みお

演技をすることを愛しています。他には読書、映画鑑賞、イラストを描くことが好きです。何か…

みお

演技をすることを愛しています。他には読書、映画鑑賞、イラストを描くことが好きです。何かを作ろうとする誰かの文章を読めることが喜びです。

記事一覧

決して恐れない

恐れを克服するのではない。 恐れない。 1ミリも。 それが今 わたしが何よりも手に入れたいものだ。 人間を 自分以外の人たちを いつからそんなに 恐がるようになったの…

みお
7時間前
7

死してなお

伝わらない言葉があったのだ。 ひとつだけ。 この職場にはかつて 叶うはずの夢があった、とわたしは話した。 可能になる。 現実になる。 夢が叶う。 だから、どんなことも…

みお
3日前
7

何よりも先に

命は、間に合わないのだ。 そのことだけだ。 もう、わたしが言いたいのは。 利用者さんの体と心の 機能改善と 生きがいの表出 そのことに務めて来た。 そのすべてを無視さ…

みお
5日前
7

それでも人生にイエスと言う

悪魔的なものがこの世にあるとしたら それを見たことがあると 確かに言える 子供の頃家中の床が ガラスの破片だらけになり 足の指を切ったこと わたしを愛した人が いつ…

みお
11日前
11

尖ったもの柔らかいもの

わたしの中に両方ある。 尖ったもの柔らかいもの。 尖ったものはでもたまにしか出てこない。 昔芝居をしていた頃はよく出てきていた。 でもそれは芝居をしていたからでは…

みお
12日前
9

恋のようだ

生きることは清新で 匂い立つ恋のようだ。 台詞を覚え 本番の張りつめた空気の中で 発語する。 その瞬間にも似た 痛みに近いような 極限の賭け。 それが本当は 瞬間瞬間…

みお
2週間前
9

諦める・信じる

ついこの間まで、芝居漬けだったのに もはや介護の仕事の問題で 頭がいっぱいである。 若い頃はやっぱり芝居が一番で 他の仕事は二の次だったのに 年を取ったということな…

みお
2週間前
8

母のこと

どうしてなのか、わからないのだ。 演劇をやることのどこに 母の死を乗り越えられる理由があったのか。 わからないままだ。 勿論哀しくないわけではない。 思い出すことも…

みお
3週間前
8

続ける、ということ

久しぶりの舞台復帰を終えて 今思うこと。 こんな苦しいことを 10年もやっていたのかー!っという 他人事のような驚き。 そんなにも好きだったか…という気づき。 ここ…

みお
3週間前
10

ひっぱられる

演劇には遠心力があるのだ。 しみじみそう思う。 一度触れてしまえば ぐるぐる回る銀河鉄道にでも乗ったかのように 降りることが難しくなる。 大体次の停車駅がどこなのか…

みお
4週間前
9

誰かの幸せが

誰かの幸せが幸せなのだと気づく。 そんな1日だった。 先週は自分の舞台の本番だったけれど 今日からは先輩たちの本番である。 新しい集団に出会って ほんとうにずっと…

みお
4週間前
11

なぜ生きるか

いつも思う。これは何なのだろうと。 芝居は祭りだ。あっという間に消える。 あんなに長い準備も苦しみも 公演が終われば跡形もない。 何のために、そこまでするのだろう。…

みお
1か月前
11

4分の3

トラウマを克服すること。 それが今回の目的だった。 完全に入っているはずの台詞が 出ないと思い込むこと。 ちゃんと出来ているシーンが 空間が歪んでいるかのように 突…

みお
1か月前
7

わたしに出来ること

準備がすべて終わって、あとは本番を待つばかりだ。 こんなに時間をかけさせてもらえたこと、はじめてかもしれない。 心が穏やかだ。 母は、悔やんではいないかと心配だっ…

みお
1か月前
10

言葉が語り始める

簡単だ、と思うことがあるのだ。 このまま大きく声を張り上げれば 感情に溺れて泣いてしまえば わかりやすく芝居らしくなるのだ、と。 わかっていて。 でも、それは作品の…

みお
1か月前
6

奪う側

オッペンハイマーの映画が好評だということだ。 ずっと原爆投下を悔やまない姿勢のアメリカの 態度の軟化が見てとれる、などという記事を いくつか読んだ。 ヒロシマ・ナガ…

