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賃貸騒音「お子さん」⇒「子供」⇒「ガキ」⇒「クソガキ」への不可逆的変遷

賃貸騒音「お子さん」⇒「子供」⇒「ガキ」⇒「クソガキ」への不可逆的変遷

便座を重力に任せて落とすと下に直接響いてビックリするので何かクッション等の工夫をして極力注意してくださいね、という旨の穏便かつ切実な「お願い」を管理会社を通してはじめて伝えてから、そろそろ四か月が経過します。私が一室を借りているところはいわゆる住宅併用賃貸で、上階には大家の娘夫婦が住んでいる。下の部屋も隣の部屋も空いているので気を遣わなくて幸運だと、最初は喜んでいた。上階には子供が三人いる。年齢的

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人を怒らせるという度し難い「趣味」

人を怒らせるという度し難い「趣味」

他人を怒らせる最も手軽な方法の一つに、「趣味をからかう」というのがあるらしい。私はヘタレの分際でむかしから人を挑発するのが好きなので、これまで随分多くの人を不快にさせてきたし失笑もさせてきた。まことに恥の多い生涯を送ってきました。今の私と交際してくれる人は私のそうした意地悪い部分も見越してくれているのだと信じたい。いったい私は仲良くなればなるほど挑発したくなるタチだからこれはもう一つの心の病気とい

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「自分にしか絶対に分からない感覚」をあえて言語化しようとする呪われた意志こそ文学を文学たらしめる

「自分にしか絶対に分からない感覚」をあえて言語化しようとする呪われた意志こそ文学を文学たらしめる

それにしても「冬季性抑鬱」のせいで、暗澹たる日々を生きている。そうでなくても抑鬱気質が有り余っているのに、この寒い時期となると毎年本当に辛い。倦怠感もイライラも半端なものではないので、いきおい酒量も増える。ついでに過食傾向にも拍車がかかる。この日照時間の極端に少ない北陸では「自殺の神」がそこらじゅうを徘徊している。だから死にたい気分から逃れられない。確かにこれには気質の関係も無視できない。ただ気質

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「スマイルください」という残酷な遊び

「スマイルください」という残酷な遊び

いつもにこやかにしかも卒なく接客してくれる従業員の姿に「我々」は骨の髄まで慣れきっているから、たまにムスッとした無愛想の従業員に接すると心ならずも「違和感」を催し、人によっては最悪の場合、怒りをあらわにさせる。グーグルマップの口コミ欄にはその類の愚痴不満が必ずといっていいほど発掘されるので、客対応というのはなるほど心労が絶えないだろう。そうした「違和感」はささやかなものであればあるほど余計に根深く

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「読書」は悪魔の趣味

「読書」は悪魔の趣味

「本が好き」「読書が趣味」「わたし活字中毒なの」なんて自己表明は巷にありふれていて、それはそれで結構なのだけど、そのことをいかにも殊勝気に語るウスノロ野郎が後を絶たないので啖呵の一つも切りたくなってきた。いい加減にしろよお前ら(『ごくせん』の仲間由紀恵のイメージで)。

たとえば履歴書のPR欄なんかに「月に三〇冊は本を読んでいます」とか書いたり、就職面接において「好きな作家は村上春樹と夏目漱石です

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いま生きている人間は間違いなく「歴史的大事件」の渦中にあるのに、そのことへの「実存的関心」がさして切迫していないのは、不思議なことだ

いま生きている人間は間違いなく「歴史的大事件」の渦中にあるのに、そのことへの「実存的関心」がさして切迫していないのは、不思議なことだ

いま世界には例のウイルスが流行しているので、世界各国の政府はその感染拡大の阻止に忙殺されている。一歩外に出れば、マスクをしていない人間を探す方が難しい。あまりに長い期間マスクをしているのでマスクでない顔を人にみられるのが妙に気恥ずかしいくらいだ。

「ソーシャルディスタンスに注意しましょう」「発熱のある方は入店をご遠慮ください」「図書館のご利用は二時間程度とさせていただきます」「マスクを必ずご着用

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マルティン・ハイデッガーのどこに魅せられるのか

マルティン・ハイデッガーのどこに魅せられるのか

マルティン・ハイデッガーの講義録『ニーチェ』(平凡社)を一週間かけて舐めるように精読して、改めてこの人の思索過程の「凄み」、文献読解能力の強靭さを実感できた一方、他人の思想を何かにつけて自分の色に染め上げないではいられない彼一流の「強引さ」も相当痛快に感じた。彼自身がニーチェという掴み所のない思索者に肉薄できる思索性を備えていればこそこれほど鮮やかな力技を発揮できたのだろう。怪物を知るには怪物でな

