詩 | ニルヴァーナ
死装束に身を包み
客人を待つ
火鉢から
静謐な香りが漂う
椀の美しさを愛でる
ひとりひとりより送られる
無言の惜別の言の葉を
合わせ呑む
刻一刻と
旅立ちの時刻が迫る
他の誰も
二度とこの椀に
接吻出来ぬように
粉々に砕く
客人を黙したまま見送り
我ひとりとなる
遅く逝くか
早く逝くかの違いだと
自らの心を鎮めんとす
有限の世界から
無限の冥土への
旅立ちと思えば
何を恐れることがあろう
鳥たちの羽音と
木々の葉の軋轢の音が
次第に遠退いてゆき
我が魂は永遠の世界へと旅立っ