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閑話休題

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いわばエッセー。雑談。ブレイクタイムの茶飲み話です。ということで始まったのですが、他のマガジンで扱えない話題・内容をこのマガジンで扱うようになりました。またそういう経緯で、最近は…
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#歴史

<閑話休題>桜吹雪の入れ墨の知名度は?

<閑話休題>桜吹雪の入れ墨の知名度は?

 遠山の金さん(江戸町奉行遠山金四郎景元)の桜吹雪の入れ墨を、江戸の犯罪者が記憶して金さんから逃げる可能性を考えてみた。金さんはお白洲で桜吹雪の入れ墨を見せることで犯罪者に犯行を認めさせている。その犯罪者たちの大半は死刑になっているから、金さんの入れ墨を知って、犯罪者仲間に知らせる可能性は少ない。しかし、そのうちの何人かは島流しから生還する者もいた上に、獄中及び処刑までの市中引き回しに際して、金さ

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<閑話休題>十字軍と聖地とは?

<閑話休題>十字軍と聖地とは?

 日本の義務教育課程の西洋史では、十字軍はキリスト教ヨーロッパ(フランク=フランスを中心とした連合軍)が、キリスト教の聖地であるエルサレムを奪還すべく行った軍事遠征とされている。しかし、これは侵略されたイスラム教側からすれば、「奪還」という言葉は適当ではなく、単純に文明及び文化的に遅れていたヨーロッパ諸国が、文明及び文化に進んでいたイスラム諸国を乱暴に侵略したということになる。

 こうした立場が

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<閑話休題>1987年3月『現代思想 総特集 折口信夫』から

<閑話休題>1987年3月『現代思想 総特集 折口信夫』から

 折口信夫という人は、日本の民俗学の草分けである柳田国男の弟子であるが、その後柳田とは異なる方向に民俗学の研究を進めた偉大な学者である。また、釈迢空という筆名で和歌や詩を作った歌人でもあった。折口はまた、民俗学のみならず国文学や神道についても独創的な研究を続け、「まれびと」、「貴種流離譚」などの独自の用語を創造したことでも著名である。戦後は、國學院大学教授として後進の育成に寄与するとともに、日本の

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<閑話休題>大衆と民衆、衆寓政治とポピュリズム

<閑話休題>大衆と民衆、衆寓政治とポピュリズム

 スペインの生んだ20世紀の著名な思想家にホセ・オルテガ・イ・ガセット(1883~1955年)がいる。彼は、1930年の『大衆の叛逆』において、20世紀の衆寓政治とポピュリズムの世界を予言し、現実は予言通りとなった。彼の思想の概要を、雑誌『現代思想 臨時増刊 現代思想の109人』にある樺山紘一の解説を引用して紹介する。

「現代世界を大衆の時代であると断言した。その世界をすぐれた少数者と大衆とのあ

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<閑話休題>『千の顔を持つ英雄』について気になること

<閑話休題>『千の顔を持つ英雄』について気になること

 TVの「100分で名著」は、いろいろと教わることが多くて楽しいのだが、時々「それはないだろう?」ということがある。今月のジョーゼフ・キャンベル『千の顔を持つ英雄』は、あまりにもそれが多すぎて見ている途中から唖然としてしまった。それで、そのおかしな点を列記する。

(1)神話について語っているのに対して、そこには英雄しか描かれていないように述べている。神話は第一に神の物語である。そして英雄とは、神

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<閑話休題>慰霊の形

<閑話休題>慰霊の形

 あるラジオ番組でこんな投書があったそうだ。それは、80歳過ぎの男性が、知人が無縁仏として埋葬されている寺へ慰霊に行った。住職に知人の名前を見たいから、名簿を見せて欲しいと頼んだところ、個人情報だから見せられないと拒絶され、大変に悲しかったというものだ。

 当然、ラジオ番組のパーソナリティーは、個人情報保護を理由に教条的に知人の名前を見せず、80歳過ぎの男性の慰霊したい気持ちを阻害したというニュ

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<閑話休題>ホームズとポワロの生きた時代

<閑話休題>ホームズとポワロの生きた時代

 シャーロック・ホームズは、この名前自体が既に固有名詞化しているくらいに、世界中に膾炙した私立探偵の活躍を描く短編小説の主人公だが、彼の活躍した19世紀末ロンドンという、虚栄と繁栄が過度に達した世界を舞台にしているところに一番の醍醐味がある。

