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【エッセイ】落ちてる

 前提として、歩行者のあまりいない田舎なのだ。
 その田舎の町を貫くように通る国道の、センターラインのあたりに落ちていた。ピンク色の細長い風船だった。
 バルーンアート用のねじれた風船は、何カ所かくびれていて、少し前まで何かの形に成形されていた様子がうかがえる。

 まず、え、なに? と思った。
 近づく。良かった、生き物じゃなくてモノだ。
 もっと近づく。あ、風船じゃん。しかもバルーンアートの。

 通り過ぎてから、最大の疑問が浮かぶ。
 どこから来て、なんであんなところに落ちてんだろう?
 風で飛んでくるようなところには、多分風船はない。だって田舎だから。
 車から落ちた? いやいや、冬だし、窓を開けて走るか?

 謎は深まるばかり。
 そして、その風船が元はなんの形にねじりあげられていたのかを考えだすともっと深い謎が広がり出す。
 この辺にしとこう。

 とにかく、車道に風船が落ちていた。風船は車にひかれて割れることなく、国道のセンターラインのあたりをたゆたっていた。
 ほぐれた風船は誰かの夢のあと。
 あるいはありのままの姿。

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