みお
1か月前
4
決して恐れない

決して恐れない

恐れを克服するのではない。
恐れない。
1ミリも。

それが今
わたしが何よりも手に入れたいものだ。

人間を
自分以外の人たちを
いつからそんなに
恐がるようになったのか。

あんなに天真爛漫に
歌い踊っていた子供の頃
それが恐いことだなどと
思ったことがあったか。

お金を払われたからではない。
わざわざ観に来てくれたからではない。

わたしは大人になってしまったから
失敗したら
批判される。

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死してなお

死してなお

伝わらない言葉があったのだ。
ひとつだけ。

この職場にはかつて
叶うはずの夢があった、とわたしは話した。
可能になる。
現実になる。
夢が叶う。
だから、どんなことも
辛くはなかったのだ、と。

治る。
笑顔になる。
良くなっていく。
そんな希望がそこにはあった。

体はもう機能改善を望めなくても
きちんと水分を摂らせ
運動することで
今日一日を良くしたのだ
支えたのだということも
その希望に入

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何よりも先に

何よりも先に

命は、間に合わないのだ。
そのことだけだ。
もう、わたしが言いたいのは。

利用者さんの体と心の
機能改善と
生きがいの表出
そのことに務めて来た。
そのすべてを無視され、嘲笑われながら。

それはいい。
もういい。

大切なのは、そんなことではないのだ。

あなたたちは
何者か。
何者であるのか。

わたしは今になって
それが知りたくなったのだ。

ガラスの天井の向こうには
一部の富める人間がい

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それでも人生にイエスと言う

それでも人生にイエスと言う

悪魔的なものがこの世にあるとしたら
それを見たことがあると
確かに言える

子供の頃家中の床が
ガラスの破片だらけになり
足の指を切ったこと

わたしを愛した人が
いつかわたしを埋めてしまう為の
穴を掘っていると
気づいたこと

どの瞬間も
わたしは上手く
悪魔を祓うことが出来なかったのだ

わたしは若く未熟で
まだ人生の指針が定まっていなかった

「優しさ」という名前の
可能性と隙を
まだ残しな

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尖ったもの柔らかいもの

尖ったもの柔らかいもの

わたしの中に両方ある。
尖ったもの柔らかいもの。

尖ったものはでもたまにしか出てこない。
昔芝居をしていた頃はよく出てきていた。
でもそれは芝居をしていたからではなく
歪のある環境にいたからだったと
今さら気づいたのだ。

わたしとは尖ったもので
だから人を傷つける。
だからそばに寄らないほうがいい。
そんな風に思っていた。

あの頃。
尖っていたのはわたしではなかった
のかもしれなかった。

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恋のようだ

恋のようだ

生きることは清新で
匂い立つ恋のようだ。

台詞を覚え
本番の張りつめた空気の中で
発語する。

その瞬間にも似た
痛みに近いような
極限の賭け。

それが本当は
瞬間瞬間、生きている
わたしたちの人生に
起きていることなのだ。

わたしはわたしを
何一つ知らない。
わたしは世界を
何一つ知らない。

わたしは恋人を、友人を、家族を
まだ何一つ知らない。
わたしは政治を歴史を、思想を生活を
まだ何

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諦める・信じる

諦める・信じる

ついこの間まで、芝居漬けだったのに
もはや介護の仕事の問題で
頭がいっぱいである。

若い頃はやっぱり芝居が一番で
他の仕事は二の次だったのに
年を取ったということなのだろう。

ずっと我慢してきたこと。
現場で常に問題になっていて
皆が頭を突き合わせても、どうにもならなくて
でもどうにかしようと
ずっともがいてきたこと。

それの所在をどうしたらいいのか
わからないのだ。

岐路に立っている。

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母のこと

母のこと

どうしてなのか、わからないのだ。
演劇をやることのどこに
母の死を乗り越えられる理由があったのか。
わからないままだ。

勿論哀しくないわけではない。
思い出すことも沢山ある。
でも公演の前と後では全く変わってしまった。
自分自身の心が。
それがはっきりとわかる。

何かを排出し
生まれ変わる。
そのような感覚が少しあったように思う。
古い皮膚が剥がれ落ちて
新しい桃色の薄い皮膚が張ってくるように

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続ける、ということ

続ける、ということ

久しぶりの舞台復帰を終えて
今思うこと。
こんな苦しいことを
10年もやっていたのかー!っという
他人事のような驚き。
そんなにも好きだったか…という気づき。

ここから、また演劇を続けることは
簡単ではない。
わたしはかつてプロの俳優だった頃
結婚しない、子供を持たない
宣言をしていた。
演劇というものが、他者を排除する
時に傷つける構造だということを
理解していたからだ。

