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2020.12.29~ 京都 99' 見たもの読んだもの心に残ったものたち…

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2020.12.29~ 京都 99' 見たもの読んだもの心に残ったものたち インスタによくおります

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固定された記事

きみに青信号一回分の幸運を

出掛けるときにこんなことを想ってくれる人が傍にいてくれたら、それだけで一日頑張ろうって思えそう。 今回のnoteでは来月からはじまる社会人生活でも聴き続けたい音楽に…

nite
3年前
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月光、幻想、死、狂気――ドイツでロマン派博物館を巡った

単身欧州出張の帰国日、朝から夕方までの時間フランクフルトの街を駆け抜けて観光してきた。 かねてから行きたいと思っていたDeutsches Romantik Museum(ロマン主義をコン…

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11か月前
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【フーコーから】アーカイヴとは何か【ベンヤミンまで】

アーカイヴとは何か。留意しておかねばならないのは、一般的にイメージされる図書館や資料館と、フーコーが論じたアルシーヴは別物であるということだ。どう別物なのか、あ…

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2年前
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落ちるピーター・パン『キャッチャーインザライ』

今回のnoteでは、Catcher in the Rye (1951)『ライ麦畑でつかまえて』J・D・サリンジャーの作品を取り上げる。 個人的この作品は原文で読むのがベストだと思っている。…

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2年前
93

niteの映画・ドラマラック

メモ代わりに好きな映画をメモしていきます。随時更新 心に響いた作品アトランティスのこころ グッドウィルハンティング ギルバート・グレイプ What's Eating Gilbert Gra…

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3年前
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『乳と卵』感想

*ふざけてます。 日本文学、しかも現代小説となるとさっぱり疎いのですが、最近社会人になってどんどん文学が遠のいてきたこの離岸流でちょっと文体やらトレンドやらを勉…

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3年前
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『ハウルの動く城』原作―荒地の魔女の呪い

※いかなる場合も文章の無断転載・剽窃を固く禁じます(プロバイダー開示手続きをとります)。引用元を明らかにした上でのさらなる考察等は大丈夫です。大した文章でもないの…

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3年前
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ダイアナ・ウィン・ジョーンズ『九年目の魔法』 タム・リン伝説

私の聖書でありアカウント名の由来でもある、ダイアナ・ウィン・ジョーンズの小説『九年目の魔法』 ため息をつき、本をベッドに伏せる。前に読んだはずだけど、こんな題…

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3年前
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雪のふる街 ポール・オースター『ニューヨーク三部作』

京都も今週は雪になるそうで。最近結構暖かかったからいよいよやってきちゃうのかあ……底冷えの厳冬。とぼやきながらこのnoteを書いている(追記:このnote書くのをいったん…

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3年前
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愛は死に打ち克てるか─カズオ・イシグロ『忘れられた巨人』【解説 後編】

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3年前
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これは、「今」を救うための物語―カズオ・イシグロ『忘れられた巨人』【考察前編】

2021年3月に『クララとお日さま』 早川書房から、カズオ・イシグロの最新長篇『クララとお日さま』 (KLARA AND THE SUN, 翻訳:土屋政雄)が英Faber & Faber社、米Knopf社…

10,000
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3年前
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残酷でしあわせなおとぎ話『パンズ・ラビリンス』【考察】

「─だから少女は幻想の国で永遠の幸せを探した─第79回アカデミー賞3部門を受賞作」 …というキャッチコピーにつられて『パンズ・ラビリンス』を初めてみたのは中学生のと…

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3年前
179

【レビュー】『えんとつ町のプペル』は本当に酷い絵本なのか

さっき『えんとつ町のプペル』読みおえました。先月ある友人に頂きまして…それからまた別の友人が子どもに買ってあげようかな…と迷ってて。読んだ感想を口で全て説明する…

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3年前
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A・Aミルンの秋に寄せた美しいエッセイ

寒くなると、A・A・ミルンの詩集を手元に置きたくなる。 今回翻訳したくまのプーさんの著者、ミルンによるユーモアの効いた美しいエッセイはNot That It Matters (1920)に…

nite
3年前
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架空のアパートの住人になってみませんか

