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45回転のアドバイス 《詩》

45回転のアドバイス 《詩》

「45回転のアドバイス」

世界を憂う優しい言葉とか

甘く溶ける様なセリフだとか

君と手を繋いで
並んで歩いた事だとか

狂いそうだぜキャプテン

破滅的デザインを施された街に

限りなく醜悪な看板が立ち並ぶ

其の空間は想像力が
想像力である事を停止し

放棄している様に見えた

吐き気がする様な

キャラクター構成の一端が押し寄せて来る

45回転のアドバイス

いつも同じところで針が飛び

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美しく燃えた月 《詩》

美しく燃えた月 《詩》

「美しく燃えた月」

想いはいつも途中で途切れて 

君の偽物の微笑みと

僕の嘘を合わせ夜空に月を浮かべた

情熱とか純粋とか 
大切な言葉だとか

出来るだけ沢山集めて手を繋いだ

君の迷いと言い訳と 
言葉足らずの僕の詩と

ふたりで話した内緒の未来

風に抱かれた夜の中

本物と言われるまで突き進めば 

其れは本物になる

そう言ってくれたのは君だけだった

僕の事なら心配無いよ 大丈夫

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神と毒薬 《詩》

神と毒薬 《詩》

「神と毒薬」

狂えば狂う程 潤う思考の泉

断片的に あるいは集積的に
麻薬的信号を読み取る事が出来る

其の無音の文体に特別な響きを聴く

ある種の制度の相関性により

制限された言語に自立は無い

そして僕は誰よりも上手く
自分自身を偽り続ける

闇を背負う手探りの真夏の午後

惰性的な性交 
怠惰な愛撫と無造作な接吻

僕は独り夜の匂いを探している

君の両腕に神の力が宿るなら

世界の理

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線香花火 《詩》

線香花火 《詩》

「線香花火」

僕は恋をする様に
君の詩を読み続けています

夏には夏の歌があり

夏には夏の花が咲く

線香花火が燃えています

チリチリと熱く揺れながら

真っ赤な最後の赤い玉

落ちない様に優しく包んだ

小さな炎の花弁が
今も僕の心で咲いてます

君の居た夏 明日の風と君の海

星になれなかった僕等

君との約束 忘れない

美しく輝く花弁が
永遠に照らす八月の夜

愛しき人へ

僕は恋を

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遠い日の花火 《詩》

遠い日の花火 《詩》

「遠い日の花火」

自己解体の深淵

使い道の無い景色と言葉が

誰の人生なんだと 

何度も繰り返し問いかける

僕は頭に浮かんで来る風景を

心に溜まる想いを

ただ自然に僕なりの
個人的な柄杓で汲み出している

其の結果生じる難解性や
異端性は二義的な問題に過ぎない

其処にある世界に
自分自身が足を踏み入れる事で

心の開放と救済を文体に綴り残す

近代的に構築された造形と

完結された天

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フェルナンデス 《詩》

フェルナンデス 《詩》

「フェルナンデス」

妄想を裁く天使 残像の中の女神

砂まじりの風と極彩色の街

夢を売り愛を買う

無菌室で愛し合う 汚された戯れ

口移しで接種した薬

星のピアスに白い胸元

あの日見た物語を話していた

透けて見える明け方に十字を切り
鏡の中の花を枯れる前にむしり取れ

窓の西角で小さな星を捕まえた

束の間の悪意が踊る

僕には僕が見えない

そして繰り返す日々に殺され 
君が消えて行

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FOREVER 《詩》

FOREVER 《詩》

「FOREVER」

終わらない接吻 

夜に踊る可憐なドレス 

憂いを潜めた甘い香りと其の仕草

記憶の瞳に映る星たち

真実へ伸ばす腕が夢の先に導く

魂の歌詞と鼓動が共鳴し 
其の胸へと抱かれる

街には奇跡が溢れ 
真白な羽が舞い降りる

髪に肌に触れ 

言葉途切れに愛を探した

明日を照らし出す
夜空に輝く小さな星と

蒼を湛えた澄み切った空と

