◆「人間の目的は自己のナルシシズムを克服することだ、と。この原理がもっとも根本的なところから表現されているのは、仏教においてだろう」(エーリッヒ・フロム(渡会圭子訳)『悪について』118頁,ちくま学芸文庫)。 個人と集団それぞれについて、ナルシシズムと現実との関係が分析される。
ナルシシズムに「自己愛」という訳を当てる違和感については、かつて記した。「愛」自体が多義的な概念で、少なくともエロス、アガペー、フィリアの3種類ある。仏教での「愛」には、「執着」の意味も強い。これらをうまく考え合わせた訳語があるか疑問だ。「ナルシシズム」のままで良いのでは?