梅津
2021/01/26 12:24
「何か、今日炭の匂い凄いな」 ある日事務所に戻って来た上司の中田さんはそう呟いた。 彼の言う炭というのは消臭剤の事である。私達はこじんまりとした事務所で働いていて、従業員に男手が多かった事から炭の消臭剤を事務所内各所に置いていた。 「あー確かにそうですね。」 言われてみれば確かに炭の匂いが強い。普段は消臭剤に近づかなければそこまで炭の匂いを感じ無いのに。 「消臭剤、やっと
文
2021/01/24 20:16
深い深い森の中。陽光がか細く差し込むしっとりとした森の中。そこに一匹の狼がいた。狼は殺生を好まない優しい心を持っていることで有名だった。喉が渇けば草露をすすり、腹が空けば悲しそうな顔で兎や狐を一口一口大事に噛み締めた。森の動物たちは、そんな狼のことが大好きだった。お腹を空かせて目をぎらぎらさせる狼に、「みんな僕から離れて」と自らの野生の本能に逆らおうと苦しむ狼に、森の動物たちは「私を食べて」と
kitaryuto775
2021/01/24 19:16
老人は静かにやって来た。昔は似合っていただろうカシミアのコートが大きく見えるほど痩せていた。そして小ぶりの木箱を大事そうに抱えていた。箱には似つかわしくない大きな鍵がついていた。 老人がスツールに腰掛けると、暖炉の前で寝そべっていたグレイハウンドのジョーンズがやってきて脇に座った。老人が頭をなでてやると、ジョーンズはまるで前から友人だったとでもいうような顔をした。やがて老人はその手をカウンタ
2021/01/22 22:37
「神様お願いです!私に友達を下さい!」 そう言って神である俺に手を合わせて来たのは、神にすがる人間では無く、同じ神であった。 「ちょっと待て、お前も神だろう。なぜ神であるお前が俺に神頼みをしているんだ」俺の口からは思わずため息が溢れた。 この世には人間や動物などの生物とはまた違った存在がいる。姿形は似ていても、明らかに似ても似つか無い存在だ。 それらは人間から認識されると総称
サトウリョウタ@毎日更新550日突破
2021/01/21 21:55
「ねえ、海人、来週海に行かない?」突然、理奈から1通のLINEが届いた。理奈はいまでもよく1人で海に行っているらしい。海がよく似合う彼女は、海にも愛されていた。サーフィンの大会で、大学時代に日本チャンピオンになった。容姿が抜群で、スポーツ万能。その上、成績も優秀で、誰もが羨む女性だった。彼女は自身の美貌に驕ることなく、礼儀正しく丁寧で、異性だけでなく、同性にも囲まれていた。ちなみに理奈とは
bp180
2021/01/21 18:03
仮想通貨:ビットコイン軍資金:999,999円開始日:2021.01.13昨年末から申請していたGMOコイン。1/13あたりにようやくGMOコインに入金できるようになったので仮想通貨も始めた。細かくいうと前回の仮想通貨バブルの時にもやっていてその時は30万溶かした。大暴落の10分前までショートで入ってたんだけど、飲み会中に仮想通貨の話題になってロングに直したら暴落した(飲み会なんて行かなき
六花💌(ロッカちゃん🎸)
2021/01/19 17:36
第五話〜電車からの窓〜【五枚目のカード・ペンタクルのクイーン】それは、正午を過ぎた列車の中。僕は気になっていた本を一冊読みながら揺られていた。風は夏の匂い。麦わら帽子を被った子供が窓を開けるとその帽子は遠い空の向こうへ飛んで行った。僕はふと、海が見たくなった。カルサーがくれた五枚目のカードはペンタクルのクイーン。列車の中にそんなイメージの女性が座っている。お腹の大きな女性は急に一
2021/01/19 12:20
ある夜、友人がこんな話をしてきた。 その日友人はバイトが長引き、店を出たのは深夜になった。 別にバイトが長引くことは珍しく無く、人気が無い真っ暗な道を帰るのも友人は慣れっこだった。なのでいつも通り音楽を聴きながら歩いて帰っていたらしい。 しかしその日はいつもと違かった。 ふと、前方で何かが動くのか見え、友人は顔を上げた。 見るといつのまにか少し前を女性が歩いていた。いつもう
ザイム夢我無罪
2021/01/19 06:30
2021/01/18 08:00
アリスはメールの地図を見直した。地図の通りに進んできたのだが指定された場所にそれらしい建物がない。あるのはどこまでも伸びるコンクリートの壁で、肝心の聖バプティスト教会は影も形もなかった。注文品のウィスキーを抱えたまま途方にくれた。今の時代に最先端のアンドロイドが道に迷うことがあるとは思わなかった。 アリスは普段シベリア奥地でバーを営むアンドロイドだ。バーで提供する酒類はたいがい電子酒で仕入れ