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木の子のこの子

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随想、散文だけど、自分の指針
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#文学

秘密の重みと植木鉢ヘルメットの公園

秘密の重みと植木鉢ヘルメットの公園

公園の入り口に、植木鉢を頭から被ってヘルメット代わりにしていた少年がこちらへ歩いてきた。僕は、すぐに少年からその目を離せなくなった。

奇抜な姿をしていたからなのか、もしかしたら、植木鉢柄の帽子だったのかもしれないと、自分の目の錯覚なのかと思ったからだ。

思い込みは、時に事実を覆す。

だが少年は、間違いなくプラスチック製の植木鉢を頭から被り、普段使いしているような空気を持ち、ちゃんとしたあご紐

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かなりタイプの女性と老人にハルメイタ日は。

かなりタイプの女性と老人にハルメイタ日は。

少し肌寒く、桜が咲き誇るのを我慢していた日のはなし。

満開を感じる前に行くべきと考えた。いや、会いに行くべきと考え直した方が正しいのかも知れない。

私は、少し遠回りをして春を感じたかった。

かなりタイプの女性がいるお気に入りのコンビニは、海に面しているこの街では、その象徴を海に全てを奪われてしまい、存在を忘れられそうな山側の場所にあった。私は、時間をかけてその忘れられそうなコンビニへ向かい珈

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彼に傷付けられながら、授けた仕事と価値の人生訓。

彼に傷付けられながら、授けた仕事と価値の人生訓。

会社の後輩と片道90分ほどかかる場所へ向かう事になった。彼は、私をnoteに誘った男だ。彼は、車の鍵を私に渡すとこう言った。

「コニシさん。自分、車30分以上運転すると疲れちゃうんで、運転してもらっていいですか?」

彼は私が疲れる事を、その事実はまるで存在しないかのように、一瞬の澱みもなく言いきった。

私は、鍵を受け取るという選択をせざるを得なかった。

横須賀に向かう車は、湘南海岸を右手に

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手紙になるような一日を終えて、自己を知る。

手紙になるような一日を終えて、自己を知る。

その日の約束は、昨年の9月からの約束になる。僕は、逸る気持ちを抑えきれずに待ち合わせの40分程前にそこに着いた。伊勢佐木町のBOOK・OFF前が待ち合わせ場所だったのは、きっと僕が早く到着しても大丈夫なようにという気遣いからだろう。

僕に渡したい本がある。

そう言っていただき、実際に会うまでに5ヵ月。聞きたい事、話したい事が積もりに積もっていた。

大江健三郎という一人の作家がいる。僕が大江健

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贈られた「手作りカルタ」で僕は僕を知る。~自己紹介編~

贈られた「手作りカルタ」で僕は僕を知る。~自己紹介編~

「午前中に届くように郵送したので受け取ってください」

そう言われて待機していた僕に届いたものは、自分を見つめるにはタイミングが良すぎる理由になるものだった。これを贈り物と言わずに通過出来そうもない。

北九州からの贈り物は、明らかに僕への贈り物だった。それは厄年を迎える僕の躍年への願いが込められていた。中でも目を奪われずにいられない箱があった。そこに描かれていた文字は、

かるTAWA。

かる

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第8回《ふるさとと文学2022》「開高健の茅ヶ崎」に行ってきた。

第8回《ふるさとと文学2022》「開高健の茅ヶ崎」に行ってきた。

12月下旬一枚のハガキが家に届いた。

ハガキは、往復ハガキの返信用で少しでも市役所の方に上手く見せようと、若干細目に書いた見栄っ張りな字がバランス悪く中央より若干下に書いてしまっていた。

僕は、そのハガキが何を意味するかは知っていたが、裏を捲る心の準備をしてからハガキを覗いた。

入場整理券〈売買禁止〉
ふるさとと文学2022~開高健の茅ヶ崎

と目に飛び込んで来た。

当選に胸の高鳴りを覚え

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よき時間と思考の行方。生誕の躍年添えで一年が始まる。

よき時間と思考の行方。生誕の躍年添えで一年が始まる。

年末。自らの振り返りを急にしたくなったのは、空気が深く澄んで音が乾いて聞こえるこの季節特有の一人沁みた空間のせいかも知れない。

一年の締めくくりに呑みに出掛けたくなったのは、自分が納得出来たからなのか、それを誰かに話したかったのかそれはわからない。

昨年、自分の周りに起きた出来事は自分の立ち位置を明確にしてくれて今後どうすべきかを知れる事だった。40年を生きて来て先がどれくらいあるかは明確では

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本との本当の出会いを考える僕に、イケてる風が吹くのは止めようもない事実

本との本当の出会いを考える僕に、イケてる風が吹くのは止めようもない事実

本との出会いを考える時がある。
読書好きな方は、一度でも考えた事があるだろう。今どうしてこの本を読んでいるのだろうとか、この本に呼ばれている気がするとかだ。

私の人生に圧倒的に足りなかったもの。

本をプレゼントされるということ。

私の周囲には、読書の話や本についての話をする機会など全く無かった。今でも無い。

大抵の仲間内の会話でも、

「本好きなんだな。Instagram見たよ。知らなかっ

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蛹(さなぎ)の必要性を問うたら結論としてとんだ迷惑かけているはなし

蛹(さなぎ)の必要性を問うたら結論としてとんだ迷惑かけているはなし

昆虫の世界には、「完全変態」と「不完全変態」に生態が別れる。これを要約するならば

「蛹(さなぎ)」になるかどうかである。

アサミサガシムシさんに昨日のこちらの記事を話題にしていただいた。

彼女に話題にしてもらった記事がこれだ。

彼女がnoteに最後に記事を書いたのが去年の9月末。それから8ヵ月。彼女は改名して戻ってきた。
この8ヵ月が彼女の「蛹」だったのは間違いないだろう。

北海道に生息

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チンニング(懸垂)の随想

チンニング(懸垂)の随想

トレーニングをしていた。限界まで目指したチンニングは、目の前の視界をチカチカさせてきた。

「お前の話しを聞いていると、いつも一周するんだ」

彼は、仕事中の俺に話し掛けてきた。

「今、その話しをするのは時間が違う。それに手伝っているのは、お前の仕事だ」

彼は、俺の話しをろくに聞きもせずに、早口で口撃してくる。

「手を動かしながら話せよ。お前は、そうやって何もわからない、俺を見放して

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