 また、アガサ・クリスティーが新たに創造した私立探偵エルキュール・ポワロは、ホームズに匹敵する探偵小説の主人公として、その名を世界中に知られている。ポワロ

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<書評>『ヨブへの答え』

<書評>『ヨブへの答え』

『ヨブへの答えAntworr Auf Hiob』カール・グスタフ・ユング著 林道義訳 Carl Gustav Jung ラシェールフェルラーグ社、チューリッヒ Rascher Verlag, Zurich 1952年、日本語版は、みすず書房 1988年。

 旧約聖書の中で、最も報われない不幸の連続に遭う可哀そうな代表が、「ヨブ記」のヨブだ。なにしろ、ヨブは熱心に神を信仰するのだが、信仰が進むにつ

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<閑話休題・哲学>リチャード・ローティ、そして近代科学とジョルダーノ・ブルーノ

<閑話休題・哲学>リチャード・ローティ、そして近代科学とジョルダーノ・ブルーノ

標題の画像は、ロンドンナショナルギャラリーに展示のデジデリウス・エラスムス(15世紀の著名な人文学者=ユマニスト)のハンス・ホルバイン作の肖像。

1.リチャード・ローティ NHKの「100分で名著」でリチャード・ローティというのをやっていて、「ドナルド・トランプ大統領の出現を予言した哲学者」、「伝統的な西洋哲学を葬り去った」、「理性をもつ存在こそ人間という哲学の基礎付け主義が、現代の虐殺やヘイト

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<ラグビー・閑話休題>WRの代表ジャージ色彩問題

<ラグビー・閑話休題>WRの代表ジャージ色彩問題

 WR(世界ラグビー協会)は、色盲の人のために、対戦する両方のチームが濃い色のジャージの場合、どちらかのチームは淡い色のジャージにしなければならないというガイドラインを策定し、これを2025年から適用する予定だが、今年のRWCから前倒して採用するというニュースが流れている。

 これに対して大きく反応したのが南アフリカで、RWCに向けて発表したセカンドジャージは、元キャプテンのジョン・スミットが「

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<書評>『メソポタミアの神話』、『シュメール神話集成』

<書評>『メソポタミアの神話』、『シュメール神話集成』

『メソポタミアの神話』 矢島文夫著 ちくま学芸文庫 2020年
『シュメール神話集成』 杉勇及び尾崎亨訳 ちくま学芸文庫 2015年

 概説書である『メソポタミアの神話』の方が先に発行されたのかと思ったが、専門書に近い『シュメール神話集成』の方が先に発行されている。つまり、そもそもメソポタミアやシュメールの神話を読もう、または知りたいという人は、そうした分野に特別関心を持つ人に限定される一方、一

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<閑話休題>2022年のまとめと2023年の抱負

<閑話休題>2022年のまとめと2023年の抱負

 明けましておめでとうございます。旧年中のご愛顧を感謝申し上げますとともに、引き続き本年もどうぞ宜しくお願いいたします。

 2022年4月以降は、定年退職して時間ができたこともあり、読書及び創作活動に勤しむことができた。そこで、2022年のまとめと2023年の抱負を書きたい。

1.読書

(1)2022年のまとめ

 なんといっても、ダンテ『神曲』を邦訳ながら読了できたこと。翻訳しているせいも

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<書評>「西洋語源物語」,「東洋語源物語」

<書評>「西洋語源物語」,「東洋語源物語」



「西洋語源物語」 渡辺紳一郎著 旺文社文庫 1974年
「東洋語源物語」 渡辺紳一郎著 旺文社文庫 1973年

1.西洋語源物語 昭和49(1974)年に,私は15歳だった。高校1年生になった私は,生まれてすぐの消化不良と小学3年の冬に罹った肺炎もあって,身体は小さく,運動は苦手だった。だから,運動会は,大嫌いな学校行事の1つだった。また,いつも「PTAの醜悪な連中を喜ばせるために,なんで我

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