#ルポルタージュ
出版社を辞めた僕はキャバクラで黒服をすることになった。 #5
(前回)
「事件」が起こったのは9月初旬のことだった。
当時、店では新しいキャストが勤務を始めていた。
ナノハという源氏名で、地雷系ビジュアルの可愛い女の子だ。昨年度までは浅草方面の店で働いていたらしい。引っ越しに伴い、知人の紹介もあってこの店に入店することになった。
それだけならよくある話だが、このナノハはちょっと特別だった。何しろ恐ろしいほどの太客を連れてきたのだ。
その太客というのはミ
出版社を辞めた僕はキャバクラで黒服をすることになった。 #4
(前回)
出版社に勤めていた頃は、毎日同じ社員と顔を合わせるだけの日々だった。
コロナ禍によって自宅でのリモートワークがメインになってからは、誰とも会わない時期が続いた。
人と話すのが好きな僕には、正直つまらなかった。
僕の世界が一変したのは、キャバクラの黒服を始めてからだ。場末のキャバクラとはいえ、いつも違った顔ぶれの客と出会える刺激に勝るものはなかったのだ。
僕が勤めていた店では、客層
出版社を辞めた僕はキャバクラで黒服をすることになった。 #2
(前回)
「さっそく今日から入れる? 初日は『体験入店』だから時給1000円だけど」
面接後、白髪の男から声をかけられた。
平常時の時給ですら求人情報より300円も安くしておいて、なんと初日は時給1000円。あまりのケチ具合に呆れるが、僕は「はい、いけます!」と笑顔で元気よく答えた。
バカだと思わせておいて損はない。こちらもネタ探しに来ているのだから。
僕が水商売の初心者であることは店側も
京大卒で大手入社したらコンビニ店員になった話 #1
早朝のコンビニは騒がしい。客が入ってくるチャイムの音、店内を歩き回る音、コーヒーマシンの音、飲み物の補充音、全てが混ざり合う。コンビニでは、音を拾いながら動くことが大事だとA氏はいう。
今回話を聞かせてくれたA氏は京都大学を卒業後、大手インフラ企業に就職。1年目から駅ナカ事業(駅の中や周辺施設におけるビジネス展開)を担当する部署に配属され、駅構内での小売店の売上促進を担当している。
字面として
怪しげなホストのスカウトについていったらペンネームができた話 #1
「お兄さん、めっちゃかっこいいですね」
紀伊国屋を冷やかしに行くため新宿駅東口を歩いていると、地上に出てすぐのところで、見知らぬ男性に声をかけられた。
――なんだ? 俺に言っているのか? だとしたら馬鹿にしているのか?
自慢ではないが、これまでの人生で「かっこいい」だなんて言われたことは一度もない。
いや、地元のお弁当屋さんのおばちゃんには何度か言われたことがあったかもしれないが、こちとら自
ルポ・大企業人事~20代で年収1000万超え、勝ち組確定の企業を辞めます~
「大企業で幸せに働くには、人の心を捨てる必要があります」
大手IT企業に人事として入社しながらも数年で退職、現在は小さな出版社で編集者として勤務するAさんはこう語る。
今回は、将来を約束されたはずの若者が、とある大企業から退職に追い込まれるまでの苦悩の日々を追った。
管理職候補として入社
Aさんの会社員人生は順風満帆に始まった。都内の有名私立大を卒業したのち、大手IT企業へと入社。就職人気ラ
ルポ・図書館司書~性欲が枯れてない人もいるんだから!~
手取り17万円の激務
図書館司書の朝は早い。
午前9時ぴったりに図書館を開くため、Aさんは毎朝6時30分にベッドを出る。のんびりとはしていられない。自動扉の前で待ち構える常連の老人が、1分でも遅れるとクレームを入れてくるからだ。意地の悪い老人は、腕時計の秒針に目を光らせている。自動扉をこじ開けて、館内に入ってきてしまうことすらあった。油断はならない。
都内P区の図書館に勤めるSさんは22歳の女