インテグラル経済学・インテグラル理論を政治と経済に活かす (経営学と経済学、MMT理論と主流経済学派の統合)
インテグラル経済学への道
日本の政治経済を見るとやはり、経済学の意見としてMMT理論の影響は大きい。しかし、MMT理論と主流経済学派は「互いを致命的に間違っている」と考え決定的な分断を起こしている。
これを見た時に、思い当たることがあった。
それは、やはり「グリーン型パラダイム以前のパラダイムでは、意見の異なる互いを致命的に間違っていると考え分断を起こす」こと、そしてその解決策が「統合できる点についてやり尽くした後に対立すればいい」ということだ。
また、大きな対立を起こしていることについては、やはり重要であるが故に対立していると捉えることができる。つまり、対立が大きければ大きいほど両者の統合できる部分の重要性は高く、対立をやめて統合できるところを実行してみる価値が高いと言える。
つまり、どうやらMMT理論と主流経済学派で統合できる部分が経済政策の中でも重要だとこの対立は示しているようだ。
そこで、MMT理論と主流経済学派の対立の本質を探る。
MMT理論は「通貨の供給者である政府の財源に制限はない。通貨を発行してから税金を取るのであって、税金は財源ではなく、貨幣を健全に動かすための措置である」と主張している。
MMT理論の本質
このMMT理論の本質を考えると、
①変動相場制かつ自国通貨建ての国家は、財政に制約がない。
②雇用を安定させるための、完全雇用達成を目標とする。完全雇用が達成されない場合は、歳入より支出を増やし、国債を増やす。
③財源に縛られず、政府支出(公共投資、社会保障)を安定させることで民間投資や消費支出を安定し、経済そのものを安定にする。
④金利が高すぎる場合は金融緩和を行い、金利を下げる。
⑤政府が積極的に関与すべき課題に対し、財源を気にせず長期計画を立て、実行できる。
また機動的財政論を主張し、金融政策について否定的な立場を取る(MMT理論と完全に一致はしない)。
金融引き締めの場合、金利や国債利回りの上昇により銀行が儲かるため引き締めによる引き締めの効果が薄まり、金融緩和する場合、金利の低下により銀行の収益を圧迫し、融資による投資拡大を萎縮するリスクがある。
金利を上げてもリターンが増えるイメージを伝えることで逆効果になる場合や、金利を下げても将来への悪いイメージを伝えるだけで逆効果になる場合を特に考える。
このため、金融緩和の効果を疑い、逆効果の部分に注目する。
つまり、よりまとめて言うと
①変動相場制で自国通貨建の国家の財源制約はない。
②完全雇用の達成、長期政策の実行、経済の安定化を重視し、その実現のための財政政策を重視する(そのために財源や国債は気にもならない)。
③金融政策を重視せず、金利が高すぎる場合は金融緩和を行う。
という理論である。
主流経済学派の本質
一方で主流経済学派はというと、ブランシャールマクロ経済学(下)を見ると
財源政策は、
①政府は財政赤字を削減して債務の安定化をはかり、投資家を安心させる必要がある。
②政府の財政赤字は、短期では算出量の増加に貢献し、長期では資本貯蓄を低下させて算出量が低下する。
③政府が増税を先に延ばせば延ばすほど、実質利子率が高ければ高くなるほど増税額は大きなものとなる。
金融政策は、
①中央銀行は、完全雇用の実現と、潜在的算出量に合った算出量に保つために、金融緩和と金融引き締めを行う。中央銀行はインフレ・ターゲティングを行うことで、完全雇用の達成と、産出量の調整ができる。
→つまり、インフレ率と失業率に合わせて金融緩和と引き締めを行う。
そして、長期政策では、
①貯蓄率が中長期的な購買力平価を決定する。貯蓄の増加は投資の増加を生み、投資の増加は資本装備率の増加を生み出す。資本装備率の増加により生産性と購買力平価が上昇する。
②しかし、この貯蓄率の上昇による経済成長は逓減する(均斉経済)。以降は、技術進歩が経済成長の中心となる。最長期的には金融緩和や財政といった短期的要素は影を潜め、イノベーションを推進するための制度や研究開発投資、教育水準の上昇、スタートアップが重要となる。
③アフリカ諸国や北朝鮮などは資本装備率の上昇以上に国家制度の見直しによって経済成長を遂げることができる。
④しかし近年の技術の上昇は、技術者に限った生産性の上昇であり教育格差や、技術格差を生み出している。このため、より長期では資本の再分配よりも技術の再分配が格差縮小に必要となる。
これを統合すると、MMTの完全雇用の達成、長期政策の実行、経済の安定化は主流経済学派と一致している。
また、主流経済学派も「最長期的には金融緩和や財政といった短期的要素は影を潜め、イノベーションを推進するための制度や研究開発投資、教育水準の上昇、スタートアップが重要となる」
と言及しており、最長期的には財政破綻どころかその国の通貨さえも影を潜める。
実際、日本は155年前に江戸幕府が財政破綻しているが、もはやそれがきっかけで急成長を遂げている。また75年前にはハイパーインフレで実質的な財政破綻をしたが、やはりそれを契機に高度経済成長期に入った。
最も重要かつ至急の、統合政策とは?
