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閑話休題

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いわばエッセー。雑談。ブレイクタイムの茶飲み話です。ということで始まったのですが、他のマガジンで扱えない話題・内容をこのマガジンで扱うようになりました。またそういう経緯で、最近は…
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#心理学

<書評>『夜と霧』

<書評>『夜と霧』

『夜と霧 ドイツ強制収容所の体験記録 Ein Psycholog Erlebt das Konzentraionslager, Osterreichische Dokuments zur Zeitgeschicyhe 1』ヴィクター・フランクル Vitor E. Frankl著 霜山徳爾訳 みすず書房 1961年 原著は1947年ウィーン

 原題を直訳すると「ある心理学者が強制収容所を体験する、

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<閑話休題>悪魔と自然の神について

<閑話休題>悪魔と自然の神について

 フランソワ・ラブレーの『ガルガンチュアとパンタグリュエル物語』には、中世ヨーロッパで広く知られた悪魔の王の名がたびたび出てくる。それは、ベルゼビュートという名で、語源的には「蠅の王」という意味だそうだ。蠅は、昔から人類に嫌われてきた昆虫の代表であり、また腐肉などに多く集まることから悪魔のイメージに合っていたのだろう。また、悪魔的なもの(存在)の名前を言う場合、このベルゼビュートに続いてプロセルピ

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<閑話休題>『千の顔を持つ英雄』について気になること

<閑話休題>『千の顔を持つ英雄』について気になること

 TVの「100分で名著」は、いろいろと教わることが多くて楽しいのだが、時々「それはないだろう?」ということがある。今月のジョーゼフ・キャンベル『千の顔を持つ英雄』は、あまりにもそれが多すぎて見ている途中から唖然としてしまった。それで、そのおかしな点を列記する。

(1)神話について語っているのに対して、そこには英雄しか描かれていないように述べている。神話は第一に神の物語である。そして英雄とは、神

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<書評>『ユング心理学』

<書評>『ユング心理学』

『ユング心理学 Die psychologie von C.G.Jung by Joande Jacobi』 ヨランデ・ヤコービ Jolande Jacobi著 高橋義孝監修 池田紘一 石田行仁 中谷朝之 百渓三郎 共訳 日本教文社 1973年 原著は1959年

 著者のヨランデ・ヤコービという女性は、ユング研究所でユングがもっとも信頼していた弟子ということで知られているユング派の心理学者である

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<閑話休題>マフラーと手袋、そして肩書と仮面(ペルソナ)

<閑話休題>マフラーと手袋、そして肩書と仮面(ペルソナ)

 子供時代からずっと、冬になってもマフラーや手袋を使わなかった。さすがに最近は加齢もあってマフラーと手袋を使うようになっているが、子供時代は、TVのアクションドラマや漫画のヒーローが、ことごとくマフラーや手袋をファッションにして使っていたこともあり、それが防寒のためのものではなく、単なるファッション=お洒落=見え貼り=カッコつけのものだとずっと思っていた。

 また、子供時代は貧乏だったので、そも

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<覚書>『現代思想 総特集 ウィトゲンシュタイン』

<覚書>『現代思想 総特集 ウィトゲンシュタイン』

『現代思想 総特集 ウィトゲンシュタイン』1985年12月臨時増刊 青土社

 いつものような書評ではなく、難解な哲学論文が多数入っていることもあり、その中から私の琴線に触れた部分を抜き書きしたい(特に私が重視した部分を太字にした)。特に、文学や芸術との関連は強く興味を惹かれたが、言語に関する論考も同じくらいに興味を惹かれた。

 なお、最後の日本の哲学者たち3人による鼎談において、ウィトゲンシュ

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<書評>『ヨブへの答え』

<書評>『ヨブへの答え』

『ヨブへの答えAntworr Auf Hiob』カール・グスタフ・ユング著 林道義訳 Carl Gustav Jung ラシェールフェルラーグ社、チューリッヒ Rascher Verlag, Zurich 1952年、日本語版は、みすず書房 1988年。

