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【掌編小説】Twilight Legacy
初春の夕暮れ時、島にスターがやって来た。
正確には、帰ってきた、と言うべきか。西側にある島唯一の港に泊まった定期便から、水上志門は桟橋に降り立つ。その風貌は、薄手の黒いパーカーに、穿き古したデニムのジーンズ、右手にクラッチバッグをひとつ携えただけという軽装。前髪が両目を覆い隠すほどに長いこと以外は二十年前と何も変わらず、彼は右肩下がりの側弯の身体をのっぺりとよろめかせて島に足を踏み入れた。
明日は
<生存報告2>
あけましておめでとうございます。
【掌編小説】むすんでほどいて
(↑ のお話からどうぞ)
十二年前の七月二十四日は土曜日で、夕刻の町はゲリラ雷雨に見舞われていた。
夏休みの初日だった。
あたしは十五歳で、中学三年生の受験生。吹奏楽部の練習を一足先に切り上げて、昇降口で靴を履き替えて、このまま塾へ向かおうと校舎を出たところだった。
こんな夕立にもかかわらず、目の前の校庭ではラグビー部がずぶ濡れになりながら、八月に来る中学総体に向けて練習に励んでいた。かと思えば
<生存報告>
ひとつの作品に傾倒しすぎて、二の腕がパンプアップしてきました。
【連作掌編】爬虫類女子ムヨクさん 第10話
10 トリさんとムヨクさん
陽射しが傾き始めた頃にムヨクさんの自宅へと帰ってきた私たちは、二階へ上がり、クーラーボックスから各々の購入した品を取り出して、仕分けることにした。一階は完全に生き物の飼育スペースと化しているので、ムヨクさんは二階で寝食を営んでいるのである。
「あのぉ……ガマ子さん、スマホとポシェットは……いかがいたしましょうか」
人差し指と親指でポシェットを摘まみ上げたムヨクさんが、