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それでも人生にイエスと言う

悪魔的なものがこの世にあるとしたら
それを見たことがあると
確かに言える

子供の頃家中の床が
ガラスの破片だらけになり
足の指を切ったこと

わたしを愛した人が
いつかわたしを埋めてしまう為の
穴を掘っていると
気づいたこと

どの瞬間も
わたしは上手く
悪魔を祓うことが出来なかったのだ

わたしは若く未熟で
まだ人生の指針が定まっていなかった

「優しさ」という名前の
可能性と隙を
まだ残しながら
「優しさ」と「弱さ」の違いを
まだ線引き出来ずにいたあの頃

子供の頃なら
元気いっぱいのお喋りな自分
俳優時代なら
舞台に立つことが
1ミリも恐くなかった自分

そういう自分を失うことで
わたしは悪魔と対峙することから
どこか逃げて来たのかもしれなかった

舞台への恐怖
自分を否定されることへの恐怖
自分を信じられない
自分の中に入り込んだ悪魔

わたしは今この年齢になって
そんな青い課題に
真摯に向き合ってみたいと思っている

わたしを愛した人は
愛と同時に憎んだと言った
わたしの才能が
恐かったと言った

今ならそれもまた
「わかる」ような気がするのは
きっと弱さでも逃げでもないのだ

恐くていい
わたしもまた恐いのだ
わたしは…
自分に才能がないことが恐い
ないとわかっているから
震えるほどいつも恐怖する

偽善でも何でもない
わたしとその人の道は異なる
わたしを恐れた人も
わたしを妬んだ人も
わたしの恐怖を嘲笑った
偽善と嘲笑った

でも違うのだ
わたしには
本当のわたしが見えているから

才能がないことを知っているから
だから…
歩いてきた道でしかなかった
ずっと…

悪魔よ
わたしはあなたの前で
笑ってみせたいと
ずっと願って来た

芝居の再開は
その為の試みだ

元気いっぱいで少しバカで
変わっていておっちょこちょいで
心臓に毛が生えている
そんな自分は必ず
わたしの中にすべて
当時のまま残っているのだから

失った
わたしは確かに

でもそれでも
わたしは人生にイエスと言う
芝居にイエスと言う
悪魔にイエスと言う

そして超えてみせたい
笑うことは勝利であり
祝福だ

再びの旅はまだ
始まったばかりだ

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