このため、最長期政策には財源制約は存在しないと明言できる。あったとしても、考える必要もないほど軽微なものだろう。
日本に限れば財政破綻こそが経済成長のきっかけになっている。
今の日本さえそうと言えるかも知れない。
このことから、MMT理論と主流経済学派が統合された部分は
「長期政策に財源制約などない」となる。
それどころか、財源制約を気にするからこそ長期政策への支出が重要となってくる。
というのも普通に考えて、借金まみれの人が借金を返すためには、沢山勉強して、年収を上げ、発明や起業をして沢山稼ぐ必要があるからだ。そして、借金があるからこそ、その借金を持ち続けるためには将来の可能性を見せる必要がある。
これが国家と同じように言え、
長期政策は、スリランカのようなデフォルトした国家ほどに至急の課題となる。むしろ、余裕があるからこそ浪費や、短期政策という無駄遣いができ、借金まみれだからこそ長期政策しかできない、と言える。
国家がするべきこと
このため、今の国債発行額が財政赤字を気にせずに
「長期的な成長戦略に必要な限り限界まで支出すること」
こそがこの両者の統合部分になる。
実際、政府の生産的投資支出(PGS)についは国債発行をして支出を増やせば増やすほど、そもそも将来の国債発行額が減る。利子率よりも、GDPの上昇による将来の税収リターンが上回るからだ。
むしろ、日本の国債発行額がこれほど拡大した理由は政府の生産的投資支出が極端に少なかったためである。
よって、長期政策で莫大なカネを支出し未来を創出することが今日本に求められている。だからこそ、MMT派と主流経済学派は致命的に間違っているとして対立している。
ということは、日本に必要なのは百年単位の長期政策である。
そして、これに対する支出については財源制約が一切存在しない。それどころか、国債が増え、短期政策の財源制約が生じているほどに至急増やさなければならない。むしろデフォルトを危惧するほど、緊縮財政派であればあるほど増やさなければならないのだ。
ということは、百年単位の長期政策とは何か?どの額について日本は圧倒的に少ないのか?を考え、支出を大至急、必要な限り限界まで増やすことが求められる。
そして、これがイノベーションに関係することも明らかである。
経営学と経済学の統合
ということは、イノベーション推進に対する財源制約は存在しないと言える。中でもイノベーションに影響力の大きい、スタートアップ政策が国の中枢となることは間違いない。
例えば、NASAの巨額を使ったアポロ宇宙計画は、この長期政策では財源制約がないというルールに則り行われている。結果、多くのイノベーションを起こし、結果アメリカは世界の中心となることができた。またテスラなどへの大規模な融資などもアメリカの経済成長に貢献している。
まず、こうしたアントレプレナー政策の実行が至急の課題である。
しかし、スタートアップだけに極度に依存した場合は、「④しかし近年の技術の上昇は、技術者に限った生産性の上昇であり教育格差や、技術格差を生み出している。このため、より長期では資本の再分配よりも技術の再分配が格差縮小に必要となる」の問題に直面する。
アメリカは極度にスタートアップ政策に一世紀単位で偏っていたため、世界の中心となったものの格差が拡大してしまった。
さらにこの格差は年々拡大し続けている。
国民の多くがまともに医療を受けられなかったため、新型コロナウイルスによる死者は先進国でも突出してしまった。このため、アメリカは平均寿命を2年も下げるという緊急事態に直面している。
すると、全体をひっくるめて考えれば上位1%はいないにも等しいので、アメリカは日本よりも貧しい国とさえ言える。国家から見ればアントレプレナーが最強だが、国民から見れば「過ぎたるは猶及ばざるが如し」である。
たとえ、GDPや平均的な購買力平価で復活できるとしても、アメリカのようにジニ係数が拡大し、上位1%だけが指数関数的に成長し、ほとんどの人が豊かとは言えない状況も理想的ではない。
このため、日本にはアントレプレナーと同じかそれ以上に、インタープレナー政策が求められる。
インタープレナー政策の実行
イノベーションはアントレプレナーかインタープレナーによってしか起きない。しかし、アントレプレナーに寄りすぎると技術の格差拡大を招く。
その上、技術面での格差は富の再分配を行ってもまた開いてしまう。
