【エッセイ】ける
近所のおじさんが運転する白いセダンで出かけた。助手席に私、後ろに姉と叔母さん。
数日前に多めに降った雪が残っている。アスファルト以外の地面はほとんど分厚い雪の下だ。天気が良くて、道路の雪はきれいに溶けていた。気温は低い。
廃屋が雪の重みに耐えかねてつぶけている。珍しくもない風景だけど、なんとも言えない気持ちになる。
ちょっと感傷に浸りそうになり、あわてて思考を少し巻き戻す。
あれ、つぶける?
つぶれるが正しいのはわかる。でも、つぶけるは言い間違いではないと思う。使うつもりで使っている言葉だ。ずっと前から耳に馴染む音。
方言かもしれない。あるいはうちだけのローカル言葉か。
似ているものに、カビけるというのがある。普通なら「カビる」と言うところだろう。
カビけるには、「カビちゃった感」というか、カビにまみれている感じがある。もちやパンにカビが生えたときに良く使っていたっけ。
突然気がついた、方言かもしれない言葉。(方言ではないかもしれないけど)
そんなことを考えているうちに、つぶけた廃屋はすでにはるか後ろ。
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