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記事一覧
【ショートショート】正義の人
「お腹が痛いよう、死んじゃうよう」
UFO美が買い物から帰ってくると、義母が畳の上でお腹を抑え、痛い痛いとのたうち回っている。今までこんなに痛みを訴えたことがなかったので、UFO美は大変なことが起きているのかもしれないと思い、夫も不在で相談できないので、119番にかけた。
「お義母さん、すぐに救急車が来ますからね」
子どもが駄々をこねるように転がり回る義母を見ながら、UFO美の脳裏には、
【コテン現代】②土佐日記「楫取の歌」
土佐物語を、現代を舞台に小説にしてみました。エッセイ付きです。
「乗りますかい?」
地方での駐在を終え、一家そろって東京へ帰ろうと、タクシーで空港に着いた途端、濃霧が視界から一切を奪い、歩いても歩いても何も見つからず、携帯電話の電波も届かぬ状況で、ふいに目の前に現れた海に浮かぶ手漕ぎの帆船の楫取の男の申し出を、貫行一行が断る理由はなかった。
「ああ……みんないいか?」
歩きくたびれて判
【ショートショート】先生、久しぶり!
ハヤオ「この3人かな?」
ヒメコ「そうみたい」
サトシ「よろしくお願いします」
ハヤオ「ほら、あの門のそばにピカイッチー先生がいるぞ。卒業式が終わって生徒を送り出すところみたいだ」
ヒメコ「……行ってみる?」
サトシ「ちょっと待ってください、遠隔で先生に暗示をかけます」
ハヤオ「そっか! 忘れてた」
サトシ「…………よし、これで先生が僕たちを見ても変に思わないでしょう」
ヒメコ「1
【短編小説】ズワイガニ
──うわ、ママのヤツ、来やがった。
年が明けて最初の授業参観日、高校1年の太郎は、母に絶対に来ないようにと何度も念押ししたにもかかわらず、ばっちりメイクをして着飾ってきたド派手な母親が教室の後ろのドアから入ってきたのを見て、ため息をついた。ドギツい香水が一番前の席の太郎の元へも届いたので、見る前に気づいたというのが正しい。この母を持ったお陰で、今までどんなに恥ずかしい思いをしてきたことか……