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Poetry does not die

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Seiji Arita HP

初期の頃からの過去作品を中心に 公開しております 見て頂けたら幸いです

    • シングルモルト 《詩》

      「シングルモルト」 それぞれの森には それぞれの匂いがあって それぞれの海には それぞれの匂いがある 森ではキャンパー達が 焚き木台を囲みフライパンを手に 夕飯を作っていた 海ではウクレレを持った人達が 集まり唄を歌いながら 夕陽を見ている 僕は税関を抜けて空港を出る 一連の過程が 静かに音も無く通過して行く 意識の中で創り出した世界から 現実の世界へと戻る様に 其処にある目には見えない壁を 通り抜ける様に 其の街には前向きで 無反省な風が吹いて

      • アフターテイスト 《詩》

        「アフターテイスト」 ウィスキーの染み込んだ様な 彼奴の言葉と声が大好きだった 愛想の無い雑踏に紛れた 街並みを抜け出し横須賀まで 木陰に停めた   VW タイプ3 ファストバック   荒涼とした海原が見える場所  其処には水平線と空が 交わる一本の線と 風にゆっくりと流されて行く雲が居た 祝福の陽射しは例外無く 彼奴の海にも降り注ぐ 海辺のカフェで誰にも邪魔される事無く 僕は本を読んでいる ドフトエフスキーの 「地下室の手記」 村上春樹の 「約束さ

        • 夢を見る様に 《詩》

          「夢を見る様に」 詩を書く事は夢を見る事に似てる 絵を描く事も夢を見る事に似てる 写真を撮る事も夢を見る事に似てる そして  夢を見る様に 貴女の事を想う僕が居る 小さな願い事  ひとつひとつ 書き留めた 想像と幻想の間に 観念の句読点を打つ 妄想の辿る道筋の果てに  夢と現実が向き合い成立している 其処にある魅惑の引力を 確かに感じていた 花を育てる様に 大切に僕は 其の聖域を創り上げていく 僕の一部はいつだって其処にあり いつだって貴女を感じ

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        Seiji Arita HP

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        記事

          岸辺の楽園と花束と 《詩》

          「岸辺の楽園と花束と」 花束を持って来たよ  貴方が何の花が好きなのかは 僕にはわからない  とにかく沢山の花を持って来た 夜の端っこで夢を見たんだ  ありもしない夢を見た 離れて行く人と傍に居て欲しい人 何もかもが上手く行かなくて  心を隠して笑ってみせた 僕の言い訳すら聞かずに 消えた貴方と 優柔不断に時をやり過ごして来た僕は ポストモダンの岸辺で ダイハードな楽園を創り続けていた 神様の教えの光に似た 必死の懇願を蹴り倒してまで 其処は僕等に

          岸辺の楽園と花束と 《詩》

          微風 《詩》

          「微風」 手放せないものを抱きかかえたまま 戻れない時の記憶を 胸の奥に閉じ込めた 描いていたのは 未来 君の姿 輪郭を鮮明に指先でなどれば  不明瞭だった僕の約束が 想い出の場所で泣いているのが見えた いつしか 許せない事ばかりが増えてゆき それでも これで良かったんだと  昇る朝日に言い訳をする 弱音は歪な線を描き  今日に溶けて消えてゆく 伸ばされた君の手すら掴めずに 痛みを殺し虚像を黒く塗り潰した 微風に揺れる小さな花に 言えないままの言葉を

          微風 《詩》

          彼女は息を吐く様に嘘をつく 《詩》

          「彼女は息を吐く様に嘘をつく」 適正存在者の中に紛れ込んだ 不適正な人間が 無益な思考と妄想を繰り返す 僕等は嘘を掻き集め  仮説を積み上げ物語を描いている 其処には費用対効果や生産性は無い 白か黒で裁く世界  理論武装と結果論 不要な単体  無用な言葉狩りが続いている 好きにすれば良い  生まれたての挫折とプラスチックの 玩具を抱いて眠る夜 愁に染まる午前一時 反逆の星 酔夢の中  既成の壁を打ち破る聖霊の拳 沈黙の瞑想 毒された月の電光 暁に

          彼女は息を吐く様に嘘をつく 《詩》

          告白に失敗した猫 《詩》

          「告白に失敗した猫」 より深く根付いた悪  堅く地殻的で意図的な塊では無く 流動的で本能的であり  地表に噴き出す溶岩の様な 致命的な悪を求めている 其れは方向性の違いなど 全く意識しない 選択肢も無く  まるで我々こそが全ての 正論であるかの如く 存在するものを現存する 全てを飲み込んで行く 突撃と玉砕  頑なまでの意志と決意すら溶かして行く 悪や溶岩は一種のメタファーに過ぎない ドフトエスキーに溺れていた頃の 僕の恨みや憎しみが  そして怒り

