Chie_Matsui

本業は美術家です。絵を描いたり写真を撮ったりしながら、時おり文字を書いたりします。 日…

Chie_Matsui

本業は美術家です。絵を描いたり写真を撮ったりしながら、時おり文字を書いたりします。 日々の戯言から、活動中に書いた文章や推敲中のものなどをここに掲載していきます。 どうぞお楽しみください。 https://www.chie-matsui.com/home/

マガジン

  • 今日の戯言

    ふと思いをよぎることを、メモのように気楽に書いています。

  • 展覧会の扉

    noteでも自分が参加、出品している展覧会や、気になる展覧会をお知らせしようかなとマガジンを作りました。

  • 人生上等

    「どうして期日前にならないと、制作できないのか」 自分に甘く他人に辛くを戒めるべく、日常のさめざめを呟きます。

  • 絵の仲間とスケッチブック

    主に個展に向けて、「絵の仲間」たちの制作をしながら、呟いたりメモを書いたりします。

  • 手紙「桃源郷通行許可証」

    発表する時は、画廊や美術館、その場に関わる方々と今やメールでのやりとりがほとんどになりました。フォルダーの中に埋れてしまいがちな、思いを書いていきます。

最近の記事

「最終日駆け込み鑑賞」

 師走に入った最初の土日は、あちこちで秋の展覧会の最終日だった。 コロナが五類に入り、各美術館や博物館の力を込めた秋の催しが、いよいよ入れ替えになる時期である。始まった頃はまだ暑く、薄い布の服を着ていたのに、この日曜日は薄いダウンのコートを引っ掛けて、見逃していた二つの展覧会へと早朝から向かう。  紅葉真っ盛りの日曜に京都へ向かうには作戦が必要だ。まず、九時半から開館している京都国立博物館(以下『京博』)の「東福寺展」へ。八時台にもかかわらず、京阪特急はいそいそと乗客が乗り

    • 「師走の会議」

         京都市立芸術大学の移転記念事業として、「芸術と社会・国際会議」が12月9日、10日の二日間にかけて、京都市京セラ美術館の講堂で催される。「表現の自由と倫理」という昨今浮上する事象について国内外、とりわけポーランドを故郷とする研究者による、専門分野の発表となる。 https://www.facebook.com/events/1232805474065512  この講座に参加するならば、ポーランドの第二次大戦前後、あるいは中世以降の中欧の歴史における宗教、民族、地政学的な

      • 三都物語

         十一月も終わりに近付いた今日も、すっかり空は青く晴れている。 このひと月間は風邪や声の変調、飼い猫の避妊手術と、必要以外の外出をしていなかった。そろそろリハビリウォークをして、行動範囲を日常に戻さねば、このままでは引きこもりになってしまいそうだ。  という訳で、奈良駅近くに用事があった昨日は、行けるところまで足を伸ばすことにした。最寄りの便利な鶴橋駅から近鉄の快速特急で始まり始まり。平日午前の早い時間にもかかわらず、混んでいる。あわや座れないところ、優先座席を譲っていただ

        • その人の文字

           彫刻家の先生の手書きの字は、ミミズが書いた素描のようだった。   出だしを「こんにちは、午後も少しだけ頑張ってください」というふうに書き換えてみた。いつもの投稿ページは「こんにちは、午後も頑張ってください」とある。「少しだけ頑張ってください」というのは、先日87歳で亡くなった彫刻家の先生が、葉書に書いてくれた言葉だった。先生は、学校で教えてもらったというわけではない。たくさんの先生に教わったが、制作を続けることを、近くで見せてくれた作家であり恩師だった。私はミクストメディ

        「最終日駆け込み鑑賞」

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        • 気儘な箱入りエッセイ
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        記事

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          音と声

           先週末から風邪をひいてしまった。熱はほとんどなし、食道は痛くもならないから、ご飯もいただくことができる。ただ顔の内側、身体が外気を入れて吐き出す管が全部炎症を起こしていた。コロナではなかったもののインフルエンザのような感染症だった。声帯と気管支の炎症で声が出ない。  コロナが5類に入ってから、マスクもすっかり忘れ、雑踏から帰宅後のうがいも疎かに、暑くて乾燥した10月を無防備に過ごしたのが、原因かと思う。汗をかいて冷えてしまったり、薄着で自転車に乗ったりと、チグハグな毎日を

          水曜日の旅路

           久しぶりに、奈良町界隈へ出向く。  最近、近鉄電車は各停以外は満員に近く、座ることができない。 先日から強めの風邪をひいていたので、電車はやめて久しぶりに、確実に座れる車で東へ向かう。  午前10時半頃には、もうすでに歩道は観光に向かう人たちでいっぱいだ。 昨年の今頃は、考えられなかった光景。コロナによる制限がかかる前よりも、大勢の人が訪れている。  雲ひとつない奈良の広い空に広い公園に鹿。電線が空を覆うことがないだけで、こんなに違うものなのかと思う。一方で、ビルを建て

          水曜日の旅路

          大晦日

           昨年は、29日まで展覧会の展示作業で遠方にいた。そう思うと、今年は12月中旬までに二つのグループ展が始まり、気が抜けたようで、その後の制作は「今日の一枚さん」だけになっている。なんとムラのある生活なんだろうと、思っていたがどうやらこれは自分の性分なのだと、干支の5周目を目の前にして気づいたことが本年の収穫か。  11月は突然のカンファレンスに参加のために、作品について言葉で多国籍の人々に、伝える機会があった。  同時通訳できる日本語に置き換えることを前提に映像作品を見せ

