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エッセイ

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今までの日々や、ささやかな僕の奮闘を書いていければと思います。
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#エッセイ

「メンテナンスの星の元に生まれた天才」

「メンテナンスの星の元に生まれた天才」

前回のエッセイでピッキング業者さんの話を書いたが、昔に知り合いのカフェで深夜だけBARのお手伝いをさせてもらっていた時のことを、文章を作りながら思い出した。

その日お店に行くと、僕と交代になる社員から食器洗浄機が動かなくなり、昼間にそのメーカーの修理担当の業者に来てもらったと聞かされた。
当時その食洗機はまだ設置してから2年もたっておらず、そんなに早く壊れるのはそもそも食洗機自体に問題があ

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「真夜中のピッキング」

「真夜中のピッキング」

BARで飲んでいたお客さんが酔っ払い、トイレから出る時にかなり勢いよくドアを閉めたなぁと思っていた。
その後会計が終わりお客さんがお店を出た後に確認をすると、酔ってトイレから出る際の解錠が中途半端になっていたのか、ドアを勢いよく閉めた拍子に内側から鍵がかかった状態になってしまっていた。
トイレの扉が開けられない現状に「うん?」と30秒ほど固まってしまい、「おいおいおいおい!これどえらい事態に

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「ゲリラ豪雨の中でも」

「ゲリラ豪雨の中でも」

雨の予報などなかったはずなのに突如として空が黒い雲に覆われ、「ゴゴゴゴゴッ…」と雲の中にいる龍が唸り声をあげたような音が空にこだまする。
すると大粒の雨が一斉に地面を激しく叩き始め、傘を持たぬ人達は悲鳴をあげながら避難する。

そんなゲリラ豪雨に近頃よく遭遇するのだが、先日はその影響で電車のダイアが乱れ、駅のホームで足止めを食らった。
向かいのホームが白くぼやけて見えるほどの激しい雨の中、

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「泡のような夜の思い出」

「泡のような夜の思い出」

「なんか炭酸が飲みたいなぁ…」

これは僕が子供の頃に時々聞いた、母親の口癖のような言葉だ。
家にスナック菓子やチョコレートなどは基本的に置いておらず、小学校の二年になるまでは駄菓子屋にも行ったことがなかった。
お菓子や甘い物を食べたい時は、いつだって母親の手作りが当たり前だった。
駄菓子屋で買ったお菓子をビニール袋に入れて公園を走り回る光景に憧れはあったものの、子供のためを想い、

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「ライアーゲーム」

「ライアーゲーム」

駅前でアンケート用紙を持ったおばちゃんに声をかけられたことがある。

「すいません、七〜八分で終わるアンケートなんですけどご協力お願いします〜」

「…ちょっと長ないか?」というのが正直な印象であった。

駅前で、しかも改札に向かって歩いている時点でほとんどが今から電車に乗ろうとする人間である。
正直七〜八分も時間を取られてしまったら、確実に電車を一本遅らせる事態に陥ってしまう。
特に急

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「霊感体質な家族」

「霊感体質な家族」

夏を迎え、昔ほどではないが心霊番組なども放送する季節になって来た。
僕の知り合いには幽霊が見えるという男がいて、今ではほとんど会うことはないが、心霊番組などを見るとふと彼のことを思い出すことがある。

彼と一緒にいる時など、いきなり「ワーッ!」と叫び声を上げることがあり、どうしたのかと訊ねると、黒い人影が後ろに立っていたのだと怯えて答えたりするのだった。
ただ通常と違うのがそういった反応の

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「空爆の報も吸い込んでゆく掃除機」

「空爆の報も吸い込んでゆく掃除機」

「未来のためにできること」は何であろうかと考えてみるが、一向にキーボードを打つ手が進まない。
未来のためにできることなど、今の自分には何一つとして無いように思える。きっと胸を張ってこれだと言える人は、人生に責任を果たしながら自信を持って生きてきた人であろう。
己のことすらままならぬ者が、未来のためになどと考えるだけで顔が赤らんでしまう。そんな大仰なことはいいから、まずはあなたのやるべきことをや