          告白に失敗した猫 《詩》

          森の妖精 《詩》

          「森の妖精」 見たく無いなら目をつぶればいい 聞きたく無いなら耳を塞げばいい 言いたく無いなら口を開かなければいい 這い上がって来れないのなら そのまま沈んでいればいい そして何もしないまま  勝手に幕は降りて行く  今の君には お似合いだ 大切なのは自分でしたい事を 自分が知っている事だ いいかい 今から  僕が君をさらって行くって言う 遊びをしよう 行き場所は僕が決める  其れが嫌なら君が決めなよ 何処でもいいんだ  好きな場所を想像してごらん

          森の妖精 《詩》

          パティシエの恋人 《詩》

          「パティシエの恋人」 痛みと引き換えに僕等は 大切なものを手に入れている 1本の線の様に図表的に 時間は並んでいる  そして保留無く過ぎ去って行く 過去を悔やんだり 未来に不安を抱えたりしながら 僕だって一緒だ 色彩に彩られた 洋菓子に魅せられた人 全ては善と悪のバランスなの 悪しき物語と善き物語と同じ様に そう パティシエの恋人は僕に言う 彼女は僕の書いた生産性の低い詩を 何度も読み返して 意味を理解しようとしていた 僕は意味なんて無いよ結論も無

          パティシエの恋人 《詩》

          恐竜の森 《写真》

          Photo : Seiji Arita

          恐竜の森 《写真》

          彼女はレゲエしか聴かない 《詩》

          「彼女はレゲエしか聴かない」 一晩中降り続いた雨が 何も無かった様に止んだ朝 近づいて行く様で遠ざかる夢 色褪せた目の前の景色でさえ 愛して行くと誓うから  僕は声に出してそう言った 誰に わからない  遠い記憶の中の 自分に言ったのかもしれない 何処からか聴いた事のある レゲエミュージックが聴こえて来た グラマラスな彼女は 「秘密の花園」と言う詩を書いて 僕に朗読してくれた 濃い目のロマンチックが夕陽の様に 僕の意識の中に映し出された 僕は「死

          彼女はレゲエしか聴かない 《詩》

          モンブラン 《詩》

          「モンブラン」 ひとつの生き方を提示する様に 月の周りに虹の様な輪が見えた 何年も前からの 夏の幻影を見ている様だった 無価値で道徳心の欠片も無い 侮蔑された夜に月暈とは… 今夜は幸運が降り注いで来る予感がした 僕等は車のトランクに バールとハンマーを入れて 目的の場所に向かっている ヒールのかかとが取れかかっていた 新しいヒールが 欲しいと言っていた彼女は  靴屋に行って  あれこれ見回している  結局 ヒールは買わずにナイキの スニーカーにする

          モンブラン 《詩》

          STAY GOLD 《詩》

          「STAY GOLD」 僕等は夢の中で生きている いつも どんな時でも一緒だった 本当に不器用だよな お前は  わかってるよ 機械的に暗記された即効性と 功利性志向に塗り固められた壁が 押し寄せて来る 其処には数値化された結果重視の 硬直性が澱み無く立ち塞がる 熟成した社会における例外は 致命的な悲劇であるかの様に評価され 其の人間固有の抱える 構造的な欠陥であり 社会構造内にある責任は不在である そして意図的に人目から隠蔽される 僕等の矛盾はそのまま

          STAY GOLD 《詩》

          スリム•シェイディ 《詩》

          「スリム•シェイディ」 本物のスリム•シェイディは 立ち上がってくれよな ごく普通の俺なんて 誰も見たくないだろう だから俺は奴を創り出したんだ  偽物なんかじゃ無いぜ 本物のスリム•シェイディさ 模倣するのはやめてくれ 赤い口紅が唇からはみ出してる  其処のお前 お前が最初にフェラした男の 名前を教えろよ サイコパスとかジャンキーだとか 窓の無い部屋だとか 毎日 薬の数だけが増えて行く サンドイッチに挟んで生温い珈琲で 身体に流し込む 俺が図書室

          スリム•シェイディ 《詩》

          反社会的文士 《詩》

          「反社会的文士」 特に希望も無く絶望も無く 目の前にある景色を見ていた 僕が世界を無視するのと同じ様に 世界もまた  僕を無視し続けている 何も無いところから 架空の物語は生まれる 内的な衝動が形像を 立ち上げて行く 反俗的な理想像 破綻と混沌の中で文学を生み出す 反社会的文士 僕等は意識の足元の深い底にある 寡黙な闇に降りて行く 誰もが其処に混沌を持つ 脈略を欠いた記憶の断片を 拾い上げ言語化して行く いつかは其の記憶も自然淘汰される 琥珀に沈ん

          反社会的文士 《詩》