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魔法使いの弟子日記

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服の魔法を使えるようになるために、洋裁学校のことや、その時の気持ちをツラツラ紡ぎます。
運営しているクリエイター

#人生哲学

君のお守りになれるなら

君のお守りになれるなら

強い私になれる服、優しい気持ちになる服、
特別な日のための服、毎日生活するための服。

私はやっぱり「お守りになる服」を作りたい。

服を通して、大好きな人達をそっと包み込む。

大丈夫。離れていても、ちゃんとそばにいるよって伝えられるような。

好きな服を着ているという悦びを、いつまでも、感じ続けられるような。

透ける生地、揺れるリボン、ふわふわの肌触り。

世界中の人が、柔らかい素材を纏えば

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もう二度とよそ見なんてしない

もう二度とよそ見なんてしない

今後一生、服と本気で向き合えなくなるなんて、やっぱり嫌すぎる!二度と、諦めるもんか。

そう思わせてくれたことだけは、君に感謝して
おこうかな。

服やものづくりに携わる仕事がしたいと思って、服飾の専門に再進学してから、一年が経った。

アパレル業界のジレンマや、悪循環を知って、
外側の業界からアプローチしていくのもアリかもなんて思い始めていた矢先に出会ったのが君だった。

大学時代に研究していた

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灰になってゆこう

灰になってゆこう

あぁ、本当に自分の未熟さに嫌気がさす。

理想と現実のギャップが、私を突き刺して、
いつも背伸びばかりしている気がする。

それでも。

再来週、ついに大好きな人のライブがある。

彼の紡ぐ言葉と音楽が好きで好きでたまらなく、
毎日欠かさず聴いている。

「いつかあなたの曲に合わせて服を作ります」
1年前、生まれて初めて書いたファンレターに、
精一杯の目標を綴った。

“鯨の子”から着想を得たオー

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フォーエバー・マイヒーロー

フォーエバー・マイヒーロー

「しょうがないな〜もう1枚ずつ作るよ!」

そうそう、そうこなくっちゃ。
いつまでも、ずっと、私のヒーローでいてよね。

半年ぶりに会う母は、想像以上に弱っていた。
ねえ、前は、一緒にスイスイ歩いてたじゃない。

なのに、今は。
気を抜くと、私の何メートルも後ろにいて。
エレベーターのボタンを押していて。
手すりがないと、掛け声がないと、立てなくて。

知らなかった。なんか、嫌だ。

だって、だっ

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可哀想なスカートなんて

可哀想なスカートなんて

「床にスカートついてんで。あーあ、可哀想や」
製図の先生が、私の足元を見てポロッと呟く。

それって、服飾の世界では当たり前の感覚なの?

分からない。何が可哀想なのか。

だって、この足首まで隠れるふわふわスカートは
引きずるくらいが1番美しいと言うのに。

ほんの少しの風で舞うような位に繊細な布は、
寂しい私を丸ごと包み込んでくれる魔法なの。

裾を引きずりながら歩いたその日の夜は、
刺繍糸や

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その先ダイヤにつき

その先ダイヤにつき

「一人前になるには、10000時間の努力が必要。
 大人から始めるなら、もっとかかるよ。」

馴染みの居酒屋で、ほろ酔いの父が呟く。

父は、博士課程の頃、研究者になるために、
「徹夜部」なんて作って、毎日寝る時以外は、
ずーーっと、研究してたんだって。

それが、楽しくて楽しくて仕方なかったらしい。

正直、私には全く自信がない。

服が大好きで、可愛い服を作りたいのは事実。

けれど、私よりも

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数字パウダー

数字パウダー

今日は、はじめての洋裁教室。
膝丈のスカートを作るために、製図をした。

最初は慣れなかった50㎝の長すぎる定規も、
なかなか真っ直ぐに引けなかった線も、
ちょっとだけ力の入れ方が分かった気がする。

だけど、不思議なのは、いくら合わせても、
ウェストと丈が微妙に合わないということ。

先生と何度も相談しながら、消しては書いてを繰り返す。

それに、洋裁は想像以上に数字を沢山使う。
いや、むしろ数

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