「青蓮丸西へ、その前のお話」
風がヒューヒューという音から、ごうごうという音に、急に変わりました。「シロや、海の上の風は上からも下からも、右からも、左からも吹いてくる。お前は寒くないのかい」「私は、北の国生まれなのを、ご主人はお忘れになって。それより、お身体に触ります」。と、シロは、フカフカのお腹で、ご主人の身体を隠して温めました。
青蓮丸は、舟を操るのが、上手でしたが、寒さにはかないません。「うさぎのチョッキを、阿倍野の原っぱに、忘れてしまったよ」澄みきった海が、みるみる鈍色に変わっていきます。舟