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エッセイ・コラム・ショートショート等々

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ヘッダー画像は尊敬するナンシー関さんの著書です。
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#エッセイ

【コラム】サクマ式ドロップスと火垂るの墓

【コラム】サクマ式ドロップスと火垂るの墓

サクマ式ドロップスで知られる佐久間製菓が2023年1月に廃業するとテレビのニュースが伝えた。
夜の風が草むらをざわつかせ、小池に波紋が広がった。
これは僕の心象風景。
蛍の朧気な光が一斉にふわりと舞い上がるようにいくつかの感情が込み上げてきた。
そんな幻想的な画が頭に浮かんだのも間違いなくジブリ映画の『火垂るの墓』からきている。

1988年に公開された高畑勲監督の作品。
これまでに数回は観た。

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【コラムエッセイ】儚い夏

【コラムエッセイ】儚い夏

また還暦前の若い俳優さんが亡くなった。
急性心不全。突然のお別れであった。
その俳優さんの名前をYahooニュースで目にしても正直お顔が浮かんでこなかったのですぐに検索してお写真を拝見。
あ!あの映画の人だ!
紐がするするすると記憶のいくつもの穴に吸い込まれていく。
「運命じゃない人」という映画では主演をされていて確かに僕はこの作品を観ていた。いい意味で派手じゃなく、といっても地味でもない不思議な

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【エッセイ】情熱の疑問

【エッセイ】情熱の疑問

僕はこどものころよく親に「ねぇ、なんで?」と疑問に思ったことはとにかく尋ねてばかりいた。
なぜ空は青いのか。なぜこどもが生まれるのか。
とるにたらないことから答えに困ることまでなんでも「なぜ?なに?」と質問ばかりしていた。
親からすればとても面倒臭いこどもだったろう。
三つ子の魂百まで。
その名残りをひきずって今も生きていることは自覚している。
ただ人に聞かなくなっただけで常に悶々と自分の中で「な

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【エッセイ】おっさんだった

【エッセイ】おっさんだった

最近一人称を「僕」で統一していたが今回は「私」に戻して書いてみようと思う。
今回の内容からすると「私」の方が空気感に馴染むと考えたからである。

私は今までことあるごとに「松潤と同い年だからまだ若い」とか「ニノ(二宮)とも同じだし、なんなら櫻井翔より年下なんだからまだまだ全然若い」などと己を鼓舞するように、思い込ませるように、呪文のように言い聞かせて安心してきた。なぜ嵐しばりなのかはチャリを漕いで

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【エッセイ】ロンリー・ウルフ

【エッセイ】ロンリー・ウルフ

高校三年生の冬の夢をたまにみる。
卒業式まで2ヶ月をきったくらいの冬。
夢の中の自分はとても強気で今まで溜めに溜めた不満を「おい!それはおかしいだろ!」くらいの勢いでぶちまけている。
卒業式までもう2ヶ月をきってるのをいいことに、もうどうなってもいいという投げやりで強気になっている。
気まずくなったらそこで学校に行かなくても、もう卒業は出来るんだから…と。

卑怯な考え方かもしれない。

だが、た

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【感想】谷川恵一アナと「四月物語」

【感想】谷川恵一アナと「四月物語」

北陸放送(MRO)の谷川恵一アナがメインパーソナリティを務めるMROラジオ土曜朝9時の番組『谷川恵一そろそろ。』

前番組『モリラジ』最終回からメールを送り始め新体制でスタートした今番組には初回から欠かさず拝聴&メールを送っている。これが僕の最近の土曜のルーティンとなっている。ラジオにメッセージや企画応募、曲のリクエストをすることは中学以来でとても新鮮である。寄稿や賞レースの投稿とも違って気軽に徒

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【エッセイ】水色の洗面器

【エッセイ】水色の洗面器

今でも僕は水色の洗面器を見ると条件反射で拒絶してしまう。
嘔吐した場面を思い出してしまうからだ。
幼稚園、もしかしたらそれ以前から小学生くらいまで使っていた洗面器が水色の乗り物のイラストが描かれた子供用の洗面器だった。
僕が最後に吐いた(嘔吐した)のは小学校低学年くらいだったろうか。
吐き気に負けて涙しながら嘔吐する時は決まってその洗面器にだった。
風邪や体調を崩した時によく気持ち悪くなっていた僕

