート。行先はもちろん奈良博。空海展ということで、混んでいることを予想。早起きして、開館前に到着するように待ち合わせ。奈良公園では、鹿たちがすでに、せんべい屋さんの前でスタンバイ。どちらも気合充分です。

さて、「空海」展ですが、すごくよかったです。ほとんど撮影不可だったので、詳しい内容を知りたい方は、公式サイトをどうぞ。平安時代(9世紀)の五智如来蔵とか、十二天像、不動明王

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大好きな人たちと見たい映画『バジュランギおじさんと、小さな迷子』2015年、インド。

大好きな人たちと見たい映画『バジュランギおじさんと、小さな迷子』2015年、インド。

数年前にものすごく評判がよかったので名前は知っていたけれど、劇場に行く時間がなくて未見だったインド映画。今週末から1ヶ月くらいの間、日本各地で再上映されることになったようなのですが、フォローしている映画詳しいアカウントから一斉に、「絶対見て!」メッセージであふれてきたので、久しぶりに夫と映画館デートしてきました。

ストーリーの基本は単純。迷子の女の子を、お人好しのおじさんが送り届ける話。予告編だ

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「14億分の10憶」のリアル『中国農村の現在』田原史起

「14億分の10憶」のリアル『中国農村の現在』田原史起

読む前から、間違いなく田原先生の本なら面白いだろうなと期待させられる本。そして、実際隅から隅まで面白かったです。タイトルは、シンプルですが、サブタイトルは習近平を書いた、こちらの本を意識したものですね。

田原先生が中国関係の仕事を初めた頃、中国は8割が農民人口だと言われた発展途上国。今では都市化率60%以上とも言われますが、都会に住んでいても実家や戸籍が農村にある人は70%くらいでざっと10憶人

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耽美をめぐる社会情勢と魅力『BLと中国』周密

耽美をめぐる社会情勢と魅力『BLと中国』周密

以前から興味を持っていた分野なので、すごく読みたかった本ですが、発売前から重版がかかるほどとは。ドラマ『陳情令』の原作『魔道祖師』や『天官賜福』の作者・墨香銅臭さんのインタビューが掲載されていた『すばる』2003年6月号もすごかったですから、当然といえば当然なのかも。

さて、周密さんの『BLと中国』は、日本でいわゆる「BL」とされる物語が、中国では「耽美」(Danmei)と呼ばれている、その語源

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ノスタルジー上海。『長恨歌』王安憶(飯塚容訳)

ノスタルジー上海。『長恨歌』王安憶(飯塚容訳)

予備知識ゼロで手に取った、王安憶の長編『長恨歌』。白居易の『長恨歌』と同じ名前の現代小説なんて、一体どんなだろうと読み始めたのですが、独特な文体にあっという間に引き込まれました。彼女の文体は、中国で「評論叙事文体」と名付けられたそうです。

凝った表現や、美麗な修辞でもなくて、一文、一文はシンプルで短いのに、それが一つ、また一つと連ねられると、他の誰とも違う雰囲気を醸し出す不思議。例えば、冒頭はこ

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ホームドラマみたいなドキュメンタリー映画『◯月◯日、区長になる女』2024年。

ホームドラマみたいなドキュメンタリー映画『◯月◯日、区長になる女』2024年。

たまたまSNSで宣伝見つけて、家族で見に行きました。久しぶりの大阪十三の第七藝術劇場は、別の映画の監督さんの舞台挨拶があったせいか、エレベーターフロアに人だかりで身動きとれないほど。『夢見る給食』のオオタヴィン監督の舞台挨拶だったそうです。

そういえば、日本のだし文化と、素材を生かした料理のすばらしさを撮ったドキュメンタリー映画『千年の一滴』もこの映画館で見たんでしたっけ。

さて、この『◯月◯

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日露戦争に人生を狂わされた男たちの物語。映画『ゴールデンカムイ』2024年

日露戦争に人生を狂わされた男たちの物語。映画『ゴールデンカムイ』2024年

オープニングのすさまじい二〇三高地のシーンから、主人公の杉元とアシㇼパが出会い、困難を乗り越えて相棒(バディ)を組むまで。この映画は、壮大な物語の「序章」です。内容は原作のテイストそのままですが、なんといっても生身の俳優さんたちがくりひろげるアクションシーンがすばらしい。そして、合間、合間に広がる試される大地、北海道の雄大な景色。映画ならではの表現で、原作の世界を存分に表現しています。

タイトル

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大あたりのコメディ映画『宝くじの不時着~1等当選くじが飛んでいきました』韓国、2022年。

大あたりのコメディ映画『宝くじの不時着~1等当選くじが飛んでいきました』韓国、2022年。

ヒット作があれば、パロディがつくられる。これは小説でも映画でも同じようです。パロディ作品については、当たりもあれば外れもあるので、宝くじみたい。超有名どころでは、小松左京の『日本沈没』と筒井康隆の『日本以外全部沈没』でしょうか。

さて、韓国ドラマの超ヒット作『愛の不時着』は未見ですが(そろそろ本気でnetflix考えないと)、韓国映画『宝くじの不時着』は、ポスターを見た瞬間「絶対、当たり!」の予

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「中国」との相克の戦後史。『台湾のアイデンティティ』家永真幸

「中国」との相克の戦後史。『台湾のアイデンティティ』家永真幸

タイトルを見たときは、現代台湾事情を中心にビギナー向けにまとめた本なのかなと思いました。家永さんといえば、やはりデビュー作『パンダ外交』のイメージが強くて、身近な話題をきっちりした資料と分析で、政治や歴史の枠にまとめるのが上手という印象だから、よけいに現代にシフトした話だと思ったのかもしれません。

でも、実際の内容は、サブタイトルの「「中国」との相克の戦後史」。台湾や日本の歴史について、ある程度

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好みすぎる中国古代史ミステリー。『蘭亭序之謎』唐隠著、立原透耶監訳

好みすぎる中国古代史ミステリー。『蘭亭序之謎』唐隠著、立原透耶監訳

中国の長い歴史の中でも、一番華やかな時代のイメージがある「唐」。7世紀から10世紀まで、日本でいえばざっくり奈良・平安時代です。このミステリーの舞台は、めちゃくちゃ栄えていた唐が、楊貴妃を愛したことで有名な玄宗皇帝の時代に起きた安史の乱の後、だんだん力が弱まって、帝国としてのまとまりが崩れていく時代です。

そして、この本の謎の中心になる「蘭亭序」は、有名な書聖・王羲之の作品。王羲之は4世紀前半の

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