わたしなら、女優の

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ひっぱられる

ひっぱられる

演劇には遠心力があるのだ。
しみじみそう思う。

一度触れてしまえば
ぐるぐる回る銀河鉄道にでも乗ったかのように
降りることが難しくなる。
大体次の停車駅がどこなのかさえ不明だ。

でもこの鉄道の友人となり
永い旅を続けていきたいと願うのならば
時刻表と路線図に
誰よりも精通しなくてはならない。

身を捧げ、鉄道そのものとなる
あるいはもはや、宇宙そのものとなる
そんな生き方は
わたしはもう選ばな

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誰かの幸せが

誰かの幸せが

誰かの幸せが幸せなのだと気づく。
そんな1日だった。

先週は自分の舞台の本番だったけれど
今日からは先輩たちの本番である。

新しい集団に出会って
ほんとうにずっと良くして頂いている。
皆さん優しく、謙虚で、ユーモラスだ。

自然と、何かお返ししたいと思う。
支えて頂いた分、支えたいと思う。

裏方として、お手伝いさせて頂く。
出演する俳優さんの緊張や悩みを
ほんの少しだけ感じる。
それでもカー

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なぜ生きるか

なぜ生きるか

いつも思う。これは何なのだろうと。
芝居は祭りだ。あっという間に消える。
あんなに長い準備も苦しみも
公演が終われば跡形もない。
何のために、そこまでするのだろう。
なぜ自分は俳優でありたいのだろう。

わたしは母が死んでからずっと
本来の自分ではなかった。
それは認めなくてはならない。
もう人生が半分終わったような気がしたし
それも仕方ないことだと思っていたのだ。

たった一度芝居をやっただけだ

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4分の3

4分の3

トラウマを克服すること。
それが今回の目的だった。

完全に入っているはずの台詞が
出ないと思い込むこと。
ちゃんと出来ているシーンが
空間が歪んでいるかのように
突然不安定なものに感じること。
ただ静かに観ているだけのお客様が
退屈しているように感じること。

そういう「弱い気持ち」
「自分を信じられない自分」を
克服したかった。

かつて、それに内側から押しつぶされ
外側からはいじめ抜かれて

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わたしに出来ること

わたしに出来ること

準備がすべて終わって、あとは本番を待つばかりだ。
こんなに時間をかけさせてもらえたこと、はじめてかもしれない。
心が穏やかだ。

母は、悔やんではいないかと心配だった。
道を誤ったのではないか。
もっと他に、助ける方法があったのではないかと。

芝居の稽古を通して、母は死んだのだとわかった。
悩んでも上手くいっても、もう話すことは出来ないこと。
母はもうこの世にはいないこと。
母といた時間は、すで

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言葉が語り始める

言葉が語り始める

簡単だ、と思うことがあるのだ。
このまま大きく声を張り上げれば
感情に溺れて泣いてしまえば
わかりやすく芝居らしくなるのだ、と。

わかっていて。
でも、それは作品の品格を落とすから
やめなさいと諭された過去を
懐かしく思い出す。

そこまでしなくても、お客様はわかる。
役者が思うより、お客様は聡明なものだ。
預ける芝居が大切だと
かつて尊敬していた人に教わった。

その約束を守っていると
世間的

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奪う側

奪う側

オッペンハイマーの映画が好評だということだ。
ずっと原爆投下を悔やまない姿勢のアメリカの
態度の軟化が見てとれる、などという記事を
いくつか読んだ。
ヒロシマ・ナガサキでも上映されたのだという。
日本の映画監督がこの作品に対して
アンサーになる映画を日本でぜひ作りたいと話していた。

どれもこれも、悪いことではないのだろう。
きっと…
何かの前進だと好意的に受け止めるべきなのだろう。

でも、わた

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