長谷川美智子
身近にある生活の場、ショッピングモール。そこで交錯する様々な人々の人生。そのささやかな喜びと哀感を描きました。
老後の資金を投資詐欺で失った人々の話
草を愛する夫と妻の戦い。
ウィリアムに 習う40分。 私の頭の中はこんな感じ(トップ写真) 目いっぱい、いろいろなものが詰まっている。 私なりに整然と詰め込んでいるのだが、 ウィリアム先生から見ると ??のオン・パレード 私の受け答えに困惑しているようだが、 不快な困惑ではなく 前向
ぬいぐるみのミケをリュックにつけて歩いていた。 後から来た見知らぬおばさんが、 「ネコは寂しがり屋だから、もう一匹つけたほうがいいですよ」と声をかけてきた 。 近くの雑貨屋で黒猫を買って、その場でリュックにつけた。 で、いつも二匹連れて歩いている。 ぬいぐるみのニャンコは、 良いニャンコ。 おとなしくて、ケンカもしない。 お腹が空いたとせがんだりしない。 放っておいても泣いたりしない。 私のニャンコは ぬいぐるみ。 もう猫を飼うことはしない。 できない。 今ではぬいぐ
屋根の上、 猫よ、 あなたは 何見てる。 視線の先に何がある。 背中が光る 冬の日に。 冬の朝三毛猫の背にそそぐ陽(ひ)や
郵便局まで歩く。 静まり返った道には ゆきかふ人影もない。 コロナ発生以前は 見知らぬ人でも 笑顔で挨拶を交わした。 そんな土地柄だった。 今は人影もない。 猫が一匹、 道の真ん中に座っていた。 猫は私をちらと見て少し嗤った。 確かに嗤った。 恐ろしや猫よあなたは何嗤ふ 猫は応えた 君よ知れ人類最後の日は明日 私は詰め寄った。 人滅びそのあと地球どうなるの 猫は少し嗤って 君よ知れ無駄な争いなき猫惑星 終わり 猫だけが
英会話スクールのすぐ近くに易者さんのコーナーがある。 ふっと寄ってみた。 「タロットで見てみましょう。おー、こんなに良い札が揃って出ることはめったにない。世が世ならあなたは一流会社の社長かマネジャー」 ま、そうかもね。 「あなたにはオール・ラウンドの才能がある。人を率いて何かを進める並外れた能力がある。運勢では、あなたは他人を率いる軍団の長」 ふんふん、一部、当たっている。 「あなたは外国語が好きですね」 今、そこの英会話学校から出てきただけだから、確かにね。易者
受付でちらと見たかっこいい青年。 こんな人に習いたい……。 授業スタート10分前。 なんと彼が近づいてきて、 「I teach you English,OK?] 笑顔がㇲ・テ・キ~ 彼が私の先生だって! ウィリアムに習う愉しさ40分
てふてふは海を渡って朝鮮半島をめざす。 消えた国、渤海をめざす。 途中で代替わりしながら、渤海をめざす。 てふてふは渤海の最後の民。 姿を変えて渤海をめざす。 征服し、征服され、今は消えた渤海国。 そこはてふてふの故郷。 かつて大和といふ国が 幾度も渤海を征服しようと兵を送った。 渤海の民はてふてふに姿を変え 生き延びた。 満州と名を変えられても 渤海国は生き延びた。 幾多の戦乱を乗り越えて てふてふの国として生き延びた。 今日も朝鮮海峡を 幾万匹のてふてふが
朝7時。 玄関を出ると秋日和の風のなか、 大きなてふてふが舞っていた。 ド派手な模様の羽根を忙しそうに振りながら、 風を受けて舞っていた。 あなたはなんて大きいの。 なんてド派手な衣装なの。 猛暑のなかをどうやって生き抜いたの。 いろいろ訊いたが、 てふてふは何も言わず ただただ舞っていた。 短い命を生きることで精いっぱい、 人間にかまっている時間はないのだ てふてふも生きる歓び猛暑果つ
楽器は何もできない。 出来ることなら、 おもちゃのピアノでもいいから 弾いてみたい。 80歳目前になって、突然、思った。 子どもの頃、 ピアノのある家の門の前に集まって 漏れ聞こえ来るピアノの音を 神妙に聞いていた思い出がある。 終戦後、10年かそこら、 ピアノは 特別な人だけに許された 贅沢だった。 今はフツーの子供が フツーに習っている。 誰でもトライできる楽器になった。 あこがれのピアノに触れてみたい……。 通販のおもちゃの楽器のページに 目が釘付けになる。
