seiji_arita
初期の頃からの過去作品を中心に 公開しております 見て頂けたら幸いです
「やるせない月」 中空を静かに ゆっくりと滑り降りる月 水の無い死んだ噴水 僕はマッチの炎の中に 夢を見ていた 少女の物語を思い出した 彼岸花が無表情に 夜空を見上げて 風が止んだ 取り止めのない夜 やるせない月 離れて行かなければいけない訳 上手く言えない伝えきれない 言葉にすれば
「星影」 風と月 目覚めた華は夜に舞う 瞳に灯した消えない光 星影降る夜に耳を澄ませば 君の扉が開く音が聞こえる 僕等の約束は永遠となり 月は囁き 風は詠う たとえ命に限りがあるとしても
「マリーゴールド」 窓から射し込む秋の太陽が 薄い光のベールを作りだす 彼女の膝元を 柔らかく包み込む様に 窓の外の光は 静かに地面に降り注ぎ 花壇のマリーゴールドが小さく揺れていた 僕は窓を開け放ち 外の空気を部屋の中へ入れた 彼女は 読みかけの小説に栞を挟み バックの中に納めた 彼女を抱き抱えて 玄関脇の車椅子に乗せた もういいよ 離婚しても もういいよ いつも彼女は そう僕に言う 本当にラッキー やったね 独身だぜ いつも 僕は彼女に
「流星の詩」 残されたものは ただの記憶 流星の詩 それは時が経つほど 美しく強くなってゆく 誰かを愛した記憶は 数値化出来る訳でも無く 不正確なロマンチシズム だけど其処にある 直ぐ傍に気付きなよ 研ぎ澄ました感覚 ほら扉が見えて来る 愛する者を愛し続けた 真っ直ぐで綺麗な思い出 覚えてるかい 透き通っていた朝を 夢を見たんだ 忘れないさ
「白い羽根」 どんな僕が君の瞳に映っていますか 大切な時を大切な君と 手を繋いだ約束 嘘じゃない 何も言わずに僕の傍で 伝えたい時 会いたい時 目に映る景色 想う全てが君色に変わる 紙とペンを持って 君の為の詩を書いている ふたりだけに見える 丘の向こうに 白く綺麗な羽根が 舞っている見えるかい 目が合って微笑んだ 少し背伸びして僕に触れた 小さな吐息 近づいて この言葉が届いたなら 今夜 僕を抱きしめておくれ
「不死鳥」 時の檻 繋がれた鎖 呪縛 天高く舞う不死鳥 お前が囁く 刻まれた記憶の中で 研ぎ澄まされた感情 胸に抱き 孤独を彩る 幻覚に口づけて拾い集めた最後の涙 今も息づく解き放たれた想い 俺の身体を貫く 傷ついた心 濡らす雨 麻薬に似た眠りの中 何かに追われる様に書き殴る 燃える血を吐き出し乱れ飛ぶ 想いは朝を迎えて序章となり 物語は始まる
「逆風」 「書いて死ね」 「殺しに来たぜ」 「愛の詩」 「ダイヤモンド」 「狂人」 「彼女は死んだ」
「ジンビーンズと死にたがりのあの娘」 悪いのは全部 俺のせい そう言う事にしときなよ ジンビーンズ片手にジーンズの裾 引きずりながら歩いた 風邪をこじらせた野良猫 メヤニだらけの目 遠くを見てる 死にたがりの あの娘 地球の自転に合わせて抱きしめた 地軸が少しズレ始めた 気づいてるのは俺ひとり あの娘はきっと海を感じてる ありもしない海を Tシャツの胸元に 引っ掛けたサングラス 白い胸元に夢を見た 愛してくれないか 終わりが来る前に
「なにもかも」 小さな星の小さな光を手のひらに受け 貴女の頬に そっと添えました 全ては上手く行くよ いつだって僕にそう言ってくれたね 道路の両側に続く深い森 ぼんやりとした昔の記憶 優しい記憶 黙って僕を見つめていた 小さな星は今も正しい位置にある ズレ始めた世界の中で 数えきれ無い夜 なにもかも
「ふたりの旅」 救いになるのは金なのだろうか それとも金に似た愛なのだろうか 酷似してはいるが全く違う 満たすと言うところは 同じかもしれない 外面的であるか 内面的であるかに過ぎない 随分と長い時間が 過ぎて行った気がした 俺はサングラスをかけたまま 真夜中を見ていた 煙草を吸い終えたら旅に出かけよう 逃げるんじゃないさ 弾き出されただけさ 俺もお前も 誰もがいつも 満たされてなんていない お前は静かに囁いた 帰る場所があるから 人は帰りたくな
「スコール」 ドーナツショップのカウンター 穴が開いてるから 可愛いんだよねって ドーナツの穴から僕を覗いた 茶色い瞳が笑ってた 駅ビルの旅行代理店の前で 南の島のパンフレットを眺めた 前に首里城に 行った時の事を思い出していた いきなりのスコールで ずぶ濡れになって どちらが雨男なのか雨女なのか そんな話しをしたよね サーターアンダギーとか海葡萄 ブエノチキンとかオリオンビール 今でもハッキリと覚えてる だけど もう夏はうまく思い出せない
Seiji シド Seiji collaboration : シド ⭐︎thank you my friend⭐︎
「窓の外の初秋」 ホテルのバー カウンターのトロピカルドリンク 灰皿の上で ゆっくりと燃え尽きる煙草 ノックされる事の無い 扉の音を聞いて 鳴る事の無い 電話の音を聞いていた 「Tell Me」… ミックの声が聴こえた こんなに沢山の人が居る世界で 僕が電話をかけられる人は ただひとりだった 窓の外の初秋が それを拒んだ 季節が 変わってしまった事を思い出した
「草原」 天国の住所と 神様の電話番号を聞いた 何故って… 街が 淡い藍色の闇に包まれて来たから タイル張りの歩道を 歩く女のヒールの音 風にスカートが揺れていた 知らない女の脚に見惚れてた 歓楽街の真ん中で 静かに瞳を閉じて 心の中に草原を描いた 色の無い空間に色彩が宿り 優しい風が吹いた 僕は神様に電話をして 一言だけ告げた 本当の友達を探していると 本当の恋人を探していると
「魔女裁判」 奇妙で強度な幻覚の中 全ては凝縮され極めて 狭い選択肢の中で 決断を迫られた感覚に似てる 情報と自由と裏取引 世界には敵となる象徴が必要だった ただ それだけの事 そして今も魔女裁判は続いてる 葬り去られた幾つもの真実と想い 理論的には死んだはずの言葉が 今でも人々の心の中に生きている 狂っているのは私じゃない 境界線の先 瓦礫の墓地 彼女の最後の言葉だけが残った