みお

演技をすることを愛しています。他には読書、映画鑑賞、イラストを描くことが好きです。何か…

みお

演技をすることを愛しています。他には読書、映画鑑賞、イラストを描くことが好きです。何かを作ろうとする誰かの文章を読めることが喜びです。

最近の記事

愛は無限

愛してしまう。 いつも。 わたしは何も考えずに。 仕事も芸術も わたしにとって垣根がないように 恋愛と友情。 思慕と敬愛。 正義と嘘。 その垣根を 気づいたらいつも すでにこの足は 跨いでいる。 境界線を越えるから 苦しくなるのだ。 不安定にもなる。 裏切りや嫉妬 後悔や迷いを 生み出す種にもなる。 線の中にいることだ。 それが一番良いことだ。 そう言い聞かせてみても無駄だ。 この足は、この体は 気づいたら荒野に立ちつくしている。 心がすべてなのだと 心の真実に抗っ

    • あなたがいたから

      そこには愛があった。 たくさんたくさん、たくさんの。 演出家、共演者、舞台監督。 音響さん、照明さん、衣装さん。 皆が頑張っていて 皆が愛を持ち寄り エネルギーとアイディアを絞り出し それが舞台上で結集する。 その様を観ていた。 ずっと。 永遠に観ていたいと思いながら。 それはとても美しかった。 恐怖は敵だと、ずっと思っていた。 自分だけが取り返しのつかない弱虫で 克服できない恐怖という名前の車輪を ずっと漕ぎ続けてきた人生だった。 やっと見えたのだ。 光が。

      • 責任を、放棄せよ!

        たどり着いてしまった。 こんなおかしな場所に。 明日が本番。 なのに、わたしは笑っている。 稽古が楽しい。 まだ芝居が変わっていく。 まだ面白くなる。 芝居することが楽しい。 お客さまにちゃんと見せたいから 集中したいとずっと思っていた。 今のわたしは 少し違うことを考えはじめた。 本番なんかより 稽古のほうが数千倍も面白いのだ。 芝居というものは、得てして。 役者なら皆知っている。 本番に向けて 芝居が面白くなくなっていくことを。 ちゃんとしなくてはならないからだ

        • どうしてこわかったんだろう。 こんなに愉しいこと こんなに愛していたことが こんなに そのためだけに生まれてきた このわたしの宝物が。 どうしてこわかったんだろう。 ずっと長い間 たたまれていたわたしの翼。 蕾のままだったわたしの華。 もういいんだよ。 外に出ておいで。 もう寒い冬は終わり。 俳優たちは皆 己の天職を愛し それに溺れるために 今日まで歩いて来たのだ。 責任で、演技は出来ない。 お金で、作品を定義することは出来ない。 お客さまが お金を払い 足を運び

        愛は無限

          本音

          清いことがいいことだと ずっと思って生きてきた。 澄み渡らなければ、嘘があれば 良い芝居は出来ないと信じていた。 頑張ること、誠実であること 考え続けること、嘘をつかないこと。 それがずっと今まで わたしの正義だった。 それでどこまで行けただろう。 わたしは。 手首についた傷は いつか自分がつけたものだ。 痛みがなければ 泣くことが出来なかった、ある日に わたしを救った傷だ。 自分を醜いと思っていた。 どうしてまっすぐに歩けないんだろう。 頑張っても頑張っても 背中にのし

          出来ることの全てを

          そのことに気づく。 恐怖は克服出来やしない。 浅くなる呼吸の中で 笑うことだけが わたしたちに許された 最後の足掻きなのだ。 表現の色と役の芯。 稽古でつくって来たこと。 失敗したこと。 上手くいかなかった時。 皆の呼吸が合わなかった時。 自分がまだこの役を掴めていなかった時。 どうだったか。 それでもどうやって 台詞を話していたのか。 それと今では全く違う。 役であるがゆえに 出来る間が生まれたり 新しい感情ゆえに 言葉の語感が変わってくる。 そのことにより台詞が揺れ

          出来ることの全てを

          エキセントリックな天使

          それは爆発するように紅い色。 光を放つのは、優しさを隠しているから。 歳を重ねても変わらなかった純粋さは でも彼女の味方ではなかった。 どうして結婚しなかったんだろう。 どうして子供を生まなかったんだろう。 わたしには何があるんだろう。 どうして。 問いかけに答えるように鳴るのは 古い柱時計だけ。 ひとりの女であること。 かつての少女であることを 忘れ去られ その知性も愛も心づかいも 無視され続けた。 でも一番辛いのは 自分にも原因があったということ。 自分自身も

          エキセントリックな天使

          ほんとうのこと

          わたしはいい人間じゃない。 それはほんとうのこと。 人に優しくしたい。 尽くしたい。 クリエイティブなものを ただ投げ出して 大切な人にあげたい。 でもそれが 人を傷つけることもある。 すごく沢山ある。 自分が生きていることが トラブルの種だと 昔はよくそう思った。 善い人間になろうと 努力すればするほど 何故か足元を掬われる。 その原因はいつも自分だったから。 心を動かさない。 そう出来たらいいのだ。 それがわかっていた。 わかっていて 心は止められない。 溢れて