血液検査でも造影検査でもガンの痕跡が見つからず、 医師が「たまにこういうこともあるんです」と。 マーカーは10以下でゼロに限りなく近いとのこと。 今は、 3週間に一度 病院に検査に行っていますが、 普通に生活しています。 苦しい闘病生活を送っているわけではありません、 幸いなことに。 文を書いたり、友人に会ったり、 忙しい毎日です!(^^)! 新聞に書いてありましたが、 『癌細胞は突然消えることがあるとのこと』 理由は分からないそうです。 たくさんの検査をしましたが
19日付け毎日新聞『女の気持ち』欄に 私の「戦争を知る花」が掲載されました。 ある方の、 「今では、カンナの花の歌、知らない方がほとんどでしょう」という(趣旨(だったと思います)投稿に、 「知っています」という反響が多く寄せられ、 私も、懐かしい花だったので 投稿。 掲載されました。 地域によって掲載の日は違うかと思いますが、お気づきの方、読んでいただけたら嬉しいです。 花は時代を映す一面があると思います。 シクラメンやカトレア、チューリップなど お洒落な輸入の花な
本箱の整理をしていて、 ヘルマン・ヘッセの本を見つけた。 『庭仕事の愉しみ』 本を開く ヘッセの庭を描いた絵画や写真を見ていると 懐かしさと哀惜の思いがこみあげてきた。 「卒論を共同作業で書こう。 ヘッセの『デミアン』をテーマに」 一年先輩の男性に誘われた。 なぜあの時気乗りしなかったのだろう。 彼は確かに私を好きだった。 だがそのとき私は 『ウェストサイド・ストーリー』のトニーに、 主演のリチャード・ベイマーに、 憧れていた。 あの人と いっしょに卒論を書いて
小学5,6年から中学にかけて、鹿児島市の学校に通っていた私は熱心な標準語教育を受けた。いや、受けさせられた。 「方言は田舎言葉です。使ってはいけません」 私の通っていた学校独自の方針ではなく、日本全体で標準語教育が推し進められていたのだと思う。 『方言は田舎言葉。標準語を使えなければ東京で馬鹿にされる」 そんな価値観が教育現場にはあふれていた。 ラジオの『学校放送』を皆で聞き、標準語を教え込まれ、 「『カゴンマ弁』を使ったら廊下の拭き掃除じゃっど、よかか」 先生は『カゴ
1・林檎食ふひたすら食ふはガンに効くと何かで読んだ記憶の導き 2・久しぶり会っておしゃべり80代よれよれでも口だけ達者 3・地毛抜けた絶望の果て辿り着くこんな頭もファッションなのね 4・看護師と医師何ゆえに盛りあがり私を置いて何処に行くの 5・黒い髭マスクの隙間に渦を巻く医師は大きなかたつむりみたい 6・看護師に薬の数きいている医師の指ひいふうみいと折り返し 7.青い服実習生は涙声病気があるから正規になれぬと 8.薬飲み検査検査の毎日にもううんざりよ縁切りたい 9「体調は」と
田子の浦にうち出でて見れば白妙の富士の高嶺に雪は降りつつ 山部赤人・新古今集 私はこの歌の「に」に「がっかり」してしまう。 万葉集では、 田子の浦ゆうち出でて見れば真白にぞ富士の高嶺に雪は降りける 「ゆ」というのは、時や場所の「経過・移動」を表す「格助詞」。 難しい文法的解釈は抜かしてこの歌を口に出して読むと、 理由は分からないが「ゆ」のほうが「時の経過」が感じられる。 また、朗詠すると、 「ゆ」のほうが「旅人が田子の浦を出て目に
このイラストのような空間が欲しい きちんと片付いているわけではないが 乱雑でもない それなりに統一された 知的な空間 それは 今の私には 持つことのできない贅沢 毎日、薬をチェックし 記録帳に体温だの血圧だの体重だの 記録する 几帳面に 整理整頓しないと 一日で訳が分からないことになるのだ 間違って多く飲んだら大変なことになる(らしい)薬の袋に 「朝飲んだ・夜飲んだ」と書き 病院提出用の記録にも チエックを入れる 部屋の掃除 食器棚の整理整頓 やることは途切れない