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エッセイ

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今までの日々や、ささやかな僕の奮闘を書いていければと思います。
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#エッセイ

「チラッと読んでみてもいいかも」

「チラッと読んでみてもいいかも」

ビジネスホテルなど初めての施設では、寝るのが怖くて電気を消せないと告白すると、その気持ちが分かるという者も、あまり気にせず寝れるという者も同じぐらいいた。

そこで僕が自分の家でも月に二〜三日はなんか怖い夜があって、真っ暗な状態では眠れないことがあると言うと、「それはない」とか「ビビりすぎだ」と馬鹿にされた。
その中の一人に「じゃあ豆電球点けて寝てるの?」と聞かれたので、「いやそういう時は間

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「猫と僕の関係」

「猫と僕の関係」

玄関を開けると猫の鳴き声が聞こえて、玄関前に置いたオリーブの植木鉢から三毛猫が顔を出した。
この猫は近くに住んでいるのかたまに遊びに来てくれて、僕が玄関を開けて外に出る度に、いつも「にゃ〜」と挨拶をしてくれる。雨の日のには玄関前のひさしで雨宿りしてることもあり、引っ越して来てからずっと良好な関係を築けている。

以前住んでいたマンションにも一匹の猫がよくやって来ていたが、そいつはなかなかにふ

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「漫才みたいな」

「漫才みたいな」

夜中に通った事のない道を一人で散歩をしていると、角を曲がった所で少し広めの公園が現れた。樹木に覆われた公園のフェンスに沿って歩くと、公園内からサッカーボールでドリブルをする音が聞こえてきた。

小気味いいドリブル音からは、中々のテクニシャン振りがうかがえる。
昔は自分もこうして夜中に一人公園でドリブルの練習をしていたものだと、懐かしい気持ちで入り口から公園を覗いてみた。
しかし公園にはドリ

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「ニトリ信者」

「ニトリ信者」

ニトリをもの凄く利用してる事に気付かされた。
僕としては必要な時に必要な物を買いに行っていただけで、標準的な利用回数だと思っていた。だが、友人と飲みに行った時に「今日何してたん?」と聞かれたので、昼間ちょっとニトリに行ってたと答えると「いやどんだけニトリ好きやねん。今月でそれ聞いたの三回目ぐらいやわ」と驚かれた。その時初めて、ニトリに月三回は行き過ぎなのだと知ったのだ。

僕はなんだか恥ずか

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「新店長就任記念キャンペーン!」

「新店長就任記念キャンペーン!」

駅前に新しい居酒屋が出来てもう一年ほどになる。僕は毎日店の前を通るのだがいつも何かしらの目玉キャンペーンがやっていて、機会があれば一度の飲みに行きたいなぁと思っていた。
先日お店の前を通ると「今日から一週間ドリンク半額!」と書かれた張り紙を見つけ、その下には大きく「新店長就任記念キャンペーン!」と書かれていた。

僕はその張り紙を見た瞬間に「やった!ドリンクが半額で飲める」という喜びよりも、

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「本物のモンスター」

「本物のモンスター」

東京に住み始めてから十四年ほど経つのだが、僕のような生活をしている人間は、荷物も少なくお金もないので引っ越しを自分達で済ませてしまうことが多い。引っ越しと聞くと「手伝いますよ!」と、小遣い稼ぎに駆けつけてくれる後輩の存在も非常に心強く助かっている。

ただ一つ問題があり、僕の家には十年以上前に友人から貰った、ドラム式洗濯機という名の悪魔が鎮座しているのだ。この旧式の悪魔は、衣類を傷めず縦型の半

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「怪奇現象に悩む家」

「怪奇現象に悩む家」

一昔前によくテレビの心霊番組内で、怪奇現象に悩む家という企画が放送されていた。そして当時は、まさか自分がそんな家に住むとは思ってもいなかった。

番組内で起こる怪奇現象といえば、深夜のラップ音から誰かが廊下を歩く足音、部屋に設置した定点カメラには、住人以外ではない誰かの呻き声や喋り声、黒い靄のような人影がハッキリと録画されていた。
廃病院や心霊トンネルなど番組内で放送される他の心霊スポットと

