マガジンのカバー画像

文学マガジン

1,611
自作の小説、俳句・短歌、エッセイ、詩など。
運営しているクリエイター

記事一覧

掌編小説 | 家族

掌編小説 | 家族

 インターホンのカメラに映らないように顔を隠した。
「だれ?」と姉が訝しむ。
「わたし」とわたし。
「くだらないことやっていないで、上がってらっしゃい」
 勝手に上がれないからインターホンを押したんじゃないか、とつぶやきながらエントランスのドアを通過した。
 姉が住むのはマンションの三階フロアだ。廊下を歩きながら、ひとつひとつ、家の表札を読む。
「しばた…かなもり…にしだ…キム…さかもと……」
 

もっとみる
SS 【#永久欠番のあなたへ】#青ブラ文学部(550文字くらい)

SS 【#永久欠番のあなたへ】#青ブラ文学部(550文字くらい)

 書類仕事がたまり疲れていた時にピコンとPCが鳴る。

「ん? メールか?」

【永久欠番のあなたへ】と書かれたメールが来た。イタズラじゃないようだ。メールに添付されたファイルを解凍するとドキュメントが表示される。

「業務連絡です、あなたは永久欠番になりました、ただちに社内から退社してください」

(……退職の強要か? 意味がわからん)

 メールを印刷して上司に見せた。

「ああ、永久欠番制度

もっとみる
【小説】「生き直し」プロローグ・第一話

【小説】「生き直し」プロローグ・第一話

プロローグ

 ショパン『夜想曲十三番』、ショパンが恋多き女ジョルジュ・サンドと暮らしていた頃の作品だ。夜想曲とは、つまり男女が夜に奏でるラブソングではないかと私は思う。音大のホールで、明日のピアノコンクールファイナルに出場する人向けに開かれたリハーサルで、私は今、演奏している。二倍速の箇所で、指がもたついてしまい、感情が絡みつく。二回目の主題の旋律に感情を込めようとすると、突然、ジョルジュ・サン

もっとみる
【エッセイ】ヴェールのような雲

【エッセイ】ヴェールのような雲

レースのような雲でした

花嫁さんの
ヴェールのような

美しいものは
遠くに出かけなくても
すぐそばにあるものですね

永久欠番の恋 2390文字#青ブラ文学部

永久欠番の恋 2390文字#青ブラ文学部

女性は恋を上書きして、
男性はファイル別の保管をする。

よく、男女の恋愛においての記憶の仕方を、上の様に例える。

俺に限って言えば、その通りだな…なんて思う。

⚓⚓⚓
「はぁ〜、まだ先は長いな…」

俺はクルーズ船の船員をしている。

俺の乗るクルーズ船は半年で始発地から目的地へ行き帰ってくるクルーズ船で、その半年は休みなく働き、残りの半年は、ほぼ休暇になる。

だから、まあ、大変だけど、楽

もっとみる
パンダのわんわん

パンダのわんわん

こんにちは
パンダのわんわんです
パンダなのか犬なのかはっきりしろって言われます
犬です
パンダに飼われている犬です
キティが飼ってるチャーミーみたいなものです
ミッキーが飼ってるプルートみたいなものです
ミッキーは二足歩行でプルートは四足歩行です
ぼくは四足歩行ですが
スヌーピーパイセンに憧れて
二足歩行も練習しました
わんわんという名前の
アイデンティティについて悩んでいます
わんわんは、某教

もっとみる
アンジェラ・アキ💌 | 手紙~拝啓 十五の君へ

アンジェラ・アキ💌 | 手紙~拝啓 十五の君へ

拝啓 
この手紙読んでいるあなたは
どこで何をしているのだろう
十五の僕には誰にも話せない
悩みの種があるのです

Dear my brother :
When you read this letter,
what will you be doing?
and where will you be?
I'm fifteen years old,
and I have a problem

もっとみる
英訳🎵待つわ | あみん

英訳🎵待つわ | あみん

連休中に下書きを
放出したいと思います。
(This tranlation leaves much to be desired, though.)

https://youtu.be/TZmpLnnripY?si=QnrrVigLYLGZwA_-

かわいいふりしてあの子
わりとやるもんだねと
言われ続けたあのころ
生きるのがつらかった

I would always be told
I pre

もっとみる
書評 | 青豆ノノ(著)「相川だけはごめんです」(わたしの現代新書)

書評 | 青豆ノノ(著)「相川だけはごめんです」(わたしの現代新書)

 襲撃の暴露本!!
 これだけ進んだ情報化社会の中で、青豆ノノ「相川だけはごめんです」の出版は暗々裏に画策されていた!!

 今まで明るみになることがなかった、妖しい謎の女・青豆ノノのベールを本人自らが剥がした。私は、郷ひろみ「ダディ」の出版の時よりも大きな衝撃を受けた。 

 暴露本と言っても、決して私生活を曝しているわけではない。しかし、謎に包まれていた氏の執筆技法が惜しげもなく開示されていた

もっとみる