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琴線に触れた言葉

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とっても個人的に読んでグッと来た、時には泣いた、そんな大切にしておきたい投稿を集めました。
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#エッセイ

出生前診断をせずに、三人目を産むことを決意するまで

出生前診断をせずに、三人目を産むことを決意するまで

雪が舞う朝だった。
毛布に包んだ二女を抱えて、私は近くの病院へ駆け込んだ。娘は昨夜から急に高熱を出し、呼吸が荒くてゼーゼーいっている。

当時5歳だった娘は、インフルエンザに罹っていた。彼女はもともと感染症に弱くて重症化しやすい身体のため、奥のベッドですぐに点滴の処置が始まった。

私も昨夜から少し熱っぽかったので、念のために検査をお願いした。思った通り、私もインフルエンザに罹患していた。

私の

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寂しさの見方

寂しさの見方

4月になった。

いつもこの時期になると思い出すことがある。
かれこれ15年前になる。

私の息子は年子で二人。

長男が進学で家を出た翌年には
やはり進学で出て行く二男を見送った。

灯りのともらない家に帰るのは辛いかな?
と、想像したりしていたが、
仕事でクタクタになって帰ることもあり、
毎日、まったく淡々としていた。

彼らの夕食のことを考えなくていい分、
むしろ、どこか気楽さもあった。

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人生のスポットライト

人生のスポットライト

💡これは数年前に、急に書きたくなって書いた記事です。ずっとパソコンの中で眠っていました。
今回リライトしながら、20年前の出来事に想いを馳せることができました。
noteの海にいる皆さまに読んでいただけたら幸いです💐

東京の病院で、看護師として病棟勤務をしている時のおはなし。

スポットライトへの憧れ

看護師は裏方の仕事が多い。
裏方よりも「縁の下の力持ち」と言ったほうが似合うのかもしれ

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サザエさんの息子

サザエさんの息子

「サイフを忘れて愉快な…」ことなんて、しょっちゅうだった。

ボクの母ちゃんは、

ちらし寿司を作って桶ごと冷ましていたら、
玄関でピンポンと鳴って「はーい」と足をつっこんだ。

テレビの視聴者プレゼントに応募しようと、
スーパーのチラシの裏に大事に応募先をメモっても、
必ずどこかへ失くした。

家に来客があったとき、
うっかり犬のご飯を作る鍋でお茶を沸かした。

あわてんぼで、おっちょこちょいだ

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表現してもしなくても。ここにいる理由なんて探さなくても、いいよ。

表現してもしなくても。ここにいる理由なんて探さなくても、いいよ。

昨日、書くために書かないようにしたいと

つぶやいて、noteをお休みした。

この「書くために書かない」問題ってわたしの

なかでいつも渦巻いている。

書きたいのに書けないとかでもなく。

書けそうなのだけど、その書きたいは

ほんとうに今言わなければいけない

ことかなって思うと、後ずさってしまい

たくなるようなそんな気分だ。

無理に書いてしまうと、ぼやけるのだ。

たぶん、書いているも

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【“それくらいで”なんて、そんな言葉で他者の痛みを片づけていいわけがなかった】

【“それくらいで”なんて、そんな言葉で他者の痛みを片づけていいわけがなかった】

自分以外の人間の痛みに、ひどく鈍感だった。

誰かの痛みに躊躇いなく「No」を突きつける。過去、私はそういう人間だった。他者の悲鳴を耳にするたび、「これくらいで」と思っていた。10代の終わり頃、私は自分の痛みを武器に、無意識で人を殴っていた。



虐待サバイバーである私は、過酷な原体験ゆえに心身に数多くの支障を抱えている。主にメンタル面がうまくコントロールできず、時々欠ける記憶にも振り回され、

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サイコロの転がったその先で

サイコロの転がったその先で

先日、メキシコシティ在住の日本舞踊師範でファッションデザイナー・木原直子さんにインタビューをさせて頂いた。

偶然の出会いから生まれたこのインタビューに、わたしはこれから一生忘れない、「生きるヒント」を教えてもらった。



実は、わたしを直子さんに出会わせてくれたのは、直子さんの夫・準さんだった。準さんが院長を務める歯科医院はわが家のすぐそばにあり、1年以上前から歯の治療をしていただいていた。

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白い花

白い花

1998年12月18日。

親友の命日だ。

私が彼女のお墓参りに行くのには、7年の歳月が必要だった。

精神安定剤と睡眠薬を飲み、母にも来てもらってやっとのことで大学を卒業し、就職した。

悲しいことに、彼女の死がショックでそうなったわけではなく、全ての出来事をうまく自分の中で整理しきれなくて心のバランスを崩したのだ。

もう、その頃には、人のために悲しくて泣くということもできなくて、ただひたす

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いい子ぶっているじゃなくて「いい子なの!」

いい子ぶっているじゃなくて「いい子なの!」

『いい子ぶっている』
と言われた事があります。

急に思い出したのは娘と会話をしていたのがきっかけです。

娘が友達に勉強を教えてもらっていた時
「もっと毒出していいよ」
と言われたらしいのです。
「オレら遊びで、死ねって普通に言うよ。おまえ死ね!みたいな。
みんなそうだからさ」
と言われ
「毒って??」
娘は戸惑ったようです。

そもそも外にいる時も
家の中にいると時も
そのままで生きている娘は

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受け取れなかった言葉

受け取れなかった言葉

時の流れで色褪せるものもあれば、色づくものもある。

おうち時間が長くなり、部屋の居心地の良さを求めるようになった。家具の配置を変えたり、好きなデザインの雑貨を置いたりと、しっくりくる空間を目指している。特に最近は目につかない場所の片づけにも勤しんでいる。

クローゼット。…というより押し入れか。上は洋服類、下は行き場のない物が詰め込まれている。手前の物を出すと軽く雪崩が起きた。ああやっぱり。いっ

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きみのしっぽのことを、何で想いだしてるんだろう。

きみのしっぽのことを、何で想いだしてるんだろう。

「わたしずっとほしいんだ、しっぽ」っていう
言葉をみつけた。

しっぽが何故欲しいのかその理由もわからないのに

わたしもずっとほしいよ、しっぽって思った。

家族と犬の物語にでてくる主人公「ぼく」の妹の言葉。

しっぽって、つくろわなくていいからまんまの

気持ちがでてるからいいんだって彼女は思う。

じぶんの顔って人間ってどうしても

<ついつくろってしまう>。

尻尾は誰かに気を遣うこともな

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読ませる行間

読ませる行間

音楽を聴きながら書いたので
流しながら読んで頂けると幸いです。

だいたい俺はアホなので
音楽を聴きながら書いている時
雰囲気がまんま音楽に寄る

人様のプロフィール文章を見ると
たまに見かける5分で読めるとか
3分もあれば読めますとか

文字数でだいたい読める時間は決まるけど
知らない俺とあなたの距離は遠い

自分はこれでも経営者だから
培った感覚は人には時間があり
その時間を奪っていること

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心ぜんぶ映し出すような、そんな自画像を探していた。

昔からみちゃいけなさそうなものに惹かれる

ところがあった。

みたら、傷つくかもしれないよっていうのにだ。

わたしにとってのそれは突然20代の真ん中辺りで

好きになったエゴン・シーレだった。

(ほおずきの実のある自画像 1921年・レオポルド美術館所蔵)

おびただしいぐらいの自画像を残していて。

そのどれもが彼そのものであるようで、ないような

そんな印象がある。

美術と名のつくもの

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