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京大卒で大手入社したらコンビニ店員になった話 #1

早朝のコンビニは騒がしい。客が入ってくるチャイムの音、店内を歩き回る音、コーヒーマシンの音、飲み物の補充音、全てが混ざり合う。コンビニでは、音を拾いながら動くことが大事だとA氏はいう。

今回話を聞かせてくれたA氏は京都大学を卒業後、大手インフラ企業に就職。1年目から駅ナカ事業(駅の中や周辺施設におけるビジネス展開)を担当する部署に配属され、駅構内での小売店の売上促進を担当している。

字面としては、華やかな経歴に見えるが、その実態は想像を絶するものだった。

いい会社に入ったはずなのに……

A氏が勤務するのは、グループ連結数万人を超える持株会社。鉄道からホテル、不動産などを幅広く手掛けるインフラ企業である。

「私の場合、100倍を超える倍率を掻い潜って入社したすえ、いまはコンビニ店員として働いています」
インフラ企業に就職したにも関わらず、コンビニ店員として働いているとはどういうことなのだろうか。そのわけを聞いた。

「インフラ企業は、多角的な事業展開をしている一方、新卒の社員はどこに配属されるのか分かりません。希望のとおりに配属されることはほとんどなく、グループ会社ですらない企業や省庁に出向することだってあります」

「配属先によって職場の色も大きく異なりますが、私の配属先の場合だと、現場主義が色濃く残っていました。
現場を知らないと企画や指示出しなどできないだろうという意図は分かるんです。ただ、駅ナカ事業の担当者として、実際にコンビニ店員になれと言われたときは驚きましたね。同期には不動産分野でディベロッパーとして活躍している人や、外務省や官公庁に出向して責任ある仕事を任されている人もいるのに、私は既に1年以上もコンビニ店員として働いています」

A氏の主な業務は、接客をはじめとする基本業務のほか、シフト表の作成や商品の陳列や売り場の配置改善などだ。同期に差がつかないよう、コンビニでの仕事にも必死に打ち込んだ。「売上を向上させるためのレイアウト」「目線を意識した商品棚の陳列」などやれることをやり、店舗業績を上げることができた。成果が出たことは、言葉では言い表せないほど嬉しかったが、それでも、他の同期と比べてしまい落ちこむことがあるという。

「毎日コンビニなんです。本社に出社している同期も多いのに、僕だけコンビニエンスストア。会議の予定もなければ、議事録だってとったこともない。雇用形態は正社員ですし、給与は本社勤務並です。高給取りのコンビニ店員には違いないのですが、会社から孤立していると感じざる負えません」

(続く)


宮崎:1993年生まれ。ビジネス書編集者。元メーカー勤務。理系。ほとんど本を読んだことがなく、川端康成の存在を29歳で知る。なお、三島由紀夫も知らなかった。署名は(宮)。

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