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#エッセイ

星新一と小論文、模倣の風景

星新一と小論文、模倣の風景

 私と星新一先生の作品との邂逅は、小学5年生の夏でした。
 宮沢賢治をはじめ基本的な児童文学に触れながら、ミヒャエル・エンデから海外文学作品にも手を伸ばして次々と読んでいたその頃、短編よりさらに短い「ショートショート」との出会いは衝撃的なものでした。

 この短さに凝集された物語。
 それ一本で長編も書けそうなアイデアが次々と繰り広げられる世界に、私は夢中になりました。小学校を卒業するまでには「1

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カルテと4歳児

カルテと4歳児

 自分で自分の治療をしている関係で、我が家では漢方薬が日常です。私よりもずっと複雑で深刻な病状の妻についても、医者に匙を投げられてからは私が主治医ですから、必要に駆られた結果、薬棚には漢方薬が溢れ返っています。

 病名は伏せますが妻は医者から三度「死が近い」と宣告されました。三人の医者から別なタイミングで其々云われていることですから、残念ながら相応に信憑性のある現実です。

 幸いにして小康状態

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春の轍

春の轍

平安の春の女神は、牛車に乗って来たのだろうか。

御簾を揺らす風のなまめかしさに、想い人の訪れかと胸をときめかす女たちにとっては、少し意地悪だったかもしれない。

遡って平城京の都、奈良駅の西の方角に「佐保路」と呼ばれる道がある。
私の「恋仏」がいる西大寺から東大寺転害門へ向かって延びる古墳と遺跡と恋の寺の道だ。

何よりもその名がいい。

大和の春は「佐保姫」が紡ぎ、秋は「龍田姫」が織る、という

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そして10年が過ぎた。

そして10年が過ぎた。

離婚してから今年で10年になる。
実はまだ9年だと思っていたのだが、5年ごとに満期金をつけた共済の証書を見て勘違いに気づいた。
夏の初めには思っていたより1年早く満期金が入るのが嬉しい。

とはいっても、大した額ではないし、低金利の世の中でそもそも自分のお金を掛けていただけなので、さほどお得というわけでもない。
でも、そうしないで自分でよけておけたかというと、たぶんそうはならなかったと思う。

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なんちゃって選挙公約

なんちゃって選挙公約

一代没収制を提案する。
つまり、可愛い子や孫のために、1円たりとも遺せないということである。

自分が稼いだものは、自分限りで使いきる。
孫の学資だかに祖父母が使える上限みたいなのがあるが、私の思いはあれと真逆である。

そういうことをするから、貯め込むヤツは貯め込むのだ。
死んで遺ったものはすべて没収され、福祉予算に回すことにする。
だから、使いきって死ぬ。
消費が増え、経済が活性化する。

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大人になれない大人たち?

大人になれない大人たち?

 西洋の人から見ると日本人は容姿が幼いばかりか精神年齢が低く見られがちと聞いたことがある。私の数少ない経験ではあるが、欧米はおろか日本以外の国の人々は、年齢以上に大人だなあと感じることが多い。当然ながら外国人の全てが精神年齢が高い訳では無い。しかし自分の意見をハッキリと言葉で主張する点においては、もじもじしていたり何を言っているか分かりにくい日本人との違いを感じる。

 コミュニケーションの仕方の

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報われない覚悟

報われない覚悟

 例えば恋をしたときに、それが片想いで終わることもあるでしょう。成就することもあればしないこともある。それが恋というものです。

 例えば夢を叶えたいと努力を重ねていたとしても、その夢が叶わないこともあるでしょう。自分の努力は、掛けた時間は何だったのかと打ちひしがれるかもしれません。叶うかもしれないし、叶わないかもしれない。それが夢というものです。

 例えば暗く悲しい日々を過ごしているときに、未

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テレビが日本人を『1億総バカ化』した?

テレビが日本人を『1億総バカ化』した?

