朝日 ね子
ねこのこと
北海道弁や、日常のことばについて
うちにいるねこについての記事です。
どっか島にでも行きたいな、と言ったひとがいた。 そうだね、ランゲルハンス島なんてどうだろうね。 悪くないね。 わかってるんだか、わかってないんだか。
自己満足を承知のうえで、日々だれかを怒らせたり、傷つけたり、困らせたりしないように気を付けているつもりだ。 それは自分が傷つけられたくないからで、自分が困り…
よく晴れていて、太陽の光を浴びたら少し気分がマシになった。 2ヶ月ぶりに髪を切った。ちゃんと自分の顔になった。 何がしたいのか、何が楽しいのかわからない。…
海松の茂みに身体をあずけて、ぼくははるかな水面を見上げていた。ぼくにとっての〈空〉。揺れるそれが碧く見えるのは、本物の空の色を映しているからだ。右手を空に伸べ…
やりたいことも、やらなければならないことも横に置いて、眠ることにした。 快晴を捨てた。自由を行使した。 けだるさが頭にも身体にもまとわりつき、しかし不調とま…
秋分を幾日か過ぎた夕方に、うさぎが現れた。 姉から写真とともに「なんかいる」と送られてきた。 最初は隣の家の馬屋のあたりをうろうろしていたが、そのあとうちの…
前提として、歩行者のあまりいない田舎なのだ。 その田舎の町を貫くように通る国道の、センターラインのあたりに落ちていた。ピンク色の細長い風船だった。 バルーン…
余白が大切だと言われて久しい。(たぶん) 誰がいつから言ってるのか知らないが、たくさんの人がそのように考えているらしい。 わかるような気もするが、わからない気…
空よりも透明で海よりも深い色。 お気に入りのインクで手紙を書いた。 愛用のペン先はこの店で手に入る一番細いものだ。 「カウンターに物を広げるな。邪魔だ」 店…
近所のおじさんが運転する白いセダンで出かけた。助手席に私、後ろに姉と叔母さん。 数日前に多めに降った雪が残っている。アスファルト以外の地面はほとんど分厚い雪…
さこういっぱく、と読む。 馬の特徴をあらわす言葉だ。 左後ろ足だけが白い馬のことを言う。 むかし、左後一白の馬はよく走るのだと祖母が言った。ある種の迷信だ…
人の振り見て我が振り直せとはよく言ったものだ。 ありのままで良いなどと言いながら、一方ではより良くなれとせっつく。 さて、良いとは? 悪いとは? その尺度…
晴れた日が続いている。 それに加えて季節外れの高温とのことで、これはもうひょっとしたらひょっとするぞ、と妙な期待をしてしまう。 つまりは、もうこのまま春にな…
まてい、という言葉がある。マテーと発音する。正しい漢字の表記は知らないが、真丁くらいだろうか。 丁寧みたいな意味である。たぶん方言。 幼いころは大人や年上…
ときどきある。 目覚めたときに、涙が流れている。まだ夜中だった。 久しぶりだ、と思いながらまばたきをしたら、両目からさらに流れ落ちた。 寝間着の袖でぬぐう…
姉には「次に動画が送らさってくるときは家出猫が見つかったときだな」と言っておいたが、ニャギが行方不明になって一週間ほどが過ぎ、もう帰ってこないんじゃないかとい…
2024年5月5日 06:17
2024年4月28日 18:59
自己満足を承知のうえで、日々だれかを怒らせたり、傷つけたり、困らせたりしないように気を付けているつもりだ。 それは自分が傷つけられたくないからで、自分が困りたくないからで、怒りたくないからで。 しかしときどき、思わぬところでその心がけが水泡に帰すことがある。本当は防げたのかもしれないが、起こってから気づくのだから仕方ない。口をついて出る不用意な発言、態度や仕草、タイミング。時には部外者の行動
2024年4月21日 17:15
よく晴れていて、太陽の光を浴びたら少し気分がマシになった。 2ヶ月ぶりに髪を切った。ちゃんと自分の顔になった。 何がしたいのか、何が楽しいのかわからない。何に時間を費やしたいのかわからない。 何にも時間を費やしたくない。何もしたくない。 だからといって、何もせずいられるわけもなし。日常を淡々と。 淡々ってはかなげでどことなくきれいな言葉だ。漢字で書くとね。 平坦で単調な日々には
2024年4月14日 14:45
海松の茂みに身体をあずけて、ぼくははるかな水面を見上げていた。ぼくにとっての〈空〉。揺れるそれが碧く見えるのは、本物の空の色を映しているからだ。右手を空に伸べると、海松の葉から細かな気泡が立ちのぼった。いくら望んでも、この手は届かない。 小魚の群れが螺旋を描きながら水面に昇ってゆく。いっせいに向きを変えるその身体が、銀に耀いた。彼らはどこへゆくのだろう。ぼくは指の間から〈空〉を透かし見、ぼんや
2024年4月7日 09:56
やりたいことも、やらなければならないことも横に置いて、眠ることにした。 快晴を捨てた。自由を行使した。 けだるさが頭にも身体にもまとわりつき、しかし不調とまではいかず、相変わらず健康な休日の朝。 たとえば日々の中で、食事、睡眠、運動のどれを最も重視するか。 私は絶対に睡眠だ。逆に言うと、睡眠が調わないとてきめんに心身に違和感を生じる。そしてそんな違和感は、一度感じてしまうと容易に解消で
2024年3月31日 11:55
