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自己愛と学業成績の複雑な関係

割引あり

最近は,就職活動にも大学のGPA(Grade Point Average)が重視されるのでしょうか。以前に比べて,進路や留学などGPAが用いられる場面が増えています。

それで学生たちが何をしているかというと,できるだけGPAを落とさないように難易度の低い科目を探して,たとえそれが自分の興味・関心とはそれほど関係のない科目であっても履修していく,という現象が生じるわけです。はっきりいって,大学の教育にとっては大問題が発生している可能性もあります。これを変えて行くには,GPAに変わる指標を造るしかないでしょうね……。


GPA

大学の成績が重視されるのは,近年の日本だけではありません。海外でもGPAは,雇用可能性や収入の多さを予測する研究が行われています。

では学業成績の個人差は,何から予測されるのでしょうか。知能,勤勉性,情動知能などは,GPAを予測する要因として報告されています。しかし,大学における学業成績の大部分は,これらの要因で十分に説明できるとはとても言えません。まだまだ重要な要因が残されている可能性があります。

ナルシシズム

ナルシシズム(自己愛)は,自分自身が重要だという感覚,他者よりも優越した感覚,特別で特権を持っているような感覚などを特徴とします。典型的には,誇大で壮大な感覚を伴うナルシシズムで,社会的な大胆さ,高い自尊感情,傲慢さ,特権意識を伴います。対照的に,過敏で傷つきやすいナルシシズムもあり,不安や不安定な自尊感情,他者不信,ネガティブな感情を伴います。

ナルシシズムは,精神的な強さに関連し,学業成績の向上につながる可能性があるともいわれています。しかし,ナルシシズムとGPAとのあいだにはマイナスの関連があるという報告もあります。これは,ナルシシズムの内容にも寄りそうです。誇大な側面のナルシシズムは成績への自信を介してGPAとプラスの関連を示しましたが,直接的にはマイナスの効果を示していました。ナルシシズムは,GPAを高める要素と低める要素の両面をもつようです。


予測

ナルシシズムの高い人は,そもそも自分自身の能力を過剰に見積もる傾向があります。この過剰な見積もりが,GPAに対してプラスに働くこともあれば,マイナスに働くこともありそうです。

このあたりの関連についてくわしく検討した研究があります。こちらの論文を見てみましょう(Ego vs. reality: Narcissism and the discrepancy between academic expectations and achievement)。

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