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詩 『雪の記憶』

作:悠冴紀

雪を見るたび 私はいつも
何故だか君を 思い出す

君の喪失は受け入れない
受け入れられるわけがない

だがこの悲しみは
引き受ける
あえていつまでも
悼み続ける

忘れるつもりなど更々ない
君との日々も その別離さえも

たとえそれが楽な道でも
私は決して
忘れない

君の記憶は
心の宝

悲しみの深さは
その大きさの証

失うに堪えない関係があること自体
恵まれている証拠なのだと
皆早く気付くべきだ


かつて私には
誰もいなかった

失うものがない身の上を
強みなのだと捉え違えていた

情の欠片もなく 冷ややかで
鬼畜同然の人でなし……

君との出会いが
私を本当の意味で「人」にした

時折頬を伝うこの涙が
ついに枯れ果てて止まるとき
私は再び「人」ではなくなるだろう

前向きどころか退化して
かつての鬼畜に逆戻り

だから
「悲しむな」とは言わないでほしい

喜びも 悲しみも 苦しみさえも
この身の一部として刻んだものすべて
君のいない先々にまで携えてこそ
本当の意味での前進だ

それが私の向き合い方

君は私の良心になった
一生失えない指南役

去れども尚
私を導き
悲しみをもってさえ
学ばせる

だから改めてここで
宣言する

君の喪失は 受け入れない
君のいない事実を認めはしても
忘却という道だけは 選ばない

この悲しみを丸ごと引き受けて
昨日のことのように悼み続ける

楽ではないと知りながら
心の風穴を埋めずにおく

もう決めたんだ

多くを風化していく時の流れに逆らっても
私はあえて 君の記憶を手放さない

── 窓の外を見て
この痛みはどこか
あの雪に似ている

冬の寒さを儚げな美に昇華して
凍える思いさえ 至福に変える

白くて 自由で 軽やかで……
仄冷たい肌触りを保ちながら
心象の空を舞い続ける ──

*********

※ 2016年1月作。

注)シェア・拡散は歓迎します。ただし、この作品を一部でも引用・転載する場合は、必ず「詩『雪の記憶』(悠冴紀作)より」といった具合に明記するか、リンクを貼るなどして、作者が私であることがわかるようにしてください。自分の作品であるかのように配信・公開するのは、著作権の侵害に当たります!

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