柴崎友香

小説家です。

柴崎友香

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最近の記事

てきとうに暮らす日記 20

 前回を書いてから二週間以上経っていて、そんなに経ったのかと時間の感覚がうまくつかめないのは、その前からだけど、日記を書けないわたしが日記的な形式のなにかとはいえ継続しないのは、うーん、どうしたもんかなー、ということがいくつかあったからだ。  ものすごく忙しいとか、とても困ることが起きたとか、そういうのでもすぐ書けなくなるのやけども、うーん、どうしたもんかなー、という切羽詰まってはなくてもさっと片付きもしない簡単に結論できない懸案事項がいくつかかさなると、書くことも、日常生活

    • てきとうに暮らす日記 19

       『きょうのできごと』を書いたのは、1999年のことだった。正確に言うと、5つの短編から成る『きょうのできごと』の1話目「レッド、イエロー、オレンジ、オレンジ、ブルー」を書いたのが1999年の確か4月で、それが初めて世に出たわたしの小説だった。原稿用紙でたった15枚の短編で(パナソニックのワープロで書いていた)、そのときはその1話だけだったのが、続きを書くことになり、その年の終わりまでに残りの4話を書き、単行本が出たのは2000年の1月。わたしの1冊目の本。  それから、ちょ

      • てきとうに暮らす日記 18

         かなり根をつめて考えた仕事の原稿を送り、延々と校正をしていたら、目が覚めて、え、さっきの長文全部夢なん、となる(校正部分が夢で、原稿はちゃんと書いてました。よかった)。前に映画かなんかで夢の中ではスイッチが押せないとか文字が読めないとかあれこれ言うててほんまかなと思ったけど、その後夢の中でスイッチも押せたし、文字は完全に読めるというか校正作業ができる。そういうの、人によって全然ちゃうのやろうな。わたしは夢の中でも常にわたしやけど、ほかのものになってるという人の話を聞いてめっ

        • てきとうに暮らす日記 17

           雨が降る前に近所を歩く。今年は冬がない感じに寒く中ってさくらがめっちゃ早かったけど、ほかの花も全部早くて、いつもの感覚では連休ぐらいに咲く花がもう咲いたり散ったりしていて、部屋から出ないあいだに季節がどんどん進んでて、さびしいような気もするし、人間のことに関係なく季節や天気が変わることに救われる気もする。  ほんまやったら今日はROVOのライブに難波ベアーズに行ってるはずやって、と書いたとたんにこの「ほんまやったら」ってなんやろうと思う。「ほんま」を「事実」とすると行けなく

        てきとうに暮らす日記 20

          てきとうに暮らす日記 16

           「よう知らんけど日記」の原稿を書いて送る。この日記もだんだん実際の日付けとずれてきたけれど、「よう知らんけど日記は」もっと大幅にずれていて、半年とか、1年近くずれたこともあって、去年の後半をちょっとジャンプして、今は今年の3月のところ。こんな調子でも連載を続けさせてもらっているのはありがたいというか、心が広いとしか言いようがない京阪神エルマガジン社さま。連載を始めたのは2011年の2月ごろで、そのあとすぐに地震があった。日記を書かないわたしが日記のようなものを書いていてその

          てきとうに暮らす日記 16

          てきとうに暮らす日記 15

           天気が周期的に変わるのは季節の変わり目で仕方がないとはいえ、大雨→強風のくりかえしはしんどい。東京に来てからはとにかく風が強いのが、なぜかとても怖い。関東平野の遮るところのない風が、大阪よりも勢いがあるのかもしれないけど、とにかく音が全然違って、雨よりも風が続くと気が滅入ってしまう。いや、たぶん、いろんな人が滅入ってて、まあ、しょうがないよな、と思うけど、強い風にはいつまでも慣れない。  何日か前に、ずっと家で仕事するんやから服はパーカとスキニーやって書いたけど、それはそう

          てきとうに暮らす日記 15

          てきとうに暮らす日記 14

           晴天。富士山がくっきり見える。昨日の大雨は富士山では吹雪だから、真っ白。まだあのへんは冬。  天気がいいと、だいぶ気分が違う。ときどき、小説に書いてある風景を心象風景みたいな言い方で天気だとか場所の様子が登場人物の気持ちを表していると解説されることがあるけども、わたしは逆だと思う。天気が悪いと落ち込むし、晴れると気持ちが上向くし、人間の心が天気に影響はしなくて(勝手に解釈することはあると思う。悲しいときに雨が降ってるとこの雨は自分の気持ちみたいと思うこと)、天気や場所が心に

          てきとうに暮らす日記 14

          てきとうに暮らす日記 13

          雨は昨日の夜遅くには降り出していて、夜中も激しい雨の音で何度も目が覚めた。午前中はずっと薄暗くて、もともと曜日の感覚が薄かったところに今回の状況でますます曜日感覚が混乱し、この荒天では時間感覚さえあやふやになっていく感じがする。  昼過ぎに荷物が届いて、こんなときにほんとうに申し訳なくなる。こんなときに限って事前に指定とか変更とかできない荷物で、配達の人はめっちゃ濡れてはって、荒天のときは配達休みでもいいんちゃうかと思う。アメリカに滞在してるときに、通販でなにか買おうとしたら