「テレビが日本人 1億を総白痴化する」

もう半世紀近く前か。わたしが20代のころ、過激にして辛辣な表現で世相をぶった切っていた大宅壮一という評論家の発言だ。今なら完全に「アウト!」。差別用語が入っている。

だが私はあえて、その時の言葉をそのまま冒頭に記した。それほどに衝撃的な発言だった。(差別用語という概念のなかったころの発言だから、そこは事実を記しただけと思ってください)

タイトルでは「バ

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追憶/鍼灸の師

追憶/鍼灸の師

 それは私が医学生の頃、弓道で腰を痛めて歩くのが難しい状態のことでした。縁あって鍼灸の先生の下に通い、治療を受けながら脈診や鍼灸治療学の基礎を教えていただく機会を得ました。

「惺仁君。病気は自分で治さなきゃ治らないよ。」

 当時、腰痛以外にも幾つかの問題を抱えていた私はその言葉を何度も咀嚼しながら理解しようと努めました。

「僕は君の身体が元気になるように手伝うことはできるけど、健康になるため

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卵よ、小さな宇宙よ

卵よ、小さな宇宙よ

冷蔵庫の中にほとんど何もないとき、料理を作る気がわかないとき、時間がせっぱつまっているとき、何はともあれ、卵焼き。

わたしが子供のころは卵はごちそうだった。遠足の日には必ずゆで卵がついた。おしゃれなお菓子もデパ地下で買うようなお惣菜もないころ、みんなが平等に貧しかったころ、ゆで卵はどの子もリュックサックに入れていた。

卵といえば思い出す。遠足の前の日、母が頬に血を流して帰って来た。

「農家の

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語り継がれた一枚の写真、戦時中の台湾で軍事訓練の父

語り継がれた一枚の写真、戦時中の台湾で軍事訓練の父

去年、長兄が84歳で亡くなった。亡くなる前に兄は父の遺品として受け取っていた台湾時代の写真をすべてデータ化して次兄やわたしたち妹へ送ってくれた。

私は、今、初めてUSB を開いた。何となく気が重くて今まで開かなかったのだ。長兄には申し訳なかったと思っている。

一枚の集合写真。教師だった父が軍事教練か何かで生徒を引率して行った時の写真だろうか。

私は台湾台北市でアメリカ軍の空襲下に生まれ、翌年

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FP(投資を始める前に ステップ1)

みなさんこんにちは。
昨日の土曜日は大阪で私立高校の受験があったんですね。息子が休みとなり知りました。保護者と受験生のみなさんお疲れ様でした。
結果が実るといいですね!🌸公立高校の受験も控えていると思いますが、たまには息抜きもして下さい。ストレス緩和に効くローズマリーティーでも飲んで一息入れましょう✨

今日は投資について書いてみたいと思います。多少迂遠ですが、お付き合い下さい。

世界的な株高

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大抵のことは半分にするところから始まる

大抵のことは半分にするところから始まる

 貴方の言うことは合っているけれど間違ってもいる。半分は当たっているが半分は外れている。言わんとすることは分からないでもないが。独りよがりだ。

 そんな風に言われたことは無いだろうか。

 これを言われると一聴して頷ける場合が多いかも知れないが、それは当たり前のことを言っているからだ。貴方の考えが100パーセント正しいのは貴方の中の世界でだけ成り立つ話で、相手には当然相手なりの考えがあるのだから

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あの頃僕らはアホだった〜2003年・13歳前編〜

あの頃僕らはアホだった〜2003年・13歳前編〜

中学2年生、13〜14歳って最強の年齢だと思う。

進路、気にしなくて良し。
勉強、そこまで難しくない。
環境にも慣れて、特殊な行事も少ない。
つまり、自由な時間も多い。

こんな環境下で、バカ揃いの我々が大人しくなるわけがないのである。

僕らの学校の男子は、イケメンもオタクもスポーツマンも落ちこぼれも、かなり分け隔てなく仲が良かったと思う。
中高が一貫だったので6年間同じ環境にいる、というのは

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