また、スタートアップ政策は資本の上位1%を伸ばす方向性になりがちである。製品・サービスの質向上によって、同じ賃金でできる「クオリティ・オブ・ライフ」の拡大になるが、イノベーション自体が不均衡であるため、低所得者の本質的な生活水準に貢献しづらい。
たしかに、IT分野に限れば、アメリカの低所得者層の生活水準はGAFAなどのメガテックによって飛躍的に上昇しただろう。しかし、医療分野でのイノベーションの進歩は、この格差拡大を補うほどのものではなかった。
このため、低所得者層の医療水準についてはやはり、アメリカの高い購買力平価の成長にあっても、上昇していないか、むしろ低下したと言える。
こうした状況を踏まえると、技術の再分配のために社内でイノベーションを推進するインタープレナーの存在が不可欠である。こうしたインタープレナーを通じて、技術が再分配されていき、格差が無くなるだけでなく、更なる成長を実現することができる。成長政策と再分配政策は対立するものどころか、全く同じものなのだ。
人類総プレナー計画
このため、国民全員がアントレプレナーかインタープレナーである状態が求められるのだ(ターコイズ~インディゴ組織では全てのメンバーがインタープレナーになる、このためいずれは世界的に見てもそうなっていく)。
この国民に占めるプレナー率が国家の購買力平価や時間当たり生産性を決定する要因とも言えるだろう。
何と言っても、イノベーターとイノベーションをしない者では無限倍の差があるのだから。
そして、インタープレナー率は計測されてはいないものの、北欧やアイルランド、デンマークなどの生産性が高く、格差が小さい理由は紛れもなくインタープレナー教育にあると言える。
このため、国家の時間当たり生産性(購買力平価換算)は特に、企業内における博士課程卒以上研究者の割合や、新規事業に対する研究開発費といった大学関連と非常に強い相関関係がある。
企業のインタープレナー率は、企業の競争優位にも国家の競争優位にも直結する特に重要な指標であると言えるだろう。
教育政策とコンサルティング
よって、全ての国民をプレナーとするために教育政策の改革が求められる。
もしも自分がプレナーでないとしたら、それは何がいけないのだろうか?
これを考え、プレナーと変わるきっかけを全ての国民に与えることが一度この国、いや全世界的に必要だ。
このための財源制約は存在しない。お金は経済の短期的側面に過ぎないからだ。
そして、概ねプレナーとなれない理由は、社会や組織の鎖によるものだ。
組織の発達段階に対する改革
これはやはり企業でトップダウンに物事を決められてしまい、「インタープレナーとなれという指示が来ない限りインタープレナーとなれない」という影響が大きい。こうしたことは、ティール組織、DAO(分散型自律組織)の普及や、イノベーション教育、CEOのイノベーション教育会なども大きな影響を持つだろう。
今後、スタートアップを起業する場合に組織の発達段階を限界まで高くめることは、CEOの課題の一つとなっていく。このため、プレナーとなるための組織開発は、国家政策の中心ともなる。
何より、アイルランドやアイスランドが示すようにティール型社会に突入するタイミングで国家の生産性は急上昇しており、マルサスの罠(産業革命まであまり経済成長しなかったこと)もアンバー型社会であったためで、発達段階の影響によるものだ。
これらの可能性を見過ごすことはできない。(ヒューマンシンギュラリティ「発達段階の指数関数的な上昇」は、もはや経済や豊かさの概念さえ書き換えるほどの変化が起きることを示唆してはいる。そのため、普段はシンギュラリティを起こすために、先にヒューマンシンギュラリティを起こす方法について述べている)。
また、企業内研究者などになることができない機会損失も多く見られる。
組織の発達段階の話を置いておくにしても、こうした支障を取り払うことに財源制約はやはり存在しない。
授業料の無償化はリターンが上回る
中でも授業料の無償化は大きな役割を持つようである。特に大学での研究は学生に依存しているため、積極的な研究活動を行う学生が国家に果たす影響は計り知れない。均衡により影響を及ぼすことができるという点で、もっぱら働くよりも大きいかも知れない。
