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【短編小説】週3日投稿

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SF・ミステリー・コメディ・ホラー・恋愛・ファンタジー様々なジャンルの短編小説を週に3日(火〜木)執筆投稿しています。 全て5分以内で読めるので、気になるものあればご気軽に読んで…
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#寝る前に読むショートストーリー

【短編】『海の底』

【短編】『海の底』

海の底

 目の前には闇が壁となって立ちはだかる。どこからか聞こえてくる波打つ海の音が、鼓膜に心地良さを与える。柔らかいひだ状の膜が骨も爪も歯もない細い体を包み込む。膜は激しく揺れ動き、洗濯機のように縦に横に転がる。外で何が起こっているのか全く見当がつかない。わかるのはこの暗闇がいつまでも自分を自由から遠ざけるということだけだ。

 ついこの前までいた戦場でのことを思い出した。

 空中にはいくつ

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【短編】『不便な時代』

【短編】『不便な時代』

不便な時代

 巷で人気を博しているスマートフォンがあるという。人気とは言っても姿形は至って普通のスマートフォンと同じだ。側面はペンのように細く、表面はタロットカードのように縦に長い。特別な機能があるのかと思いきや平凡だ。むしろスマートフォンにしてはスマートな方ではない。僕が実際に購入し、使ってみてそう感じたのだ。インターフェースの反応も遅く、つい長く使っていると熱くて触れなくなってしまう。そんな

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【短編】『僕が入る墓』(遡及編 五)

【短編】『僕が入る墓』(遡及編 五)

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僕が入る墓(遡及編 五)

「ああ、やけどどうすりゃあいい。米がねえんじゃ生きてくこともできねえ」

「諦めんとき――」

 太助は地主に顔が効くためなんとか小作料をまけてもらっていたが、又三郎はそうはいかないのだ。太助はどうすれば良いかわからなかった。いくら又三郎を宥めたところで、彼の貧しい生活は変わらないのだ。

「なあ、地主の久保田はんにおねげえしてみるってのはどうや? もう

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【短編】『僕が入る墓』(遡及編 四)

【短編】『僕が入る墓』(遡及編 四)

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僕が入る墓(遡及編 四)

 太助は収穫した米を俵に詰めて縄で縛っていた。小作料の支払いの期日はとうに過ぎていた。気温の急激な変化で収穫時期が遅れたのだ。この頃ほとんど雨が降らず稲が思いの外育たなかった。しかし又三郎という新たな助っ人のおかげで、米の収穫を無事終えることはできた。

 又三郎もまた自分の畠で獲れた米を俵に詰めていた。又三郎には養う家族がいないため、米の貯蓄は少なくて

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【短編】『僕が入る墓』(後終編)

【短編】『僕が入る墓』(後終編)

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僕が入る墓(後終編)

 門の前では警察官二人がたわいもない話をしながら呆然と満月を眺めていた。

「なんで俺たちがこんなことしなきゃならねえんだ」

「署長命令だから仕方ないだろ? それに夜勤代が出るんだから我慢しろよな」

「だってよ。俺これで三日も家に帰ってないんだぜ」

「明日は帰れるって」

「だといいけど。そもそも署長は俺たちのことこき使いすぎなんだよ」

「まあ、俺も

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【短編】『僕が入る墓』(後結編)

【短編】『僕が入る墓』(後結編)

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僕が入る墓(後結編)

 しかし後ろには誰もいなかった。

 再び妻の方に視線を戻すと、真正面から突然打撃を喰らった。身体はまるで中国のアクション映画みたく綺麗に宙を舞って台所横の扉のそばに落下した。敵は大した腕力だった。俺は背中を痛めつつもゆっくりと立ち上がって敵の姿を確認しようと目を擦った。しかし、その素早さから敵はすでに配地を変え、自分の視界から消えていた。あたりを見回すも、

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【短編】『僕が入る墓』(中結編)

【短編】『僕が入る墓』(中結編)

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僕が入る墓(中結編)

 部屋に戻ると、網戸のそばに腰を屈めた義父の姿があった。僕には気づいていないようで、必死にセンサーの機械を壁板のどこかに隠していた。すぐ横に生えた草の陰には一匹の足の折れたカマキリが妙な動きをしていた。僕はカマキリがあまり好きではなかった。よく見ると、バッタを捕らえて食べているようだった。バッタはすでに体の半分を失っており、生々しさが余計に気分を悪くした。