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「人生の応援ソング」は労働賛歌の現代版なのだろう

「人生の応援ソング」は労働賛歌の現代版なのだろう

「人生の応援歌」なんて呼ばれる歌謡ジャンルを私が概して嫌いなのは、たかが商業音楽ごときにどうして自分が励まされなくてはならないのだという拗ねた反感があるのに加え、それがこれまで「国民の労働意欲高揚機能」の一端をどこか態よく担ってきたのではないかという邪推が働いてならないからだ。その種の歌のなかに「つべこべ言わずに働け精神」を感じとってしまうのは自分だけではないと思う。分厚いオブラートに包まれている

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ドライバーは横断歩道の人間にいったいどれだけムカついているのだろうか

ドライバーは横断歩道の人間にいったいどれだけムカついているのだろうか

私は運転免許証を持たないからあくまで類推の域を出ないのだけど、自動車を運転している当事者的心理からみれば、歩行者や信号なんてものは現在の「走行快楽」を著しく阻害する存在であり、はっきり声に出さずとも常に「障害物」として嫌がられているのではないだろうか。ブレーキよりアクセルを踏み続けているほうが風景が滑らかに過ぎてゆくので心地よいだろうし、それにそのほうがより目的地に早く着く。渋滞に巻き込まれたドラ

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「家族団欒」なんか犬に食われろ

「家族団欒」なんか犬に食われろ

ところで君は平日昼間の公園で酒をしたたか痛飲したことがあるかね。もしないというならやってみればいい。きっと世界が変わるぞ。劇的に変わるぞ。せわしなく往来を歩く人たちがこれまでと違ったふうに見えて来る。こいつらはなぜこんなに落ち着きがないんだ、馬鹿じゃないのかと思えてくる。本当は自分が馬鹿で気違いのヘタレなのかもしれないけどそんなことはこの際どうでもいいのだ。往来の社畜どもも公園の無職どもも暇を持て

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いかにもエッセイ文体、の病根

いかにもエッセイ文体、の病根

むかしから不思議だった。雲はいつ動いているんだろう。いつも止まって見えているのに。

という感受性自慢全開の調子でいきなり本題へダイブする書き出しを、私はささやかな敬意と悪意を込めつつ「いかにもエッセイ文体」と呼んでいる。そこに特徴的なのは、あの厚顔無恥な「いまこそ告白します調」であり、「芸薄き剥き出しのナルシシズム」であり、無理に脱力感を出そうとするが故のいびつな「力み」である。日頃感じたあれこ

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「反出生主義者」は叫ぶだけじゃ駄目だ

「反出生主義者」は叫ぶだけじゃ駄目だ

人の世は地獄よりも地獄的に違いないから、私は、「子供が生まれること」を途方も無く残酷なことだと把握している。私は「幼い他者」にも「自分」と同様の「世界感覚(意識)」が宿っていると差し当たり信じているので、「赤ちゃんが欲しい」とかいう無邪気な言葉を聞くたびに、「新しい生命にこの地獄を経験させてやりたい」としか聞こえない。「孫の顔がみたい」なんて月並みの物言いも「早くこの地獄に生命を引きずり落としなさ

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兄弟や姉妹なんて親の愛情を自分から奪ってしまうライバルなのだから、本音レベルでは消えて欲しいのだ

兄弟や姉妹なんて親の愛情を自分から奪ってしまうライバルなのだから、本音レベルでは消えて欲しいのだ

兄弟(あるいは姉妹)について他人が内心どう思っていたかは知らないのだけど、ただ私の過去の実感履歴を吟味するに、兄弟の存在はかなり「目障り」だった。私は二つ違いの弟が一人いるだけだけど、やはり様々の側面で「こんな弟いなければよかったのに」と思っていた。「そうすれば両親の注目も愛情もぜんぶ自分に集まって安泰でいられるのに」と。思うにどこの家庭でもこのような愛憎交々の人間劇が日々繰り広げられているのだろ

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標語公害を罵り学級システムを呪う

標語公害を罵り学級システムを呪う

私にとって耐え難い悪趣味的日常光景のひとつとして、町の標語看板がある。いじめ防止とか火の用心とか万引き防止とか手洗い促進とかポイ捨て禁止とか挨拶促進とか、最近では「ソーシャルディスタンス」云々とかマスク着用推奨とか、その名目は種々雑多にあるけれど、すくなくとも全体に共通してはっきり言えることは、その絶望的なセンスの悪さ並びに途方もない空疎性だ。

周知と思うが、日本は標語公害が深刻に進んだ国の一つ

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