ステイホーム期間中暇を極めすぎたniteがTwitterでやっていた「#いいねした人を同じアパートの住人として紹介する」の一部をせっかくなのでまとめました。 https://twitter.

nite
3年前
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きみに青信号一回分の幸運を

きみに青信号一回分の幸運を

出掛けるときにこんなことを想ってくれる人が傍にいてくれたら、それだけで一日頑張ろうって思えそう。

今回のnoteでは来月からはじまる社会人生活でも聴き続けたい音楽について書きました。大学生活を支えてもらった、渡會将士(わたらいまさし)さんのの魅力を語ってます。来月から社会人なので、推しは推せるときに推しておけというやつです。

最初に、こんな音楽リスナーは渡會さん向けだよって人のタイプを挙げとき

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月光、幻想、死、狂気――ドイツでロマン派博物館を巡った

月光、幻想、死、狂気――ドイツでロマン派博物館を巡った

単身欧州出張の帰国日、朝から夕方までの時間フランクフルトの街を駆け抜けて観光してきた。
かねてから行きたいと思っていたDeutsches Romantik Museum(ロマン主義をコンセプトにした博物館は世界でここだけ)での体験を旅情と共に書き残しておこうと思う。

ゲーテ『若きヴェルテルの悩み』(1774年)における「愛」、フィヒテの「哲学」、ホフマンの『牡猫ムルの人生観』『砂男』における「自

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【フーコーから】アーカイヴとは何か【ベンヤミンまで】

【フーコーから】アーカイヴとは何か【ベンヤミンまで】

アーカイヴとは何か。留意しておかねばならないのは、一般的にイメージされる図書館や資料館と、フーコーが論じたアルシーヴは別物であるということだ。どう別物なのか、あるいはどう近似しているのかという説明は塩川氏の文章が個人的に最もしっくりきているので引用させていただく。

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落ちるピーター・パン『キャッチャーインザライ』

落ちるピーター・パン『キャッチャーインザライ』

今回のnoteでは、Catcher in the Rye (1951)『ライ麦畑でつかまえて』J・D・サリンジャーの作品を取り上げる。

個人的この作品は原文で読むのがベストだと思っている。なぜなら主人公ホールデンの特徴的な語りのリズムーーわざと乱暴な言葉を使いたがる未熟さ、聴衆あるいは世界に語りかけるような独特な「you」の使い方ーーは日本語に翻訳しきれないニュアンスを含んでいるからだ。ネット上

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niteの映画・ドラマラック

niteの映画・ドラマラック

メモ代わりに好きな映画をメモしていきます。随時更新

心に響いた作品アトランティスのこころ
グッドウィルハンティング
ギルバート・グレイプ What's Eating Gilbert Grape (1993)
ショコラ Chocolat (2000)

ホールズ─穴
『P.S. アイラヴユー』(PS, I Love You)
アイルランド出身の女性作家セシリア・アハーンのデビュー作となる2004年

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『乳と卵』感想

『乳と卵』感想

*ふざけてます。

日本文学、しかも現代小説となるとさっぱり疎いのですが、最近社会人になってどんどん文学が遠のいてきたこの離岸流でちょっと文体やらトレンドやらを勉強する旅に出たいなという思いがあって、溢れかえる棚や崩れ落ちそうな積読の砦から目を逸らし逸らし新しい本を物色したわけで、英米で翻訳されるくらい話題になってるしヨーロッパかぶれのわたしにとってもとっつきやすいかしらんと買ってみたのがこの川上

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『ハウルの動く城』原作―荒地の魔女の呪い

『ハウルの動く城』原作―荒地の魔女の呪い

※いかなる場合も文章の無断転載・剽窃を固く禁じます(プロバイダー開示手続きをとります)。引用元を明らかにした上でのさらなる考察等は大丈夫です。大した文章でもないのにコピペする人が多いので…

金曜ローでハウルやるのか~じゃあ愛読書『魔法使いハウルと火の悪魔』Howl's Moving Castle(1986)再読しよう ღ と思ったついでに書きました。原作者ダイアナ・ウィン・ジョーンズ(最近映画化

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ダイアナ・ウィン・ジョーンズ『九年目の魔法』 タム・リン伝説

