【掌編小説】鍋底に宇宙
鍋は良い。
身体が温まるし、手間もかからないし、後片付けも楽だ。ああ、やっぱ寒いとこでは鍋に限る。
毎晩のように鍋を食べている。加熱調理のみの一人用鍋なんて物がスーパーの総菜コーナーに並んじまっているもんだから、俺の中に飼っている料理人は随分と暇を持て余すようになっちまった。それに、昆布出汁、魚介風味、キムチみそ仕立て、スープの“ヴァ”リエーションが豊富だから、一週間その一人用鍋シリーズだけで晩飯を回せちまう。こいつが余計に料理の手間暇という内面文化的な情緒の衰退を加速させち