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詩 『ヘンデルとグレーテル 〜石のしるべ』

作:悠冴紀

流行病に 閉じこもり生活

しばらく離れて暮らす間に
皆ずいぶん変わったものだ

まるで魔法にかけられたかのよう
あるいは魔法が解けたのか……?

人も世界も
変わり果てた
醜く浅ましく暴力的に

以前と同じ姿のまま
別人と化してしまった人々
友への接し方さえ
いとも簡単に忘れてしまった

これまでに重ねた月日は
一体何だったのか ──?

なんとあやふやで脆弱ぜいじゃくな自己同一性

元より動乱に免疫のある者は
さながら酔狂に囲まれたシラフの気分
呑んでも酔えないのは ある種の呪いだ

長年続いた関係が
僅か数年の隔たりにより
継続不可能な過去に堕ちる現実

繋ぎ止めるもののなさすぎる
あまりにももろい幻想の世界
もはや虚しさ以外に何もない

月夜に輝く石のしるべ・・・
フェイクの多さにうずもれていく

数多の贋物がんぶつを掻き分けて
手探りに掻き集める闇夜の石

だが帰り道へは続かない
辿れど今は勝手が違う

天とも地とも知れない未知へのしるべ

時代の激変に押しやられて
一気に身辺整理が整ったようでもある

思えばこんなことも
初めてではない
喪失とは往々にして
そういうもの

終わりのようにしか見えないのに
思いがけない始まりが来る

明けていく空と
千切れていく雲

ただ 今は少しばかり
疲れすぎている

長年にわたり蓄積された幻滅と失望
何かを巻き返すには余力が足りない

石のしるべを辿った先は
一体どこへ続くのか
あるいはもはや続かないのか

いずれにしても
退路はない

ゆるゆる移ろいを見守るほかないのだろう
どのみち希望など
ずっと以前から尽きていた

いっそせいせいとして晴れやかな気分

結局最後は運任せだ

*************

※2022年8月の作品

私のここ一年間の記事を見てきた人たちには、凡その事の流れは伝わっているかと思いますが、つづきがあって良かった、という話です、ハイ A^_^;)

ちなみに、大抵の人は知っているかと思いますが、一応サラッと解説しておくと、タイトルの『ヘンデルとグレーテル』というのは、グリム童話の中の一作で、飢饉に苦しむ貧しい親が、口減らしのために子供たちを捨てようとする物語です。山奥に置き去りにされた際、兄妹の兄ヘンデルは、あとで迷わず家に帰れるように、暗くなると光る小石を行きがけに点々と置いて残し、生き延びるための道しるべにしたという。

(👆お菓子の家が登場してきたり、魔女に喰われそうになったりする、あの有名な物語ですよ。私は不動産王の強欲爺の支配するおどろおどろしい本家にいた幼少の頃、眠り際にレコードでこの物語を何度も聞き、鮮烈に記憶に焼き付いています😅)



── え? 今年の振り返り?
毒舌家の私にそれを訊きますか?笑

いいですよ。お答えしましょう。
正直言って、反吐へどが出るほどクソな一年でした。

特に印象的な出来事について、触り程度に100分の1ぐらいは書いてきましたが、ここnoteでは書き切れない言外のところで、人間性というもの自体に改めてウンザリ、ゲンナリとしてしまうようなことが立て続けに色々とありました。最後に思いがけないチャンスが巡ってきて、ちょっとだけ浮上できたとは言え、人間的な事柄全般に嫌気がさして、気を紛らすために仕事に逃げた、というのが実態ですしね💧(それもあえて、本業とは真逆のタイプの仕事に💰)

私個人の関わり合ってきた身近な出来事以外にも、この2022年は、「こちらがこういう姿勢さえ守り続けていれば決して攻撃されず、自国の平和を維持できる」という、ほんの一年前までの性善説に基づいた安全神話が、脆くも打ち破られたおきて破りの戦争(侵攻)勃発の年ですしね。(自分に非がなければ攻撃などされない、攻撃される側に問題があるから不穏なことが起こるのだ、などと、こんな状況を目の当たりにしても未だに思い続けていられる阿呆は、理不尽な目にあわされた経験のない よほどの甘ちゃんで、誰かに与えられた選択肢の中でのみ生かされてきた教科書通りのガキにすぎない。薄っぺらな発想で加担する側に回る、最も忌むべき人間のクズどもだ)

なんとなく2~3年分ぐらいの記憶だと思っていたことが、よくよく振り返ってみると全部この一年間に起きた出来事だったんだ、と思うと、信じられません。考えれば考えるほど、総じてクソでしょう、クソ!!

私なぞは、もう何もかもがどうでもよくなって、人間に向けてものを書く意欲すら消え失せてしまい、内心「私はもはや作家ではない。ついに完全に筆が止まってしまった。そのときどきの思いを切り取った断片として、短い詩作品やブログ的な軽めの記事を書くことならあるだろうけど、本気度マックスで多大な時間と労力を要するテーマ性の強い文学作品(ちゃんとした書籍)は、もう書ける気がしない。そもそも、まとまった長い文章(特にフィクション小説とか)自体に殆ど需要がないように見受けられる。だから事実上の引退だ。書いたとしても、本として出すかどうか分からない。そうする理由が見出せない」とか思っています。なんかね、そういうことをする自分の存在自体が、要らなくなったようにしか思えない。それが現時点での私の心境です。

もう何もかもが、アホらしい。


まあそんなこんなで、今や世界中が暴力三昧の荒れ放題で、来年がどんな年になるのやら、自分が何をどう塗り替えていくのか、いかないのか、今は想像もつきませんが、とりあえずまずは、自分の肉眼で捉えられる範囲内だけでも、平和的な正月となることを願っています。

最後の最後に毒を吐き捨てて締め括るという困った年末記事になってしまいましたが、私の記事を繰り返し見に来る人たちは、必ずしも綺麗事だけ聞いていたいような人たちばかりではないと思いますので、最後に少しだけ爆弾を投下しておきました💣(←私にしては、これでもかなり控えめですけどね😅) これみよがしにポジティブな言動だけが、癒しや励ましになるとは限らない。今回はそういうことを理解できる少数派に向けてのみ、書いています。

それでは、皆々様も、来年はいくらかマシな一年を迎えられますように。2023年もよろしくお願いしますm(_ _)m

注)シェア・拡散は歓迎します。ただし、私の作品を一部でも引用・転載する場合は、「詩『ヘンデルとグレーテル~石のしるべ(悠冴紀作)』より」と明記するか、リンクを貼るなどして、著作者が私であることがわかるようにしてください。自分の作品であるかのように配信・公開するのは、著作権の侵害に当たります!!

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詩集『この歪な世界の最果てに』悠冴紀作

※悠冴紀のプロフィール代わりの記事はこちら▼

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