          10年前の10月27日

           私のSNS歴は結構長い。最初はブログのアイコンのアバター着せ替えとかが結構楽しく、チャラチャラと作っていた。ブログは全く美術とは関係のないことばかりで、主にフィットネスクラブの話ばかり。多分40代後半の頃だと思う。美術の話は、mixiか誰も知らないtumblerなどにこそっと書いていた。  東日本大震災の時に、瞬く間にtwitterやFacebookが広まった。SNSは災害や苦難の時に、お互いの情報を得るのにとても有効なツールとなっていった。 その前の阪神淡路大震災の時は

          10年前の10月27日

          長沢芦雪の絵

           寒くなったり、暑くなったりの10月も終わりに近づいてきた。  テート美術館展の内覧会にと、久しぶりに中之島美術館へ足を運ぶ。 7万7千点近くのコレクションを持つテート美術館、そこから「光」をテーマに120数点近くの作品が世界中を巡回。その最終地点の展示となる。  内覧会に出席しているのは、広報や協賛企業の方々がほとんどなのだろう、地味な感じである。スーツ姿の年配の男性が多い。テートの展覧会担当責任者やブリティッシュカウンシルの方はスマートな女性。平日のお昼間になかなかフ

          長沢芦雪の絵

           ”mirror(鏡)-mirage(蜃気楼)” その二

           「鏡を貸してくれ。もし息で表が曇るなら,それなら,これは生きているのだ」  狂乱に陥った悲惨なリヤ王が最後に吐くこの一節は、作品の中で「鏡」をつくる時に、私の背後から役割りを与えてきました。  先日「鏡に絵を見せたい」と私が言ったときは、「訳ががわからない」といった雰囲気が漂っていましたね。皆さんがポカンとされていたような感触がありました。違っていますでしょうか。  鏡に絵を見せることは、リヤ王における生存確認とは異なります。しかしながら、鏡は人が用いるゆえに、愛憎の対

           ”mirror(鏡)-mirage(蜃気楼)” その二

          秋の戯言カラスが言うよ

           ふと京都芸術センターからのメールを開けてみたら、京都国際芸術祭・「KYOTO EXPERIMENTAL」が先月末から始まっている。 https://kyoto-ex.jp/  この催しはずいぶん昔からあったような気がする。2010年ごろだったかな。ホームページを見ると、フリンジの演目も結構多いなあ。暑さがおさまる頃は、あちらこちらで蟲たちが蠢く。 実験的なものがKYOTOには、伝統として転がっているらしい。チリンチリン、コロンコロンと音をたてて。  2009年、フェステ

          秋の戯言カラスが言うよ

          マスターピース

           明日から、AMBIENT KYOTO 2023が始まる。 期間は10月6日金曜より12月24日日曜まで。 2年目の今年は、展覧会、ライブ、朗読など様々な催しが行われる。 詳細は、以下のホームページをご覧ください。  朝、10時台の特急は学生たちも多く満員に近かった。ダブルデッカーの2階、偶然空いていたところに腰を落ち着けた。三条で地下鉄に乗り換え、地下鉄烏丸丸太町の東南7番出口で降りる。  出口は京都新聞社に直結していた。故坂本龍一さんと高谷史郎さんによる作品 "asy

          マスターピース

          『死の教室』上映会のお知らせ

           10月16日(木)16:30から18:00まで、京都市芸の新しい校舎で、「カントルの「死の教室」上映会が行われます。なんと関口時正先生による解説付きです。かなり綺麗な状態での映像上映になることと思います。ご興味がおありの方々、どうぞよろしくお願いいたします。 ・京都市立芸術大学 新校舎C棟1階講義 ・主催 加須屋明子研究室  参加費無料 【申し込み】https://onl.tw/GuCYBiP 【お問合せ】 加須屋明子研究室 kasuya@kcua.ac.jp  関口時

          『死の教室』上映会のお知らせ

          「おもいだせない、おもいだせない」

           おもいだせない、おもいだせない。あれらは記憶のどこにあるのだ?混濁した精神を引っ掻き回してみても、でてくる気配がない。だめだ、あれらは記憶されなかったのか?それとも「おもいだす」事がふさわしくないのか?10月17日土曜日に起こったあれらは、まさに「記憶」についての語り部であり、芸術の領域を拡張した二名のポーランドの芸術家についてのレクチャーだったはずだ。  おもいだすのが困難ならば、もう一度追い求めてみるべきか。催しの合間に流したグレツキの「古い形式による3つの小品」の音を

          「おもいだせない、おもいだせない」

          へるんさんに会いに

           会期も終わりに近づいた雨の日、松江の小泉八雲記念館を訪ねた。自分が出品している展覧会「怪談」を、見るために。 https://www.hearn-museum-matsue.jp/exhibition.html  小泉八雲記念館は、人が住む家くらいの大きさだった。企画展示も常設展示の一角にあり、最初は思ったよりも小規模な展示だと感じた。ここは美術館ではなく、ごく私的な空間だと思えば、小さいものを愛しんだ八雲の常設展示とよく調和した、落ち着きがある。和やかな雰囲気の中で、じ

          へるんさんに会いに

          私はシルバー

            自分の仕事に密接な展覧会の展示や表現物に、一番反応するのかなと、この数日で改めて気づいた。仕事のようで遊びのようで、一般の会社勤務の感覚でもなくずっとプロジェクトは終わらない。今日は連休の最終日だから、近くで散歩のできるところへ行って帰りにスーパーで日用品を買っておこうと、車で15分ほどの長居公園へ出かける。  長居公園の中には、30年前に建てられた大阪市自然博物館がある。 https://www.omnh.jp/ 調べてみると、夏休み企画の『恐竜博2023』が開催され

          私はシルバー