【ショート小説】路地裏の階段を上ったら、宇宙に着いた。

 月と地球の間、無重力の暗闇の中で、これからどうしようか、と僕は考える。抵抗もせず、ゆっくりと体が流されるままに。  僕を拾ってくれたご主人が冷たくなってしまった。僕にはご主人しかいなかった。ご主人だけがすべてだった。  一週間前、ご主人は急に台所で倒れて動かなくなった。僕はしばらくご主人のもとを離れなかった。きっとまた起き上がるだろうと思って、僕はずっとご主人に体をくっつけて寝ころんでいた。そうやって一週間待っているうちに、僕は、もう二度とご主人が起き上がることはないこと

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口は災のもと

言葉で感情を伝える事は意外と難しい。 好きとか嫌いといった両極端な事であれば、良いか悪いかで伝えわるのだが。 まあまあだとか、いいんじゃないといった内容だとボヤけてしまい、良い悪いのどちらにも転がってしまう。 よく昔から口は災いの元と言われるほど、言葉は慎重に選ぶ必要がある。 てな流れで、今回は鬼才テリー・ギリアム監督作品である「フィッシャー・キング」を紹介したい。 毒舌で人気のあるラジオDJジャック・ルーカスは、いつもの様に軽快な口調でリスナーを喜ばせていた。 そんな中

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それは喪失を受け入れる物語。

ちょっ、おま、何言ってんのか分かるようで分からない。 そんな物語が確かにある。 それこそがエヴァンゲリオン。 通称エヴァなのである。 皆がすごいすごいと言うし、あの破滅的なハ短調の曲(残酷な天使のテーゼね)を歌いこなすには原作を見る必要があるなと思い、15年ほど前にバイト先から程近いレンタルビデオ屋で VHS を借りて、アニメ版を全部見た。 一通りみても意味わかんなくて、さらに映画版をみてももっと分からなくて、これはもはや破滅的な中二病や厨二病を楽しむべき嗜むべきアニ

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喪失を受け入れること

かつて、大きな鯉が悠々と泳ぐ池を見守っていた灯篭は、池が埋められてから幾年もの歳月が経つ中で、雨風に打たれ、蔦が這い、かつての機能を失ったまま佇む。 人は誰しも、いつか命の終わりを迎える。 その道程でいくつもの喪失を経験する。 それは身近な人が亡くなることだったり、親しみのある環境を離れることや自身の体が衰えることだったり。 ・・・・・ 先週、実家にいる祖父が緊急入院しまして。脚立から落ちて頭部を強打、頭の中で出血を起こし、背骨も数本折れて大変なことになってしまいま

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失った

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詩「序曲」

僕達が星空を喪ってから どれだけの時が経ったろう 目に見えない神秘 手で触れない幸福は 浅い夢の中に沈んでいる どこへ行くのかも問わないまま 倦まず歩き続けてきたのだ そして岐路に辿り着いた今 読めそうで読めない碑文の前で 世界地図を広げている ガラス細工が砕けるなら 派手な音が知らせるだろう 雄々しい山が崩れるなら 猛烈な火が迸るだろう だが僕達の日常は だれも知らないうちに傷ついてしまった それは僕達が歌を忘れたせいだろうか 言葉にならない魂の歌を 伝えるのをやめた

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瀬戸内寂聴さん2〜喪失を乗り越えたいけどまだダメな理由〜

電車の中で、若いサラリーマン男性が3人立って喋っていた。20代前半だろうか? 私は、彼らの近く、シート席の端に座っていた。 「20歳年上とずっと付き合ってて、この前、彼女に振られたんだ。」 「へえー。」 私は、すげぇな彼女、と思った。 こんなとき、瀬戸内寂聴さんならどんな小説にするだろうか、とふと思った。 読みてぇ〜〜〜〜〜〜〜ッ!!!!!!!!!!!!!! 顔を上げると、彼は下車していて、残りの二人で全然違う話をしていた。 みんな大人すぎるッ! 私なら彼に

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不妊のこころ (10)つらい経験を経てやさしく

 不妊患者さんからよく、「子どもを授からない限り、不妊の苦しみは消えない」と言われます。もしほんとうにそうならば、不妊の方は一生、喪失感や空虚感にさいなまれながら生きていかなければならないのでしょうか。  子どもを望んでいた人にとって、かなわなかった子どもへの思慕や悲しみが完全に消えることは、残念ながらないかもしれません。でも、悲しみを抱えて生きていくことと、自分の人生を不幸だと呪いながら生きていくことは違います。  結果として授からなくても、不妊治療をがんばっていた時期

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不妊のこころ (9)次こそは…

 不妊を経験しない人が不思議に思うことの一つに、それほど不妊治療がつらいのなら、どうしてやめないのだろうということがあるでしょう。頑張っても授からないならば、あきらめて子どものいない生活を送ることも、養子や里子を迎えることもできるのに、なぜ、お金も時間も費やして苦しい治療を続けるのか、と。  子どもがいなくても幸せな人生が送れる。これは正論ですが、不妊で悩む人には受け入れがたい考えです。これほどまでに子どもを望んでいる私が、あきらめなければならないなんて理不尽だと思うでしょ

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古本を詠む◆青年心理「危機―思春期の病い」(1986/11)

●「危機」とはなにか #木村敏  はじめに 危機ふたたび  #危機 と主体  #無意識 の構造と危機  危機と同一性 ●青年期の発達的危機 #斎藤久美子  危機の発達的意味  #青年期 の発達的条件  自己 #アイデンティティ 形成の課題 ●危機なき思春期 思春期危機拡散の現代 #後藤宏行  #パラドックス 不在の文明  温室のなかの自然  #死 の意味を問いかける #文化 とは ● #思春期 の #病理 は変わったか # 牛島定信  #思春期病理の時

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