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「置き去られた鏡」展

明日から、いよいよ個展が始まります。

 ほとんど展示が終わった会場に収まった作品は、今日までは私が独占して見ることができます。今は一番贅沢で、緊張が抜けてきた時間かもしれません。展覧会がいざ始まると、観客の視線に作品は耐えなければならないのです。

 昨年の八月頃から、会場になるギャラリーノマルの工房で作り始めた、モノタイプの版画。最初は月に二回くらい通ってテストアンドエラーを繰り返しつつ、秋を過ぎて冬になった頃には、月に4回工房人入り、今年に入ってからは、週に二、三日工房でこもって作る生活になった。

 暑い夏に始めた頃の初々しい作品は、季節と共に変わり、最後はもうこれ以上絵を描きたくないという気分になっていた。あえて数えていなかったが、今手元にある作品リストを見ると、小さいサイズのものも入れると、玉石混交100枚近く紙片ができていた。
 
半年で100枚というのは、ドローイングとして考えるとそう多い数字ではない。ただ今回に限らず、私は飽き性で、シリーズものを作ることができず、一枚づつ完結した絵になる。版画の技法を使っているので、一枚に対してネチネチと何日もかけることはできない。偶然性も加味されるので、長くて一枚に40分くらいだろうか。考える前に描くと言った具合に作り散らかした。

 それらをずらっと並べて、展示するために展示期間に入った先週初頭は、しばらく呆然としていた。
 これらをどのように見せてゆけば良いのだろうか。途中で書いた文章や詩を間に挟み、ありもしない架空の場所を会場内に設定することにした。地図らしき作品が終わりの方に自然と出てきていたので、それに導かれるように。
 絵が刷られた紙は饒舌だ。饒舌すぎるとも思った。
それなら、絵と同時に書いた一つの詩を三カ国後で読んだものを重ね合して、天井から聞こえるようにセットした。雑音も含めて鏡に乱反射したような人の声が会場を別の場所へ誘ってくれるように。

 久しぶりに大阪のギャラリーでの展覧会です。
入場料など要りません。もし、恐る恐るご興味のある方は、一度足をお運びくださいませ。町工場の面影が残る中に全くモダンな空間が現れます。

・松井智惠「置き去られた鏡」モノタイプ版画の新作展覧会です。
場所:ギャラリーノマル

2024年3月23日(土〜4月20日(土)(定休日・日曜)*最終日4月20(土)のみ18:30閉廊 営業時間:13:00〜19:00
問い合わせ及びアクセス:https://www.nomart.co.jp/about/access.php・最終日4月20日(土)は、クロージングライブ/MIRRORがあります。


©︎松井智惠               2024年3月22日筆



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