風に吹かれる君が居る

僕の傍 

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最後の言葉 《詩》

最後の言葉 《詩》

「最後の言葉」

沢山の記憶の積み重ねによって

僕等の人生は成り立っている

僕等は暗い空に浮かぶ雲の周りに
希望の縁取りを探し求める

頭上の暗雲の中に

幾つもの願い事を書き連ね

その裏側にあるはずの
明るい輝きを放つ太陽を心に描く

何処でもいいから遠くの国に行きたい

君はそう言った

その言葉は僕の中に眠る
僕自身の代弁でもあり

ふたりは胸の中にある 

それぞれの

暗雲と光を抱

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片翼の天使と片足の僕と 《詩》

片翼の天使と片足の僕と 《詩》

「片翼の天使と片足の僕と」

片翼の天使が眠っている

ベッドに眠る彼女には
沢山の管が繋ぎ込まれている

窓の外には風は無い

人の形をした化け物達が沢山居て

僕等を狙っている

僕はバス停の側に咲いていた

小さな花を摘んで持って来た

ガラスの瓶に其れを飾る

ごめんね 
高価な花束は買えないんだ

海で拾った綺麗な貝殻と
山で見つけた水晶の欠片

片足しかない僕だけど

誰かさんの様には

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死んだふり 《詩》

死んだふり 《詩》

「死んだふり」

必要悪が裏の正解領域で

息を殺して生き続ける

人の形をした程度の分際が虹を欲する

辿り着けない朝の向こうに
見えた汚れた海

大人の顔をした愛想が

一方的な暴力を振う

生まれてきた喜びや
生きて行く上での業だとか

慢心と理想論 

遠いと思い込んでいた天国と地獄

誰も悪くないのなら 
何故 僕等は泣いている

夢の奥底 今は黙って死んだふり

傷口を固めた嘘が 

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道化師の告白 《詩》

道化師の告白 《詩》

「道化師の告白」

現実を何も語らない事により 

何かが語られている

色彩を失くした平板な世が血を流し 

人格の一部を欠損した歪な夜空が
消えそうな月を映し出す

感覚を喪失した星は輝き方を忘れる

僕の固定された視界には

道化師の告白が終わり無く
文章化されて行く

彼は決して真実を語らない

モノクロの街で薔薇を売る女

暗室での祝祭 完結された愛

純文学とは無関係な風が
真夜中を彷

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樹木の影 《詩》

樹木の影 《詩》

「樹木の影」

垂直な壁に映る樹木の影

其処にはあるのは 

自分では無い誰かの影か 幻想か

言葉は投げかけられ消えてゆく

並列的に並んだ美質と欠落が
境界線を超え存在する

其の延長線にあるものは

樹木では無く私自身だった

解析不能な特質は決して
開かれる事は無い

定規で線を引く様に綺麗な均整

其れと同種の物を身体に纏う

血肉にもならない言葉の羅列に
埋もれてゆく

私は存在の狂

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白い月の光 《詩》

白い月の光 《詩》

「白い月の光」

夜明け前の白い月に 

僕達ふたりの

それぞれが抱える
事柄の差異が映し出される

その白い月は夜空の端っこで

暗示的な光を微かに放つ

僕は迷いの中で朝を迎える

其れは圧倒的な混乱とは違う 

確信のある答えが
欲しかっただけなんだ

彼女は時計を見つめている

その針は宿命的な時を示す

僕は彼女の背中をそっと
指先で撫で

君は静かにうなずいた

所有し所有される事の

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君に贈る詩 《詩》

君に贈る詩 《詩》

「君に贈る詩」

君は詩なんか読まない

僕の書いた文字は透き通っていて

君の瞳には映らない

窓からは低くたれこめた
暗い雲が見えた

そうかもしれない 

僕は口に出してそう言った

僕がペンを持った瞬間に
言葉は消えて無くなってしまう

詩を読む様に独り言を呟く

君は詩なんか読まない

静かに雨が降りはじめた

Photo : Seiji Arita