          ほんとうのこと

          桜の木の下

          悪い、ということはどういうことであろうか。 淀む、ということ。 罪、ということ。 それは逸脱する、ということなのかもしれない。 桜の木の下には死体が埋まっている。 あるいは 桜の木の下では旅人の気がおかしくなる。 そういう伝承がある。 桜の花の美しさが 人にその物語を信じさせる。 わたしにはわからない。 その花が美しいのも恐ろしいのも ほんとうは同じことだからだ。 悪いことと善いこと。 淀んだものと澄んだもの。 罪と祝福。 それが同じものなら もしそれが同じものなら。

          桜の木の下

          やわらかな皮膚

          何だろう。 本番が差し迫っているのに、この気持ちは。 自由なんだ。 人間は。世界は。 そして、わたしも。 そんな風に思うのだ。 練習練習、イチニモニニモ。 練習オタクのわたし。 でも1日に脳がきちんと動く時間には 限りがあると気づいた。 もう入っている記憶を再現する。 何度も何度も 最新の記憶として上書きする。 脳が「もうわかったよ」と言っている。 脳が生き物で わたしとは異なる生き物で わたしにウンザリしているような そんな錯覚に陥り 面白くなる。 お芝居は面白い

          やわらかな皮膚

          客席に

          自分のために芝居をやるのだ。 強くなるのだ、なんて言ってきて。 そんなのは嘘だった。 ほんとうはそうじゃない。 そう言わないと、潰れてしまいそうだった。 壊れてしまいそうだったから。 ほんとうは違う。 全然違っていた。 あの日、福島で 震災の後の福島で 泣きながら芝居をした日。 お客様がオープニングから ずっと泣いているのが はっきりと見えていた あの体育館で。 わたしは お客様を捨てたのだ。 福島で公演が出来て だから辞められる。 これでいいと語った。 十分やった

          水際に帰る

          戻ってきた。 またここに。 おかえり、ただいま。 懐かしい場所に。 演劇をやって、色んなことを勉強したのに どうしてかずっと 水俣病のことがわたしの中心にある。 宮沢賢治がわたしの中心にあるのと 全く同じように。 緒方正人さんの存在が とても大きいのだろう。 お父さんが狂い死にして 緒方さん自身も狂いかけて それでもチッソという会社を 許そうとするひと。 その言葉には 風が吹き抜ける。 その言葉は 魚の匂いがする。 草木や潮や、土や獣の匂いがする。 ああ。ここだ。 ここ

          水際に帰る

          吹けよあれよかぜよ嵐よ

          この役を、この作品を、つくる上で 後なにが足りていないか。 まだプラス出来る まだ塗り重ねられる色は、何色か。 例えば、苛立ちだ。 わたしという人間が単純過ぎるために 怒りが短時間しか持続しない。 その為長い間苛立っている。 ずっと恨みに似た思いがある。 そういう気持ちの表現がまだ足りていない。 ねじれ、だ。 真っ直ぐではいけない。 この作品におけるどんな役も どんな言葉も、ねじれていなくてはいけない。 皆が嘘をついている。 皆が不満を抱いている。 皆が誰かを憎んでいる

          吹けよあれよかぜよ嵐よ

          こんなにも苦しい

          ステージを終えたら 例えば 今が戦時中で わたしは思想犯で だからステージを終えたら 捕まって、殺される そんなことばかり考える それは暗い考えなのではなく そう考えてはじめて 稽古でつくったクオリティのまま 筋肉の弛緩や 感情の流れのスピード 伸びやかに出る声 誰かに見せるためではない それ自体として 完結した演劇体とでもいうようなものの 披露が出来る気がする からなのだ どうせ死ぬのだ これが最後なのだ そう思うと 涙が出てくる 自分を許してやりたくなる そうして 完

          こんなにも苦しい

          魂ようつれ

          ずっと走り続けて来た。 あなたが行ってしまってからずっと。 止まると、痛いから 痛いことを思い出してしまうから 走っていたのかもしれない。 でもそれだけではなかった。 あなたがいない世界で わたしが生きていくために わたしにはやらなければならないことが あったから。 悪い人間になれ、と あなたは最後に言った。 わかっている。 それがどういう意味か。 何を指しているのか。 わかっていて、ずっと乗り越えられなかった壁。 わたしは今どうしても それを越えなくてはならないのだ。 母

          魂ようつれ

          村に火をつけ、白痴になれ

          伊藤野枝の言葉だ。 わたしにとって舞台に立つことは 一切喜びではない。 恐怖でしかない。 はじめから今までずっと。 もうひとつ言えばかつては 生きることさえそうであった。 この世界が嫌いだった。 金に支配され、戦争を止めることが出来ず メディアも医療も教育も 全てがその腐敗と暴力から 永遠に自由にはなれない。 戦後この国の堕落は止めどなく アメリカにそして最も富む者たちに 逆らい意見すれば殺される。 だから籠の鳥だ。 生きながら死んでいるようなものだ。 ずっとそう思ってい

          村に火をつけ、白痴になれ