          てきとうに暮らす日記 13

          てきとうに暮らす日記 12

           用事があって、何日ぶりやろう、電車に乗って出かけた。ほんの数駅やけど。昼間の電車はがらがらで、1車両に4、5人という感じ。駅もがらんとしていて、こんな光景は初めてやなあと思う。ほぼ全員がマスクをしている。手作りっぽい布マスクの人もよく見るようになった。用事を終えて、すぐ帰ろうと思ったが、近くのお店に入ってちょこっと洋服を見てみた。店内も全然お客さんはいないし、街全体がとても静かだ。駅からの道の途中にあったスーパーだけ、自転車もたくさん停まってて人も多そう。とてもいいお天気で

          てきとうに暮らす日記 12

          てきとうに暮らす日記 11

           何日か前に、外国のニュース映像ではスーパーなんかでも2メートルあけて並んでるのを見るけど近所では見かけないと書いたのやけど、ドラックストアもスーパーもレジが透明ビニールシートでガードされ、並ぶ人が待つラインも表示されるようになった。間は50センチくらいかなというのは、日本の店は狭いからしょうがないのやろうか。レジの人もビニール手袋をしてはって、レジ打ちにくいやろな、それでも不安やろうな、とバーコードのピッという音を聞きながら思う。  出かけるのを控えるようになって2か月、最

          てきとうに暮らす日記 11

          てきとうに暮らす日記 10

           風が強い。関東平野は風が強い、と大阪から来たわたしは思う。しばらく前に古井由吉さんが亡くなられたけど、古井さんの文章に東京の風の強さ、特に春先の埃っぽい風のことが何度も書かれていて、わたしはこの季節にはいつもそれを思い出す。  大阪にいるときは、こんなふうに家の中にいて風の音がしんどいみたいに感じたことはなかった。天気がよくても、風が強い日は外に出られない。  在宅ワークでこうしたらいい的な情報とかアイデアとかがツイッターやいろんなところで回ってきて、なるほどなーと思うこと

          てきとうに暮らす日記 10

          てきとうに暮らす日記 9

           1週間ぶりぐらいに富士山が見えた。建物の隙間にちらっと見える程度なのやけど、そんなに高いところでなくても富士山が見えるのは東京に住んでるという感じがする。昨日の大雨は、富士山の周りでは雪やったらしく、真っ白になっている。桜が開花するあたりから富士山が見えなくなって、もう冬も終わったんやなと思っていたから、くっきり見えてうれしい。でも、お昼過ぎぐらいには空気が不透明になって見えなくなった。夏の間は、富士山はない。  午後に近所の住宅地を少し歩くと、あちこち花が咲いてた。つつじ

          てきとうに暮らす日記 9

          てきとうに暮らす日記 8

           夜中から降り始めた雨がかなり強く、昼になっても薄暗い。昨日は地震の心配をしたけど、豪雨で避難しなければならない地域も出ているらしい。これだけ人との距離を取らないといけない状況で、どうやって避難するのか、難しいことばかり。  雨の勢いはまったくおさまらず、夕方に来てくれはった宅配便の人も大変そう。送らなあかんものがあって頼んだけれど、今の事態になる前から天候が悪いときとか年末とかは申し訳なくて、今はなおさらで、なるべくまとめるとか、必要なもの以外は買わないとかしてる。それでも

          てきとうに暮らす日記 8

          てきとうに暮らす日記 7

           未明に地震があった。はっきりと最初の縦揺れとその後の横揺れのあいだに差があって、かなり揺れた。少なくとも、去年の6月に今の部屋に引っ越してからいちばん大きな地震だった(家にいないときにこれくらいのが一回あったかもしれない)。部屋は、ほぼすべての壁が本棚で埋まっていて、落ちてくると困るので、本がないのは押し入れの戸のところだけで、そこへソファ(ヨギボー)を移動させた。そのほうが部屋はなんとなくすっきりした。去年、台風が来たときにも今地震が同時に起こることだってあると思ったが、

          てきとうに暮らす日記 7

          てきとうに暮らす日記 6

           昨日、明日から閉まる店が増えるからさびしくなるやろうなと書いたけど、天気がいいし、ちょっと歩いてこようかとか思ってたら、遠くに出かけないからかえって近所の商店街がすごい人出やという情報を得て、出ないことにする。ほとんどの人がマスクをするようになり、飲食店もがらがらやったりするけども、たとえば外国のニュース画像で見るようなスーパーに入る人数が制限されてるとか床に線が引いてあって間をあけて並ぶとかはほぼ見たことがない。家にいる家族が多くて食べものやらなんやら買い出しにも行かなあ

          てきとうに暮らす日記 6

          てきとうに暮らす日記 5

          お昼にプリンの最後の1個を食べた。甘いものはそんなに食べれない。  お酒が好きな人で、つまみは塩でいいとか、好きな食べものは油と塩とか、言ってた人を複数知ってるけど、わたしも塩系が好みです。甘いものは、きらいではないというか、一口食べる分には好きやけども、渋いお茶がないと食べれません。渋いとか苦いとかも好きです。お茶は出過ぎて渋いぐらいがちょうどいいです。  というわけで、牛乳消費計画は毎日できないし、調味料も今写真に撮れるものがないので、今日は掃除道具。「よう知らんけど日記

          てきとうに暮らす日記 5