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「器に愛された店主」

「器に愛された店主」

いよいよ夏本番を迎えテンションが上がる反面、若い頃のように海へ泳ぎに行ったり、大きな花火大会に行ったりする体力がなくなってきた。海に関しては単純に上半身を露わにさせることも恥ずかしい。
そんな今の僕が夏を迎えて楽しむことと言えば、以前かっぱ橋道具街で購入したお気に入りの器でざる蕎麦を食べることである。
数年前にざる蕎麦にハマり家でずっと食べていたのだが、せっかく高い蕎麦を買うのなら、器とかも

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「ホームルーム」

「ホームルーム」

中学生の頃、クラスメイトに増田さんという生徒がいた。
ショートカットで大きな眼鏡をかけた増田さんは、授業中にいつも左手で眼鏡を抑え 、眉間に皺を寄せながら黒板の文字をノートに書き写していた。

「眼鏡の度数がぜんぜん合ってないんやな」

それが増田さんに対して僕が初めて抱いた印象である。
同じクラスになったのは一年生の時だけで、大して仲良くもなく喋ることもあまりなかったが、そんな増田さんを

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「星に願いを」

「星に願いを」

大阪府枚方市は七夕伝説ゆかりの街として知られている。
枚方市駅のすぐ近くを流れる一級河川の天野川は、天上の天の川になぞらえ平安歌人によって七夕にちなんだ数多くの和歌が詠まれた。
現代でも七夕イベントとして枚方七夕まつりが毎年開催され、七月七日には街中が色とりどり短冊と地元民で埋め尽くされる。

当時、僕は枚方市に隣接する寝屋川市に住んでいたので枚方の七夕まつりを目にすることがあり、その日も

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「金色の髪」

「金色の髪」

中学三年のクラス替えで、最初に席が隣になった女の子は金髪だった。
校則が厳しく男子の髪染めや整髪料は禁止されていて、女子に至ってはそれにプラスして肩にかかる髪は黒のヘアゴムで縛らなければいけなかった。
そんな厳しい校則の中で、彼女だけが何故か完全な金髪だった。校則をものともしない彼女の気合いとその風貌に恐れおののいて、他の生徒達はその姿を遠巻きに眺めるだけだったが、僕は三年になり最初に指定さ

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「夢の暗示するもの」

「夢の暗示するもの」

BARでお客さんと話していると夢の話になった。夢に詳しい男性のお客さんがいて、寝ている時に見る印象的な夢は、今の精神状態や近い未来への暗示などであることが多く、夢だからといって馬鹿にできないということであった。
すると一人の女性客が、昨晩寝ていたら大きな怪物に追いかけられる夢を見て汗びっしょりで目を覚ましたけど、何か不吉なことがあるのだろうかと不安そうに聞いた。
それは精神的に追い詰められて

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「チラッと読んでみてもいいかも」

「チラッと読んでみてもいいかも」

ビジネスホテルなど初めての施設では、寝るのが怖くて電気を消せないと告白すると、その気持ちが分かるという者も、あまり気にせず寝れるという者も同じぐらいいた。

そこで僕が自分の家でも月に二〜三日はなんか怖い夜があって、真っ暗な状態では眠れないことがあると言うと、「それはない」とか「ビビりすぎだ」と馬鹿にされた。
その中の一人に「じゃあ豆電球点けて寝てるの?」と聞かれたので、「いやそういう時は間

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「猫と僕の関係」

「猫と僕の関係」

玄関を開けると猫の鳴き声が聞こえて、玄関前に置いたオリーブの植木鉢から三毛猫が顔を出した。
この猫は近くに住んでいるのかたまに遊びに来てくれて、僕が玄関を開けて外に出る度に、いつも「にゃ〜」と挨拶をしてくれる。雨の日のには玄関前のひさしで雨宿りしてることもあり、引っ越して来てからずっと良好な関係を築けている。

以前住んでいたマンションにも一匹の猫がよくやって来ていたが、そいつはなかなかにふ

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