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【短編】『僕が入る墓』(序結編)

【短編】『僕が入る墓』(序結編)

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僕が入る墓(序結編)

 救急車に乗り込む頃には、貧血で明美はすでに意識を失っていた。僕は明美の名前を何度も呼んだ。義父も義母も僕の後から娘の名前を叫んだ。すでに止血は済んでいたためこれ以上血が流れることはなかったが、血管が破損していたため緊急手術が必要になった。救急車は夜中の田んぼ道を全速力で走行した。

 義父と義母は手術室の外のベンチに座りながら、膝に腕を乗せで必死に祈ってい

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【短編】『僕が入る墓』(後後編)

【短編】『僕が入る墓』(後後編)

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僕が入る墓(後後編)

 屋敷に戻ると、義母が冷たいお茶を四人分机に出してくれた。今までより一つ少ないのがもの寂しかった。僕と明美が屋敷に来てからずっと義父と義母は忙しなくしており、お祖父様が亡くなったことを悲しんでいる暇もないといった様子だった。僕たちが駅に着いた時に義父が車の中で寝ていたのも自ずと理解できた。ようやくお祖父様の葬式と火葬を終えて緊張が解けたようで、二人は気を楽に

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【短編】『僕が入る墓』(中後編)

【短編】『僕が入る墓』(中後編)

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僕が入る墓(中後編)

 山陽新幹線に乗るのは今月で二回目だった。明美の横を過ぎ去る景色は、ついこの間乗った時よりもどこか色味のなさを感じた。それは日が沈みかけているからなのか、明美に対する同情からなのかわからなかった。

「そういえば、葬式休暇をもらおうとしたらさ、数日なら連続で有給取ってもいいって言うから三日間くらい休みとっちゃった」

明美は外の景色を眺めていた。すると僕の方

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【短編】『僕が入る墓』(序後編)

【短編】『僕が入る墓』(序後編)

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僕が入る墓(序後編)

一同は、目の前に映る異常な光景に言葉を失っていた。義母はその場でしゃがみ込んで何かを叫び続けていた。義父はお祖父様が尻餅をついて必死に起きあがろうとしているのを手伝った。僕は先ほどバケツに水を汲んだことを思い出し、あたりを探した。バケツは炎の届かぬ場所にそっと置かれていた。僕はすぐに両手でバケツを抱えて墓に向かって水を大きく振りまいた。一瞬、火柱がなくなった

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【短編】『僕が入る墓』(後中編)

【短編】『僕が入る墓』(後中編)

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僕が入る墓(後中編)

近くを飛んでいた小蝿や蛾が一斉に明かりの灯った電球の周りに集まった。

「大丈夫?」

「――」

「スイッチここね。わかりづらいよね」

「――」

「電気つけるとほら、虫がすごいのよ」

彼女の言葉は僕の耳には入ってこなかった。ただ響くのは激しく脈打つ心臓の鼓動の音だけだった。僕は気を落ち着かせてからやっとのこと口を開いた。

「一瞬――」

「え?」

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【短編】『僕が入る墓』(中中編)

【短編】『僕が入る墓』(中中編)

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僕が入る墓(中中編)

 土砂降りの中、義母はお手のものといった様子で次から次へと外に面した戸を閉めていった。義父やお祖父様は依然として居間に座ったままで食事を続けていた。すき焼きの具が鍋の中でぐつぐつと小刻みに揺れるのを眺めながら、明美は母親を思ってかテレビに釘付けの義父の後ろを通り過ぎて何も言わず居間を出ていった。僕も明美について行こうと一瞬床に片膝をついたが、義父とお祖父様が

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【短編】『僕が入る墓』(序中編)

【短編】『僕が入る墓』(序中編)

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僕が入る墓(序中編)

明美は戸を全開にして、僕に向かって手招きした。

「元気にやってるか?」

「はい。元気です」

明美の後ろから顔を出すと、お祖父様がベッドの上に腰掛けて体に湿布を貼っていた。顔の所々に薄茶色の染みが目立ち、白髪をすべて後ろに綺麗に流して、いかにも厳格な人物といった顔立ちをしていた。しかし、体格の方はと言うと、整った顔立ちの割に骨が見えるほど痩せ細り、肩

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