秋分を幾日か過ぎた夕方に、うさぎが現れた。 姉から写真とともに「なんかいる」と送られてきた。 最初は隣の家の馬屋のあたりをうろうろしていたが、そのあとうちのほうに来て、しばらく家のまわりを見てまわり、知らないうちにいなくなったそうだ。山に帰ったらしい。 毛色は白に少し茶が混じりはじめ、まだらだった。耳は見慣れたペットのうさぎより短い。立ち歩くと、足の長さに違和感を感じるほどだ。 動画も送
2024年3月24日 08:22
前提として、歩行者のあまりいない田舎なのだ。 その田舎の町を貫くように通る国道の、センターラインのあたりに落ちていた。ピンク色の細長い風船だった。 バルーンアート用のねじれた風船は、何カ所かくびれていて、少し前まで何かの形に成形されていた様子がうかがえる。 まず、え、なに? と思った。 近づく。良かった、生き物じゃなくてモノだ。 もっと近づく。あ、風船じゃん。しかもバルーンアートの。
2024年3月17日 08:47
余白が大切だと言われて久しい。(たぶん) 誰がいつから言ってるのか知らないが、たくさんの人がそのように考えているらしい。 わかるような気もするが、わからない気もする。 このほど、余白について考えてみた。改めて考え込んだわけではなく、ふいに思いついた程度ではあるが。 余白があったらいいな、と思うこと。 時間、空間、頭の中、目に映るもの。 なるほど、なるほど。どこかで見聞きしたことのあ
2024年3月10日 17:56
空よりも透明で海よりも深い色。 お気に入りのインクで手紙を書いた。 愛用のペン先はこの店で手に入る一番細いものだ。「カウンターに物を広げるな。邪魔だ」 店主の言葉も意に介さず、少年は自分の手先に集中している。「どうせ、他の客なんて来ないくせに。――ビンをちょうだい」 書き終えた便箋を細く巻きながら、彼はどこまでも無邪気だ。 店主は鳥かごや色褪せた書物や鉱石といった雑多なものが並ぶ棚
2024年3月3日 08:36
近所のおじさんが運転する白いセダンで出かけた。助手席に私、後ろに姉と叔母さん。 数日前に多めに降った雪が残っている。アスファルト以外の地面はほとんど分厚い雪の下だ。天気が良くて、道路の雪はきれいに溶けていた。気温は低い。 廃屋が雪の重みに耐えかねてつぶけている。珍しくもない風景だけど、なんとも言えない気持ちになる。 ちょっと感傷に浸りそうになり、あわてて思考を少し巻き戻す。 あれ、つぶ
2024年2月25日 14:11
さこういっぱく、と読む。 馬の特徴をあらわす言葉だ。 左後ろ足だけが白い馬のことを言う。 むかし、左後一白の馬はよく走るのだと祖母が言った。ある種の迷信だとは思うが、確かに当時家にいた、かつてよい成績を残した馬は、左後一白であった。 夕方に、祖母と馬屋の外を歩いた。 馬が振り返る。鼻を鳴らすものもいる。 ときどき思い出される遠い記憶。 雪の残る放牧地で、ブカブカの馬服を着せら
2024年2月18日 15:06
人の振り見て我が振り直せとはよく言ったものだ。 ありのままで良いなどと言いながら、一方ではより良くなれとせっつく。 さて、良いとは? 悪いとは? その尺度も方向も個人の好みや経験のたまものであるなら、ただひとつ「お気に召すまま」というのが今の自分を納得させる言葉。
2024年2月11日 18:14
晴れた日が続いている。 それに加えて季節外れの高温とのことで、これはもうひょっとしたらひょっとするぞ、と妙な期待をしてしまう。 つまりは、もうこのまま春になっちゃうんじゃない? 今期の雪は終わったんじゃない? わくわくと天気予報を見る。 ……そうだよね、そんなにうまくはいかないよね。だって2月の中旬だもの。ここは冬将軍の陣地だもの。 数日したらちゃんと、雪マーク(ときどき傘マーク)が復
2024年2月4日 12:55
まてい、という言葉がある。マテーと発音する。正しい漢字の表記は知らないが、真丁くらいだろうか。 丁寧みたいな意味である。たぶん方言。 幼いころは大人や年上のきょうだいと過ごしてきた。自分が一番年下だった。当然に、彼らと同じようには行動できない。 のろのろとしているように見えただろう。トロいと言われたこともある。今思えば自分のことながら酷な言葉だが、そのときは自分が劣っていることへの罪悪感
2024年1月28日 12:22
ときどきある。 目覚めたときに、涙が流れている。まだ夜中だった。 久しぶりだ、と思いながらまばたきをしたら、両目からさらに流れ落ちた。 寝間着の袖でぬぐう。夢と現実のはざまで混乱しつつ、一刻も早く再び眠りにつきたい。 それにしても、心当たりがない。それほど追い詰められていたわけでもない。ああそうか、久しぶりに読んだ小説の、救いのない展開のせいかも。 孤児の少女が成長していくお話。かっ
2024年1月21日 12:25
姉には「次に動画が送らさってくるときは家出猫が見つかったときだな」と言っておいたが、ニャギが行方不明になって一週間ほどが過ぎ、もう帰ってこないんじゃないかという考えがちらつき始めた。なぜか死んだ犬の夢を見た。 それから数日して、姉から「やっとお帰りになった」と動画が届いた。ニャムニャムと声を出しながらエサを食べる猫。その頭を「もう行くなよ、行くなよ」と手荒く撫でる姉。後ろから「良かったー帰っ