教育水準を上げればその分収入が上昇し、生涯の賃金が増えて税収が上がるので、教育授業料の無償化は反緊縮的政策ではなく、財政緊縮政策の一つとも言えるだろう。
問題はやはりこれが全ての人をカバーできない点である。
勝てるものだけが勝っても意味がない。全ての人が自分なりに勝てることができる社会を実現するためには、若いうちの制約はやはり取り払う必要がある。
しかし、とはいえど、低次の発達段階ではそうしようと自分を疑うことさえできないのだ。このため、やはり国家が先んじて教育政策によって発達段階を先に進めることが、より究極的な成長政策である。
そうすれば、やがて全ての人が自分なりに勝てる世界を切り開くことにも繋がるだろう。
とはいえ日本は何だかんだ復活する
いずれ、ティール社会、ターコイズ社会と変化していけば、「対立は統合できたことに協力し尽くしてからすればいい」といった価値観が広がり、日本の政治は「意見が多すぎて手も足もでない」「本当は同じ意見なのに、側面や立場が違うために致命的に間違っていると思い対立する」ことから抜け出すだろう。
このティール社会への変化は見られ始めている。
まさか左翼と右翼で初めて協力しあったことが、旧統一教会問題になるとは露にも思わなかったが、たしかに政治的立場に関係なく協力し始めたように見える。
これは、インテグラル理論における三つ前のパラダイムの習慣がほとんど見られなくなる現象と対応している。
カルト宗教における献金などはアンバー型的習慣であり、どうやら旧統一教会が無くなれば、まるごとアンバー型の習慣による支配が終わって、ティール社会に突入できると思い込むがために、これほど大きな問題となっているのだろう。
しかし、不思議なことに今年の購買力平価は去年と比べ10%も上昇しており、今後1600時間の壁という形で生産性が一時的に飛躍するようだ。
もしも、日本もこの1600時間の壁により生産性が急上昇するならば、「なんでもいいから労働時間を減らすこと」が国家のメインの成長政策の一つとなる。
このため、これから5年くらいで日本経済が急成長し始めた場合は、これまでのプレナーの話云々よりも、もはや「なんでもいいから働く時間を減らしておけ」ということになる。そしてIMFの予想を見る限りは急成長を遂げるらしい。
その場合はアベノミクスは最長期的に見て効果の無い政策だが、働き方改革は実は一番メインの成長政策であったということになるだろう。もしこれが本当ならば、「労働時間を短くすることが国家最大の成長戦略である」との論文を発表することとしたい。
経済が実はそんな簡単な話だった、という可能性も大いにあり得る。
全体の年労働時間が1600時間を下回ることは、ホラクラシー組織のようにティール組織の強制ギプスなのかも知れない。
アベノミクスをどう評価するか
アベノミクスが実行されてから購買力平価の成長率は鈍化したが、失業率の低下によって治安改善や失業自殺者の救済などの効果があったようである。つまり短期的な政策としては成功であった(だからこそ長期的には浪費となり、購買力平価の成長が遅くなった)と筆者は見解している。
一方で働き方改革は、現岸田政権の10兆円ファンドよりも中心的な成長政策であったのかは今後はっきりする。
もしそうであれば、働き方改革の実行こそが安部元首相の最大の成果となるだろう。筆者はそう考えている。
インテグラル理論と経済学
最低でも経済は発達段階Dependentであるようだ。マルサスの罠という産業革命までの長期的な経済停滞は、明らかにアンバー型社会が続いていたことによる現象である。そして、産業革命はその次のオレンジ型パラダイムによって生じた。そして、IT革命はグリーン社会、Web3はティール社会と対応している。
また、グリーン型パラダイム=失われた30年であったことは特筆すべき点だ。インターネット社会や、メガテックの登場はやはり、ここ30年で日本が停滞していたことは重なる。
つまり、ティール社会に突入することが失われた30年から抜け出す回答となる。ティール組織が日本を救うのだ。そして、アイルランドが示すようにティール社会はまた成長の時代へと突入するようだ。
なぜグリーン型パラダイムで経済が停滞したのか?
このグリーン型パラダイムで経済が停滞する現象は、日本特有のものではなく、グリーン型国家全般に見られた。
では、なぜグリーン型国家は停滞してしまったのだろうか?