 旧約聖書の中で、最も報われない不幸の連続に遭う可哀そうな代表が、「ヨブ記」のヨブだ。なにしろ、ヨブは熱心に神を信仰するのだが、信仰が進むにつ

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<閑話休題・哲学>リチャード・ローティ、そして近代科学とジョルダーノ・ブルーノ

<閑話休題・哲学>リチャード・ローティ、そして近代科学とジョルダーノ・ブルーノ

標題の画像は、ロンドンナショナルギャラリーに展示のデジデリウス・エラスムス(15世紀の著名な人文学者=ユマニスト)のハンス・ホルバイン作の肖像。

1.リチャード・ローティ NHKの「100分で名著」でリチャード・ローティというのをやっていて、「ドナルド・トランプ大統領の出現を予言した哲学者」、「伝統的な西洋哲学を葬り去った」、「理性をもつ存在こそ人間という哲学の基礎付け主義が、現代の虐殺やヘイト

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<書評>『チャクラ・異次元への接点』

<書評>『チャクラ・異次元への接点』

『チャクラ・異次元への接点』 本山博著 1978年発行 宗教心理学研究所出版部

 ユング心理学とかオカルト文学などをやっていくと、自ずとヒンズー教やヨガ、そして身体の中心を構成するチャクラの概念に行くつく。私は学生時代、その直前まで行ったが、実際に修行することは選択しなかった。そんな経済的な余裕はなかったからだが、そのうちにオウム真理教事件が発生して、この関連情報は社会的なタブーとなり、またこの

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<閑話休題>「オカルティズム」(「ユリイカ」別冊1974年)から

<閑話休題>「オカルティズム」(「ユリイカ」別冊1974年)から

 <書評>というものではないが、雑誌「ユリイカ」別冊のオカルティズム特集号(1974年)を読んでいて、面白かった、あるいは参考になったことが三ヶ所(以下に雑誌のページで表示)あったので、<閑話休題>として紹介したい(また、各項目の後段に私の感想を付けた)。

 なおこの特集は、文芸雑誌であるため、疑似科学のようにオカルティズムの具体的な方法や実例を面白半分に紹介するのではなく、オカルティズムと深い

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<書評>『言語と自然』

<書評>『言語と自然』

 『言語と自然』 モーリス・メルロポンティ著(1952-60年の講義録) 滝浦静雄・木田元訳 みすず書房 1979年(原書は1968年)

 哲学書の翻訳者として著名な木田元によれば、ドイツの哲学者エルネスト・カッシーラーが『シンボル形式の哲学』で結論に至らなかった後を継いで、結論を出すべく試行錯誤をしたのが、フランスの哲学者モーリス・メルロポンティであり、その記録が本書にあるという。先日苦労の末

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<閑話休題>結局、言っていることは同じだと思う。

<閑話休題>結局、言っていることは同じだと思う。

 定年後自分の時間がたっぷりとできたので、古今東西の宗教関係の本を少しずつ読んでいるが、毎回思うのは「言っていることは、結局同じなんだよな」ということだった。まあ、こんな言い方でこんなことを書くと、「何も知らない奴が、いい加減なことを書いている、たいした自己中心的で自信過剰な奴だな」と揶揄されるだけかも知れないが、そうした「自己中心的かつ自信過剰な読み方」の(悪しき事例)と思って、寛容の心で接して

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<書評>『神智学 超感覚的世界の認識と人間の本質への導き』

<書評>『神智学 超感覚的世界の認識と人間の本質への導き』

『神智学 超感覚的世界の認識と人間の本質への導き』 ルドルフ・シュタイナー著 高橋巌訳 イザラ書房 1977年

 神智(人智)学で著名なシュタイナーが、神智学を紹介するために最初に出した本。この内容をより詳細に述べたものとして、『神秘学』を後に出版している。巻末にある本人の自歴と解説を読むと、シュタイナーは、19世紀末オーストリアという、当時の知的世界の最先端の地域で、カントからヘーゲル、そして

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