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エッセイ

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自身の記事の中から、エッセイをまとめています。
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#心の病

映画『正欲』

映画『正欲』

12月の頭に映画『正欲』を観てきました。
その時のことと、考えたことを以下に。

登場人物、延いては世のすべての人を掬い上げよう、その深い深い根を掘り下げ、掘り下げたその先はどこかに繋がる(一致)とか、出口(救い)があるだろうという思いで観ていた。それはさながら地面の至る所を掘り下げる様に。だけどどこにも繋がらなければ辿り着く所も無く、ただただ足下が不安定になっていって、体がぐらつき、私は酔って物

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エッセイ 夢

エッセイ 夢

夢を見た。
私が現在(リアル)の苦しみを「演じて」いる夢。演じているのだから、その苦しみから逃れられるのに、重いオモシを自ら背負って歩く様に、苦しみに喘ぎながらひたすら歩いている。
なぜそこから解放されないのか。
それを夢の中でも自問するのだけれど、答えも出ているのだ。「苦しみを背負っている方が楽だから」。たしかにそれは重くて重くて辛いのだけれど、それを背負っている自分でいる方が、心が楽なのだ。あ

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落ち葉

落ち葉

昨日から、やる気が無い。秋に入り朝が寒くなったせいなのか、自分でもよく分からないけれど、昨日も今日も、何か生きることに対して背を向ける様に、布団にくるまって午前を潰した。
こんなこと、久しぶりだ。

それでも今日は、14時から予定があったため、出かける準備ができるリミットギリギリに、布団から身を剥がし、なんとか外へ出かけた。

出かけてみれば、気持ちの良い秋の好日であった。人と会って、言葉を食べる

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絵画

絵画

突然ふと、太陽が隠れたら
ふと、この道を行く意味を失って
そうして、ぴたっと足を止めたくなる
でもこの世界で足を止めることは
心臓を止めることに似ているから
力が抜けそうな体を
重怠い足を
とりあえず交互に出している

そんな瞬間がふとやってくる
脳が何かを拒んでいる
心が脱力している

この道を行くために
路傍の店で欲を満たす
けれど十分に満たせる程の
対価を持ち合わせていない
明日が遠くなる

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カフカ

カフカ

カフカの『審判』
ちびちびと読み始め。

『変身』は駆け抜ける様に読んだ。
読後、ただただ「なんという…。」と呟いて、
衝撃が残った。

だけど、『変身』にしてもこの『審判』を読んでいても、冒頭からずっと奇妙さや違和感、まさしく不条理の渦に包まれているのに、妙に読んでいて居心地が良い。

「水を得た魚」と言っては用法が違うけれど、
自分が昔から息をし続けていた、不条理という海の中に帰してもらった感

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ある雨の日の散文

ある雨の日の散文

雨だ。出かけるのが億劫で、ベッドに横たわっている。雨の中を歩く楽しみを知りたい。
同じ様に、人生を歩む楽しみも知りたい。
人生なんて、みんな必死のパッチなのだろうか。気を抜いたら、良くも悪くも自分をこの世界の中心みたいに考えてしまう私は、私ばかりが必死のパッチで生きているとつい思ってしまう。悪い癖である。

と言っても、外側が必死なのではなく、内側が必死なのだ。思春期の頃から今に至るまで、心はいつ

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デトックス

デトックス

音楽を聴いてみても、本を読んでみても、テレビを観てみても、なんにもしっくりこない時はないだろうか。私はたまにそんな時がやってくる。
時間を持て余しているから、何かしようと思うのだけれど、手を動かすこともなくて、じゃあ音楽を聴いてリラックス?などと思ってみても全然しっくりこない。
結果、部屋の真ん中でぽつんと、時間の過ぎる音を聞く。そんな時の私はまるで、この世界の何にもフィットしていない感覚になる。

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夏目漱石『こゝろ』

夏目漱石『こゝろ』

夏目漱石の『こゝろ』。
読み進めるのが遅い私だけれど、割と一気に読み終わった。それぐらい面白かったのだと思う。
有名な作品。だからこそ、きっと文学的にも優れているのだろうし、私なんかが改めて「面白かった」だなんて言う必要もないと思うのだけれど。

ただ、読後感というのか、読み終わった後の私は大変だった。物語の世界から全然抜けられなかった。なんというか、人間のただ綺麗なだけではない感情や精神の根本だ

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春眠としくじり

春眠としくじり

しまった。機会を逃してしまった。
私は飛び起きた。

昨晩は珍しく、
夜中一度も目覚めずに
今朝まで眠り続けることができた。

またずいぶん寝汗をかいていたけれど、
眠れたことの方が嬉しかった。

起きて朝食を済ませてからも、
まだ眠い。
結局うたた寝をし、そのまま正午まで。

しまった。
目を開けたか開けていないか、
意識があったかそうでないか、
という夢と現実の隙間で気がついた。

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投影

投影

私は惚れっぽい。
とは言え、四六時中恋をしているという訳ではないし、誰でも良いという訳でもない。
ただ、「この人が好きだ」と思うのにあまり時間を要しないみたいだ。
「人に好感を持ちやすい」というのが正確な表現だろうか。良く言えば、「人の良いところを見つけるのが得意」なのかも知れない。もちろん、好感を持つのと同じ速度で、嫌悪する場合もあるけれど。

そんな私は先日また心を奪われた。待ち合わせの場所

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冬の空気

冬の空気

「一難去ってまた一難」
「一喜一憂」

そんな言葉があるくらいなのだから、
やっと苦労を乗り越えたのに、また…
なんてことはたぶん、この世界で私だけではないのだろう。
落ち込んだり喜んだり…って何回繰り返してんだ?
なんてことも、私だけじゃないのだろう。
この世界の不条理は、おそらく私にだけ起こっているのでもないのだろう。

そう思うと、幾分かほっとする。

だけれど、「辛さ」「苦しさ」「し

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喜劇

喜劇

私がここまで生きてこられたのは、
後ろ向きのなかで
絶望の合間合間で
希望を持ち続けてきたから。

前を向いて、とよく言われるけれど
どんなに後ろ向きでも、今生きていることが
私にとっての最大の「前向き」なのだ。

だから、
頑張ってきた って
思ってもいいですか

頑張ってきたのに って
愚痴ってもいいですか


もう期待したくない
希望も持ちたくない
それに躓いて転ぶのなら

ただ

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どうでもいい話

どうでもいい話

「500mlの沸騰したお湯に茶葉を入れてしばらく煮出す」

とりあえずお湯を沸かして
茶葉を入れてみるも、そこで悩む。

しばらく、とは?

ここに躓く人とそうでない人は
日本人において何対何くらいの割合なのだろう。

私は躓く。
いや、「しばらく」てどのくらいやねん。
と一旦ツッコむ。

でも超えられないハードルではない。
なんとか自分で折り合いをつけて、
納得のいく答えを求めて実行す

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夢

リッチな潜水船に乗っている夢を見た。その目的こそ忘れたが、そこに至るまでのストーリーがあって、壮大なアドベンチャーだった。

なのにいざ出航すると、他にも知らない人が乗って来て、人に気を遣い、自分のハンデを気にする小さな部屋の話になった。
私は落ち着きなく、親指の逆剥けをいじっていた。

そこで目が覚め、
ぼやっとしたまま親指を触ると
逆剥けなんて無かった。

只の昼寝だった。
すべては頭の

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