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「世界のバランス」

「世界のバランス」

大阪から東京に仕事で来た後輩と久しぶりに会う約束をした。
あまり東京に来たことがない後輩を案内して回り、お昼には僕がオススメのラーメン屋へ連れて行った。その店はラーメンも勿論美味しいのだが、なによりも炒飯が絶品で後輩にも絶対食べて欲しいと思い、ラーメンの大盛りを頼もうとしていた後輩を説得してラーメンセットの食券を二枚と、ラーメン大盛りの食券を購入した。

「僕そんな、どっちも食べれますかねぇ」

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「低音の響き」

「低音の響き」

「難波さん、スマホで音楽聴くイヤホンにいくらまで出せます?」

一緒にいた後輩から突然そう声をかけられた。今使ってるのはプレゼントで貰ったものだが、自分で出すなら正直三千円か出せても四千円ぐらいだと僕が答えると「僕安いの駄目なんですよねぇ〜音質とかこだわっちゃうんで」と、僕が音質にこだわりがないとまるで知ってたかのような反応が後輩から返ってきた。そして後輩はそこからイヤホンのうんちくを僕に語り

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「帰省」

「帰省」

もうどれくらいライブに出ていなかっただろう。舞台に立つ感覚が鈍っているというよりも、自分が舞台に立っていたことが想像できないような感覚だった。
中学時代からの友人が、地元の寝屋川で開催する朗読ライブにゲストという形で声をかけてくれたのだが、必要なものは全部分かっているのにそれが一つも手の中に無いような心理状況で、何から始めればいいのか順番さえ選べずにいた。

だからといって感覚を戻すために、

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「花瓶の葬式」

「花瓶の葬式」

花瓶を割った。

その花瓶は僕の友人がまだ若く金もない頃に、それでもどうしようもないほどに魅了されて購入したものである。それから十年以上大事に使っていたその花瓶を、友人は僕の働くBARのカウンターに置いてくれと持ってきた。それは友人がもうその花瓶に飽きたとか、もっと高価でいいものを見つけたからという理由ではない。友人は自分の大事な花瓶と、その想いを僕に託したのだ。そして僕は、その花瓶を割った。

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「限界突破」

「限界突破」

東京から大阪へ車で向かうことになった。メンバーは僕と友人、そして友人の呼んだ後輩の三人である。色々と運ばなければいけない荷物があったのでバンタイプの大きな車を借り、僕らは朝早く出発して大阪を目指した。

東京から大阪までは車で早くても5〜6時間、安全を考慮して休憩を取りながらとなると8時間ほどかかってしまう。車の運転は見た目よりずっと神経をすり減らすもので、普段運転などしない僕らにとってはかな

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「今年最後の美容院」

「今年最後の美容院」

今年の一月から新しい美容院に通い始めている。去年まで髪を切ってくれていた美容師さんが年内いっぱいで離職するということで、なるべく家の近くにある美容院を探したら居心地のよさそうな店を見つけることができた。
去年まで担当してくれていた美容師さんは、「難波さんのカットのデータは残しときますので、次回指名なしでこのまま来ていただいても引き継げるようにしときます」と言ってくれたのだが、新しく担当になる美

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「あの夢の余韻」

「あの夢の余韻」

久しぶりに足を挫いた。こんなにもちゃんと足を挫いたのはいつ以来だろうか。
こうして右足首から迫り上がってくる久しぶりの痛みに、哀愁を帯びた懐かしさまで感じている。
歩いてる途中にちょっと足を捻ったぐらいであればわざわざこうして文章にすることはない。サッカーの試合中に、ファール覚悟の殺人スライディングを食らった時ぐらい足首を挫いたのである。

その日はお酒を飲んで気分が良くなっていた。先輩に

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