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新しい経済

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Communicative Money 対話型マネー

Communicative Money 対話型マネー

私たちがお金を使うときは、常にお金に対して、一方向のコミュニケーションがなされる。つまり、私たちが使いたい時にお金を使う。一方で、お金は私たちに自分自身を使って欲しいと懇願することはない。

では、私たちの生活をより豊かにしてくれるような、対話型マネーがあったらどうだろうか。

最近、チャットGPTなど、生成AI技術の普及が進む中、技術と人間が相互にコミュニケーションをとることで、私たちの作業が進

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明日の五千円

明日の五千円

「記憶」は、過去に起きた事柄だから、過去のものなのか。それとも、それを覚えているのは、「いま」だから、現在のものなのか。はたまた、それは、未来に起こりうる事柄に対応するためにもっているものだから、未来のものなのだろうか。

25年ほど前に Narayana R. Kocherlakota により発表された "Money is Memory" という論文がある。彼の結論は、「お金の役割は記憶が代替で

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数学に音を、色をつける。そして歪める

数学に音を、色をつける。そして歪める

人工的に共感覚を再現することにより、故意に私たちの日常の認識を歪め、私たちが生きていると錯覚しているこの日常を、この社会を別のスライスから見たい

ファイナンスを専攻している身分として、日々数学に多く触れているのですが、「数学は静かだな」と常々思っています。これは、数学を「解く」過程で「感情を必要としない」ゆえか。または、公式に従う場合「想起(イメージ)しづらい」ゆえでしょうか。

「共感覚」とい

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プロジェクト・メコンとかえるとび

「リープフロッグ現象」とは
リープフロッグ現象(leapfrogging)という「カエルとび」現象をご存知でしょうか。これは、

通常、技術変化に伴い社会が常に「段階的」に変化していくのに対し、既存の社会インフラが整備されていない発展途上国において最新技術が導入されることで、最新のサービスが導入され、一段階前の発展を飛び越し、飛躍的発展を遂げることです。

アフリカにおいて、銀行システムが未発達だ

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金融市場を脅かすグリーンスワンの存在 (環境金融)

金融市場を脅かすグリーンスワンの存在 (環境金融)

最近米ハイテク株の上下乱が「クジラ(後にソフトバンクや追随した個人投資家と判明)」によっもたらされたとの話が話題になっているが、金融市場には他の動物も時々現れる。その中でも近い将来いつか、金融市場に「グリーンスワン(緑色の白鳥)」が現れるのではと囁かれている。

グリーンスワンとはグリーンスワンとは、地球温暖化等の気候変動が将来、私たちの生活を大きな悪影響を及ぼし、金融市場を大きく乱す金融リスクの

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気候変動リスクと新しいGDP

気候変動リスクと新しいGDP

「今年のGDP予想は...」等のニュースがすでに出回っている。GDPは私たちが経済状況を鑑みる上で外せない重要な経済指標の一つである。

GDPといっても実際は色々なバリエーションがある。しかし、近年それらの従来のGDPを大きく変える「環境インパクトを考慮したGDP」がOECDより提唱されている。そこで今回は、OECD等のデータを基に少し「環境インパクトを考慮したGDP」の日本の現状について調べて

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学びに「方向性」は必要か

学びに「方向性」は必要か

「考える芦」として私たちは日々考え、学んでいる。しかし、私たちの学びには一定の方向性が必要なのだろうか。

今回は「学問分野における方向性」「個人の学びにおける方向性」の二つのレベルで考えていきたい。

学問分野における方向性
大学には様々な学問分野がある。しかし、それらには事前に決定し合意された方向性があるのだろうか。

大枠はあると思う。しかし、最終目標はどこか。帰着点はあるのか。あるとしたら

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SDGsとイスラム金融

SDGsとイスラム金融

3行要約:イスラム金融とは、シャリア(イスラム教における規範や法)に基づいた金融システムである。イスラム金融は、その概念自体が倫理的ビジネスを重視した金融のあり方を説いている。そのため、SDGs(持続可能な開発)との相性が良く、持続可能な開発のための有効なファイナンス手段として近年、期待されている。

ダラム大学イスラム経済金融研究所 (Durham Centre for Islamic Econ

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イスラム金融とは何か

イスラム金融とは何か

3行要約:イスラム金融とは、シャリア(イスラム教における規範や法)に基づいた金融システムである。イスラム金融は近年ムスリム国を中心に、従来の金融サービスに対する「代替的ファイナンス手段」として大きな成長を遂げている。しかし、市民のイスラム金融の仕組みに関する認識の欠如、シャリアを遵守しつつクリエイティビティを高めることの難しさ、イスラム金融システムの標準化の難しさ等、イスラム金融においてシャリアを

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Withコロナ 私たちはどこに住んでいるのか

Withコロナ 私たちはどこに住んでいるのか

「経済活動の空間と帰属意識」の関係性について少し考えていきたい。

最近、コロナのおかげで1日の大変を家で過ごしている中でふと

住む(Live) = 「その空間に生きる」だとして、これまではどこか市街なり地域に住んでいるという感覚があったが、それが失われていることに気づいた。

実際、外に出る機会がほとんどない状況において近隣地域の空間を共有する経済、社会活動(地元スーパーでの買い物、公園への散

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食べて感情を昇華できるお金

食べて感情を昇華できるお金

日々の生活における、資本主義中心の現代社会への行き場のない憤りを「お金」に投影して「消化」したい

日経未来面×COMEMO お題「20年後、どんな『延長線上にない変化』が起きる?」に関連し、「食べるお金」のコンセプトを考えてみる。

「お金」は今日の資本主義のシンボルだとして、アイロニカルに、お金を食べることで、資本主義を競争社会の辛い経験や記憶を昇華し、消化することは可能だろうか。

「昇華」

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今年の景気は何度なのか?

今年の景気は何度なのか?

今年の夏も暑くなってきていますが、景気の方はどうでしょうか。「コロナのお陰で今年は景気が悪化している」と繰り返し報道されていますが一体、私たちはどの程度「景気」たるものを理解し、影響を受けてるのでしょうか

そもそも「景気」とは日本において「景気」を感じる手段としては、月例経済報告(景気についての政府の公式見解)や景気ウォッチャー、日本銀行による短観、景気動向指数等があります。

「景気」のはかり

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なぜ私たちは、給付金10万円を受け取る前に使ったのか

なぜ私たちは、給付金10万円を受け取る前に使ったのか

「特別定額給付金」10万円が話題になっておりますが、今回は「臨時収入」について経済学的な視点から考えていきたいと思います。

「10万円」を振り返る
問1: 受け取った皆さんはいつ使ったでしょうか?

1.「特別定額給付金」10万円の給付が話題になった時

2. 「特別定額給付金」10万円の給付が決定した時

3.「特別定額給付金」10万円が実際に手元に届いた時

問2: 受け取った皆さんはどれく

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論文や教科書はいつから動き出すのか

論文や教科書はいつから動き出すのか

多くの学問分野において「時間」と「空間」の概念は理論なり分析の中に取り込まれている。しかしながら、ジャーナルやその他学術論文ひいては学校の教科書も、依然として「動き出さない」(少なくとも社会科学系は)

2020年になっても論文が動かない
数ヶ月前に卒論を書くにあたり、論文の挿入した自分の時系列系のグラフが、紙の上で動いてくれないことに対し、読者が時系列に沿った変化を適切に認識し得ないのではないか

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