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音像

 このところ、大きな展覧会にかまけてギャラリーの展覧会を忘れている。人との付き合いも、大きな集まりやSNSの追い打ち広報に目を取られ、自分が大切にしているものほど、最後尾に回って忘れてしまうことも度々ある。仕事とプライベートが分かれているのかいないのか、考えても仕方がない。

 作品は、誰かのためだけに作るものではないので、境界の形は常に変わる。長年お世話になっている映像作品の編集長よりおすすめの連絡が来る。久しぶりの映画館。

音像と端正な映像は、実在したこと、かつてそこにあった場の情報ををアーカイブした作品ではない。作品化する前段階での綿密な調査が秘められていることで、なんともおそろしい物語を作りえたのか。

しかし、目新しくない映像技法をとことん駆使して撮影した素材から、編集で作り上げるという方法で、まだまだこのような映画を作ることができたことが驚きである。HEIDIは塀を乗り越えたが、この映画の塀は乗り越えることは決してできない。

ミカ・レヴィの音楽・音響は映画館でないと感じることができないので、それだけでも、mp3で緩んだ身体を目を覚ますことができるだろう。

ジャミロクワイのPVを思い出す人も多い、ジョナサン・グレイザー監督恐るべし。

DVDになっても見るかどうかわからないので、もう一度観に行きそうだ。

©︎松井智惠               2024年6月5日筆


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