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悠冴紀/小説家・詩人
2021年8月4日 12:04
作:悠冴紀答えなどはじめからどこにも存在しない誰かの導き出した明確な答えは他の誰かにとっての問いとなる私にも誰にも答えようがないその時どきに見出す小刻みの持論ならすでに幾度となく言葉にしてきた年月を経てそれら全てが問いに帰するだから朽ちない循環により生を得る終局を迎え 落ちた木の葉は残像だけをおいて土にかえる土を踏みしめる誰かが樹を見上げるときそこに
2020年2月29日 08:38
作:悠冴紀雪を見るたび 私はいつも何故だか君を 思い出す君の喪失は受け入れない受け入れられるわけがないだがこの悲しみは引き受けるあえていつまでも悼み続ける忘れるつもりなど更々ない君との日々も その別離さえもたとえそれが楽な道でも私は決して忘れない君の記憶は心の宝悲しみの深さはその大きさの証失うに堪えない関係があること自体恵まれている証拠なのだと
2024年2月23日 11:30
作:悠冴紀互いの存在を知りながらも近付きすぎてはならない間柄がある一つの世界には 一人の自分同時に二人は存在できない掟を軽んじてはならないもう一人の発見に歓喜しても会うことを望むのは禁忌に当たる会っては互いに破滅する何度かの失敗体験をもとに私は距離の取り方を学習した突き放したのは嫌悪ではない君がもう一人の私だからだ残念だが私たちは最も慎重に距離を取らねばな
2020年3月18日 19:27
作:悠冴紀底知れぬダークブルーの海の中からゆらりと立ち現れるペールグレーの刃物隙のない冷ややかな眼差しで静かに鋭く 水を斬る鮫は笑わない何者にも靡くことなくどこにも馴染むことなくギラリと横切り 去っていくその研ぎ澄まされた姿を変えぬまま何億年もの間 君臨し続けてきた鮫は語らない群れを集うことなく通じ合うことなく音もなく忍び寄る 闇夜のハンター決してすべ
2022年11月25日 15:38
作:悠冴紀愛に飢える者を大勢見かける孤独を避けるためだけに誰かを求め愛する以上に愛されようとするけれど愛とは相互のもの己だけのためには成り立たない愛を賛美する者を大勢見かける旋律に載せ 色彩を加え世界中で謳われるけれど愛とは諸刃の剣憎しみ以上に相手を傷つけ凄まじい破壊力を発揮する愛を説く者を大勢見かけるまるで全てを解決する答えであるかのように目指すゴールにそ
2022年4月8日 19:24
作:悠冴紀その戦場を生き抜いて帰還した後君は友をなくすだろう命からがら逃げ帰ってきた後君は家族をなくすだろう何かを護ろうと戦って何より護りたかったものまで壊してしまう現状に気がつくとき君は自分の何かを置き忘れてきたことを知る鏡を覗くとそれまで相手にしたこともない最強の敵君のその混乱を見て逃げ出さない者はいないだろう生き抜くことだけを考えて生き抜くためだけに強
2022年12月30日 14:34
作:悠冴紀流行病に 閉じこもり生活しばらく離れて暮らす間に皆ずいぶん変わったものだまるで魔法にかけられたかのようあるいは魔法が解けたのか……?人も世界も変わり果てた醜く浅ましく暴力的に以前と同じ姿のまま別人と化してしまった人々友への接し方さえいとも簡単に忘れてしまったこれまでに重ねた月日は一体何だったのか ──?なんとあやふやで脆弱な自己同一性元より
2022年8月26日 18:00
作:悠冴紀都合だ結局すべてが都合なのだ裏切られたとは思っていない期待も信頼も元よりなかった端から明白なことながら政治や社会に良心などない国家というものにも良心はない人の寄せ集めで構成されていながらそれらは しかし 人ではない対して国なき民はあまりに不利で無防備な存在逃げ延びる先々で迫害を知る同情的に扱われるのは最初だけあとは長きにわたり地獄が続く里を追わ
2020年9月9日 21:52
作:悠冴紀私は人の子にあらずとうに自ら放棄した後悔はない今は常に満たされている家族はいない二度といらない母とは大地父とは大気私にはそれで充分だ帰るべき生家はないなくていいすべてを宿しながら何者をも囲わない 無限の宇宙里と呼ぶに相応しい 唯一の場皆はじめからそこにいたのだ影は智光は力思えばずっとそう生きてきた子にはならぬが親にもならず
2022年6月17日 15:22
作:悠冴紀大地に砕けた鋭い硝子片辺りに潜む無数の地雷傷を負わされた人間はその内側に凶器を育む哀しいかな過去の被害者こそ未來の加害者周りのすべてを巻き込んで新たな壊れ者を生み出していく同病相憐れみなど一時凌ぎの幻想だ壊れ者同士で更に壊し合っては足を引っ張り合うだけの末路立場の近い似た者同士の接触は更に危うい火種となる僅かに食い違う価値観は激しい怒りと憎
2022年8月15日 17:19
作:悠冴紀暮れなずむ空を見上げる空が私を詩人にする昼間の熱気が身をひいて空がさらさらと風を流し込む今日という日を振り返る文学的な残光緩やかに折り畳まれていく青紫のグラデーションこの時間が私を詩人にする************※2007年8月(当時30歳)の作品今回は夏の頭休めにセレクトしたゆるい一作です(笑)注)この作品を一部でも引用・転載する場合は、「詩『
2020年1月19日 21:12
作:悠冴紀雪が降り積もる枝から舞い落ちた枯れ葉の上にすべてを無に返す 白い雪がこの終わりは旅の始まり束の間の平穏に中断された忘れかけていた歩みの再開遠くへ行くよ本来の私に相応しい彼方どこでもない枠組みの外側へ築き上げたものを 自ら打ち壊しあるべき道のため 初期化するそうして何度も 再生してきた接した人々の瞳の中で私の背中が消えていく白く不透明な霧の彼方
2021年6月15日 10:13
作:悠冴紀君は不死鳥になった私の中で 永遠に消えない君がお別れを言いに来たときあの場に私がいなかったのはこのためかもしれないと 今は思う君の命に翼が生えて空高く飛び立つのを見た気がする君を愛した者たちの涙をあわせ空が水の翼を編み上げた君は不死鳥濁りを知らない柔らかな翼で今もどこかを舞っている君はそうなるに相応しい存在だった私のような人間さえ許し 受け入れ
2020年6月14日 10:56
作: 悠冴紀荒野から荒野へ廃墟から廃墟へ誰も訪れなくなった場所を訪れ乾いた風景を眺め歩くそこはかつて川のあった場所あとから塗り込められた灰色のコンクリートも今は朽ち果てさながら墓地の佇まい川辺を舞っていたあの蛍たちは一体どこへ消えたのか……二度とは戻らぬ初夏の灯火彼等の水は枯れてしまった草木も川も 今はない私はここに 嘆きに来たのか?いや、心は至って穏やか