企業単位で見ると真逆の現象が起きているからこそ深い謎を作り出していた。
グリーン企業はオレンジ企業よりも成長できる
早いうちからグリーン型の代表的な行動ともいえる働き方改革を進めてきた、富士フイルム、キヤノン、味の素、ソニー、日立などはむしろ競争優位を生み出した。失われた30年にも負けじと成長し、日本を支える一大企業となった。
このため、今の日本の時価総額ランキングには、かなり早い時期からグリーン型パラダイムとなった企業が名を連ねている。あるいはキーエンスのように会社のパーパスこそ付加価値の追求というオレンジ型だが、タイムリーダーシップという遥か先のパラダイムを含むタイプの企業が見られる(キーエンスにはティール的なセルフマネジメントの文化がある)。
今の段階で日本の時価総額ランキング上位で純粋なオレンジ企業は見られない。
つまり、オレンジ→グリーンも本来は成長するはずである。最低でもグリーン企業の方がオレンジ企業より成長することはティール組織の著書内にも記されている。
その理由も明らかで、社内のインタープレナー率がグリーン型の方が高くなるからだ。
しかし、国家全体を見渡すとグリーン国家になったことで停滞が始まっている。そして、不思議とティール国家となることで抜け出している。
やはり、グリーン国家は停滞するのだ。そこでこの謎についても具体的に説明をする。
グリーン国家・停滞の謎
グリーン型パラダイムは、「みんな違ってみんないい」をあまりにも優先しすぎるために、かえって全部を否定してしまう現象を起こしがちである。
実際に、グリーン組織は全員を尊重してしまうがために、意見に結論を出すのをためらい、意見がまとまりにくいという弱点が指摘されている。
その上で、グリーン型パラダイムは他のパラダイムを、致命的に間違っていると思い対立する。オレンジ型などを敵視してしまうのだ。
四事象全てがオレンジであるとき、発達段階は健全であるため国家が急成長する。しかし、このバランスを欠いてしまうと、健全な発達を促すことができず、停滞してしまうのだ。
グリーン国家の中でも成長できた国は、国民の心、行動、文化、社会の全てを一気にグリーンに変えることによって、健全な成長を遂げることができた。
しかし、概ねのグリーン国家は、心、行動、文化が社会よりも先行してしまい、特に心が先行してしまうために、健全な発達ができなかったのだろう。
健全でない結果、グリーン社会の日本のように意見の食い違いから、統合できたこともできなくなり、長期政策の欠如によって停滞を引き起こしたのだ。
そして、それこそが四事象全ての健全な発達が大事で、グリーン型までのパラダイムについては、どれか一つだけがグリーンなくらいなら全部オレンジのほうが成長することの根拠にもなる(最優先指令)。
そして、日本は人口が多すぎがあまりに、この全ての事象での健全な成長は特にできなかったと言える。これが失われた30年の正体だろう。
一方で、人口が少ない民主主義国家は概ね急成長を遂げている。これはやはり、人口が少ないために四事象全てを動かしやすかったからだろう。
あるいはオレンジ型の時期を先延ばしにした韓国は、グリーンよりオレンジが成長する力を使うことで、日本の一人当たり購買力平価を抜くことができた。
中国は、四事象全てをオレンジ型パラダイムに固定し、飽くなき経済成長を目指すことに心血を注いでいるからこそ、高い成長を遂げているように映る。
文・元大統領の行った最適賃金の急激な引き上げはオレンジ型の引き伸ばしと捉えることができる。これは、働き方改革を行う日本とは対照的に映った。
また、それが日本人の幸福度が低い原因にもなっていたようだ。自身の心がグリーン型であるのに、オレンジ組織で働くことは致命的に間違っていると思うせいで苦痛であっただろうし、社会や文化での分断も起こっていた。
こうしたことでのモチベーション低下などが、生産性にも響いていたようだ。オレンジ組織のメンバーはやはりオレンジであることが一番モチベーションも出て、生産性も上げやすい。
個人の発達段階が高いことが必ず功を奏するとは言えず、組織の発達段階と合うことも同じくらい重要なのだ。
そして、政治について話すのがタブーというのもこの不均衡を原因としていた。「政治について何かを言及する=誰かからは、致命的に間違っていると思われる」だからだ(もちろんティール社会になっても、それは続くとはいえ、中心的ではなくなる)。
以上から、グリーン型は本来、成長を促すものなのだがメンバーの数が多すぎるとバランスを欠いてしまい、かえって健全な発達を阻害してしまう。
よって四事象の健全な発達は、国家成長戦略において、どれか一つの発達段階を上げることよりも重要である。ただし、それはグリーンまでの話のため、ティール以降は一気に伸ばしていくことも可能だ。
↓他、インテグラル理論と歴史、社会系。
追記: 長いため、分割したバージョンも出します。
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