ダイアナ・ウィン・ジョーンズ『九年目の魔法』 タム・リン伝説



私の聖書でありアカウント名の由来でもある、ダイアナ・ウィン・ジョーンズの小説『九年目の魔法』

ため息をつき、本をベッドに伏せる。前に読んだはずだけど、こんな題名だったろうか? 壁にかかった写真の額を見上げる。これもこんな写真じゃなかったはず。この九年間で本当にあったことと、今おぼえていることが喰い違っている。まるで過去が変えられてしまったかのよう。大学生のポーリィは、十歳のころの思い出をたぐ

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雪のふる街 ポール・オースター『ニューヨーク三部作』

雪のふる街 ポール・オースター『ニューヨーク三部作』

京都も今週は雪になるそうで。最近結構暖かかったからいよいよやってきちゃうのかあ……底冷えの厳冬。とぼやきながらこのnoteを書いている(追記:このnote書くのをいったん中断していたので今はもう春が目覚めている。梅が綺麗だ)。

今回の記事表紙に使用させていただいたのは(嬉しいことにご本人様からご了承頂きまして)絵本作家たなか鮎子(Tanaka Ayuko)さんが2014年ギャラリーハウスマヤTw

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これは、「今」を救うための物語―カズオ・イシグロ『忘れられた巨人』【考察前編】

これは、「今」を救うための物語―カズオ・イシグロ『忘れられた巨人』【考察前編】

2021年3月に『クララとお日さま』
早川書房から、カズオ・イシグロの最新長篇『クララとお日さま』 (KLARA AND THE SUN, 翻訳:土屋政雄)が英Faber & Faber社、米Knopf社との世界同時発売される。

一応Faber & Faber社で予約してるんだけど、ちゃんと日本に届くのかな……はやく読みたい。

今回の記事は、来たる新作を読む前に今一度妖精、鬼、アーサー王、騎士

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残酷でしあわせなおとぎ話『パンズ・ラビリンス』【考察】

残酷でしあわせなおとぎ話『パンズ・ラビリンス』【考察】

「─だから少女は幻想の国で永遠の幸せを探した─第79回アカデミー賞3部門を受賞作」

…というキャッチコピーにつられて『パンズ・ラビリンス』を初めてみたのは中学生のとき。ひとりでBSの深夜放送をザッピングしていたとき偶然見つけたのだ。おとぎ話の世界かなあなんてわくわくしながら観ることを決め、そして、『パンズ・ラビリンス』はわたしがそれまで観た映画史上”最高の”トラウマになったのだった。

でも大学

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【レビュー】『えんとつ町のプペル』は本当に酷い絵本なのか

【レビュー】『えんとつ町のプペル』は本当に酷い絵本なのか

さっき『えんとつ町のプペル』読みおえました。先月ある友人に頂きまして…それからまた別の友人が子どもに買ってあげようかな…と迷ってて。読んだ感想を口で全て説明するのも大変なのでせっかくやし深夜のテンション(1:50なう)でnoteを使ってみました。

「プペルってみんなが言うほど酷いの?買おうかどうしよう」と迷ってる友人向け(くれた友人向けでは…ない)に文系の大学生が書いてみた解説なので、ネタバレも

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A・Aミルンの秋に寄せた美しいエッセイ

A・Aミルンの秋に寄せた美しいエッセイ

寒くなると、A・A・ミルンの詩集を手元に置きたくなる。

今回翻訳したくまのプーさんの著者、ミルンによるユーモアの効いた美しいエッセイはNot That It Matters (1920)に収録されています。

あのニール・ゲイマンも絶賛した、ミルンの洒落た文章を楽しみたい方はぜひ原書を手に取ってみてほしいです。

このエッセイはいっそ“ A Word For Celery”にすればよかったんじゃ

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架空のアパートの住人になってみませんか

架空のアパートの住人になってみませんか

ステイホーム期間中暇を極めすぎたniteがTwitterでやっていた「#いいねした人を同じアパートの住人として紹介する」の一部をせっかくなのでまとめました。

https://twitter.com/fire_n_hemlock/status/1252621639444881408?s=19

企画概要この企画はいいねしてくれたフォロワーさんを架空のアパートに住まわせていくというものでした。住人の

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