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【エッセイ】桜見てひまわり思う

【エッセイ】桜見てひまわり思う

雪国というほど近年は雪が降り積もらなくなった石川県ではあるが年間降水量も上位で日照時間は下位なのは今も健在の地に住んでいるから冬は西高東低に従ってこもることが標準デフォルトと刷り込まれている。
もし、この概念が元からなかったとして例えば湘南に生まれていたら風は冷たくても空が青くて日差しが眩しければ防寒対策ばっちりで外へ軽やかに出歩く感覚を僕は持っていただろうか。

そんなことはわからない。
もしも

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【エッセイ】読み捨てられる雑誌のように

【エッセイ】読み捨てられる雑誌のように

四月はちょっぴりセンチメンタルジャーニーである。

先日、某県の某知事が新入職員たちに「毎日野菜を売ったり、牛の世話をする仕事とは違い皆さんは知性が高い」「シンクタンクだ(横文字使うな)」などと宣った。
さすがお役人。意識がお高い。次元というかステージが違う。そして職業差別を意図しての発言ではないと最後まではぐらかした。記者会見で建前は謝罪したが、それも不快な思いをされた方がいらしたらお詫びすると

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【エッセイ】レンタルビデオ屋の名犬ラッシー

【エッセイ】レンタルビデオ屋の名犬ラッシー

高校何年生だったか定かではないがティンバーランドのナイロンパーカーにユニクロのマフラーを隙間なく巻いていた寒い冬だったことは覚えている。
雪が降ってなかったからその日は自転車で通学した。五時も過ぎれば外はもうすっかり夜の色。僕は自転車のライトを点けていつもの道を家に向かって帰っていた。部活を終え時刻は7時も近かったと思う。
僕はほぼ毎日のようにレンタルビデオ屋へ立ち寄っていた。
朝は返却ボックスに

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【エッセイ】ストツーと半ズボン

【エッセイ】ストツーと半ズボン

昨年、レスリングの吉田沙保里さんが春麗(チュンリー)のコスプレでストリートファイターのCMに出ていた。
ストリートファイターももうⅥ(シックス)なのだなーと画面に釘付けになった。
驚いたのはシリーズの数字だけではなくチュンリーとスマホで入力したら春麗と変換候補で出たこともそうだ。
今当然のようにストリートファイターだの春麗だのと並べているが知らない人にはなんのこっちゃな話である。
遅ればせながら、

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【コラム】スカウターにIQ

【コラム】スカウターにIQ

この世の中に絶対はない。
絶対と呼ばれるいくつかのものでも99.9…%が限界である。
が、ひとつだけ100%絶対と呼べるものがある。
「死」である。
生きとし生けるものは必ず死ぬ。絶対に死からは逃れられない。
もし、ここで肉体の死はあっても魂は生きつづけ滅びない。だから絶対は存在しないという論理を持ち出してこられないとも限らないが、証明できないこの説はここでの「絶対」に該当しないので今回はないもの

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【エッセイ】ハードルの高さ

【エッセイ】ハードルの高さ

夏休みの宿題で一日何ページドリルを進めるか。
最低10ページの人もいれば5ページの人、1ページの人もいる。
このページ数が人それぞれのハードルの基準と仮定する。
努力のハードルの基準は人それぞれ違う。
私は小さな努力をこつこつと積み重ねてきたつもりであったが、もしかしたらそれは小さくなかったのかもしれない。
大きかったと言いたいわけではない。
まったく反対でむしろ無意味に近い。
というのも「身の程

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【エッセイ】デパートの屋上遊園地−香林坊大和−

【エッセイ】デパートの屋上遊園地−香林坊大和−

再会

東京の友人と再会した(以下Aくんとする)。
Aくんは小学校の6年間と中学校の1年間を共に過ごした同級生だった。
僕には悲しいジンクスがあった。
仲良しとは長く一緒にいられなかったことだ。
仲良しの友人は親の転勤で遠くの地へ行ってしまうのだ。
Aくんもその一人だった。
PHSも持ってなかった時代、都会へ引っ越していったAくんとは年に一度の年賀状で繋がっていた。
携帯電話を持つ年齢になるとメー

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