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午後、ヒミツの逃避行。


「 すいませーん!チョコレートパフェ、1つ!」  


……はーい! 少々お待ちくださいねー。



駅前の、レトロな喫茶店。

私は、ここのアルバイト。


大学に行かず、就職もせず、

地元の喫茶店で、アルバイトをしている。


……何の取り柄もない、、


そんな私の、ある日の出来事。


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金曜日の、午後14時。

まだ、太陽が眩しい時間。


……カラン、コロン、

店のドアが動いた。


『いらっしゃいませ、お好きなお席にどうぞ。』

   

いつもの決まり文句を言い、

お客さんを見ると、、


……高校生の、男の子だった。


男の子は早歩きで、店の一番奥の席に向かう。




……平日の真昼に、どうして高校生が? 




……どうして、、  制服が汚れているの?


……どうして、、上靴のままなの…?



心に浮かんだ疑問を、口にせず、

グッと、喉の奥に飲み込んだ。





……そして、しばらくして声を掛けた。


『何か、ご注文はお決まりですか?』


男の子は、何も言わず俯いたまま、

右手の人差し指で、メニューブックを指差す。


『……"オレンジジュース" …ですね、

    少々お待ちください!』


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高校生。


それは、子どもと大人の狭間。

何もかも、中途半端。



……現実を知る。

世界は残酷で、自分は何も出来ない。


       あの人は、お金。

       この人は、名誉と地位。


人は、平気で嘘をつき、

みんな、自分のことばかり……。



そんなのは嫌だ!!

そんな人には、なりたくない…!



……でも、こうしないと、


生きていけない…。



複雑に絡み合う、理想と現実。


……高校生とは、そういう時期なのかもしれない。


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男の子は、喉を上下に動かして、

オレンジジュースを、一気に飲み干す。


……その姿、生気が身体に宿る様。



そして、グラスを机に置いて、

大きく深呼吸をする。


…スーッ、、、ハーー。



息を吐き終えると、

荷物をまとめて、レジに向かう。



「オレンジジュース、200円です! 」


男の子が、財布から小銭を取り出す。


……その時、長い前髪の間から、

ビー玉のような、透き通った目が見えた。




…私には無い、、…綺麗な瞳だった。


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男の子が、ここに来た理由は分からない。


……けど、、何となく、 

  あの、透き通った瞳を見て、


『もう、大丈夫。』 って、

『もう、生きていける。』……って、、



……そう、思った。









      



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