ショートショート02 「降り、振られ」

七月に入ったというのに雨ばかり降っている。今日も朝から振り続けるしつこい雨。そして鬱陶しいほどの蒸し暑さ。

弟が楽しみにしていたプール開きはまたまた延期だろうな、なんてぼんやり考える平日の昼下がり。私は家のリビングにあるソファーに制服のまま腰を据えていた。

今元気のが証拠なのだが、今日は高校を仮病で早退してきた。仮病なんて人生で初めてやった。ほんのり罪悪感が漂うが、あのまま学校にいたら心が潰れ

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やった~~!
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【ペンション『オクトゴーヌ』再生計画】

これにて第二幕「清算」は終了です。次話投稿分からサブタイトルが「新しい風」に変わります。基本的に展開はゆっくりめですが、お気に召しましたら引き続きお立ち寄り頂けると嬉しいです_(_^_)_

キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!

清算 その十二

小野坂は気恥ずかしそうに言ってからスコーンに手を伸ばした。それにジャムを付けて少しずつかじり、紅茶をすすると何かを探しているのか窓から外を眺めている。
「ここには五年前まで犬がいたんです。チューリップルームの真下に、犬小屋がありませんでしたか?」
「ございました。今は『DAIGO』にございます、あそこでも既に二代目ですよ」
「じゃあラパンの後はヌーが?」
 小野坂は川瀬も知っている大悟の愛犬の名前

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清算 その十一

「私は先代オーナー時代の最後の客として、一昨年の秋にこの街にやって来ました。五十年続いたここを潰したくない衛さんのご意志と、どこにも行く当ての無かった私の思惑が合致して、ご存命の間に色々と勉強をさせて頂きました」
 小野坂は手紙の束から堀江に視線を移す。
「先月亡くなる直前に、五年前に忽然と姿を消した若い従業員が、恐らく今でもご自身を責めて生きていると思うから、手元に届くとは限らなくてもご実家に再

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清算 その十

川瀬の言葉で、堀江はようやく事の状況を理解する。元従業員とは言え、客である小野坂を巻き込んでくるとは……ともはやその熱心さに感心した。根田は腹を決め、パン屋替えませんか? とダイレクトに核心を突く。
「前にも言ったじゃない、こっちからお願いしている以上、まずは信頼されないと」
 堀江はあくまで慎重論を崩さない。川瀬も同意見ではあるのだが、『パーネ』の味のレベルの酷さに正直懸念の気持ちもあった。

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清算 その九

「何度お越し頂いても答えは同じです。さすがにこの時間に来られるのは迷惑です」
「結局返事は一緒か、でも俺は諦めませんよ」
 嶺山は怯むことなく失笑する。すると小野坂が嶺山に近寄り、タスキ掛け鞄に入れていた店のチラシを一枚抜き取った。『オクトゴーヌ』宿泊客の思わぬ動きにも動じず、早速自身の店をアピールし始める。
「おはようございます、『アウローラ』ってパン屋の者です。宜しかったら後で寄ってってくださ

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あの大きな雲が今日の目印

彼は車を走らせるのが好きだ

映画も遊園地もカフェも水族館も

数える程度しか覚えがないけれど

彼とドライブをした回数だけは

どの恋人たちにも負けないだろう

カーナビも音楽も会話まで消して

少し開けた窓から聞こえる風の音と

目の前に浮かぶ大きな雲を目印に

ただただ真っ直ぐに車を走らせる

これは行き先のない秘密の旅

またのお越しをお待ちしております^^
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