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詩 『巡礼~廃墟のホタル』

作: 悠冴紀

荒野から荒野へ
廃墟から廃墟へ

誰も訪れなくなった場所を訪れ
乾いた風景を眺め歩く

そこはかつて川のあった場所
あとから塗り込められた灰色のコンクリートも
今は朽ち果て
さながら墓地の佇まい

川辺を舞っていたあの蛍たちは
一体どこへ消えたのか……

二度とは戻らぬ初夏の灯火
彼等の水は枯れてしまった
草木も川も 今はない


私はここに 嘆きに来たのか?
いや、心は至って穏やかだ


誰もいない寂れた場所に惹かれては
何かの跡地をなぞって歩く

跡地から跡地へ
枯れ地から枯れ地へと……

何かが失われた気はしない
巡り来ては 過ぎ去っていく
事物の移ろいとは そういうもの

潤いも乾きも
同じこと

隆盛りゅうせい凋落ちょうらく
同じ場所にある

生命の残り香に惹かれては
死地を訪れ
跡をなぞる


ここはあの蛍たちの輝いた最後の地
多くを刻んだ水の都跡

去りしもののため静かに歌い
私は独り 余韻を愉しむ

追悼ではない
これは巡礼
今や唯一の安らぎだ


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※ 2013年6月の作品。


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