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魔法使いの弟子日記

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服の魔法を使えるようになるために、洋裁学校のことや、その時の気持ちをツラツラ紡ぎます。
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#エッセイ

HELLにあ

HELLにあ

こんなことしてる場合じゃないのに。

大事な時に限って私の体は言うことを聞かない。

ヘルニアだと言われて、もうすぐ一週間になる。

毎日、だくだくの汗と、さながらロボット歩きで
“ただ普通に歩くこと”が、どれだけ素晴らしく、
尊い行為だったのかを毎秒思い知らされる。

たった少しの階段が、途方もなく高い壁に見えて
数メートル先のコンビニが、果てしなく遠い。

同じ姿勢と大荷物が腰に負担だからと言

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ラミパスパターン

ラミパスパターン

あれ、私ってこんなに上手だったんだ。
もう、不出来なんて思い込まなくて大丈夫だよ。

昨日までの私が、にっこり微笑んでくれたから。

❄︎ ❄︎ ❄︎

長かったパターン検定の道がようやく終わった。
この1ヶ月、夢の中でもパターンに追われていた。

昔から、本番前に必ずネガティブになる私。
過度なプレッシャーを自分にかけ過ぎる私。
そして、いつまでたっても自信のない私。

「うーん、微妙。カーブの

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エツの渦中で

エツの渦中で

「簡単に超えられたら困るよ」

あぁ、この子は揺るがない信念を持って、作品に向き合っているんだ。

じゃあ私は?

服飾の専門へ通うようになって、半年ちょっと。

クラスメイトの得意・不得意なんかが、少しずつ
明瞭になってきたように思う。

ものすごく手先が器用で、丁寧かつ完璧な子。
計画性・効率性に長けていて、大変合理的な子。
周りをよく見て、陰でそっと支えてくれる子。

中でも、中学からずっと

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薔薇の槍を片手に

薔薇の槍を片手に

平然と、野に咲く薔薇のように、空高く伸び進み
柔らかな花びらの下に、鋭い槍を忍ばせていく。

圧勝したい。誰かに、自分に、負けたくない。

占い師に「あんたの性格は男だ」と言われた。
野心、野望、成長、支配、権力を好むらしい。

個人の性格を男とか、女とかで括るのは、
非常にナンセンスだけれど、その理由は、
性別なんかでは無く薔薇の槍を持っているから。

これは今月の標語。

生活に慣れることだけ

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ぷぷぷぷらいど

ぷぷぷぷらいど

あの子も、あの子も経験者。

なのに私は。大した経験も積まず、今ここに。

過去や経験を比較しても悔しくなるだけなのに、
邪魔なプライド君が、私だけにある秀でた所を、
探している。無意味なのに。虚しいだけなのに。

2年も洋裁を習っていたあの子や、
最近まで美大に通っていたあの子や、
古着屋さんで長年バイトをしていたあの子まで。

実践的な経験や、芸術センス、服の魅せ方を
学んできた子があまりにも

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ギラつく個性の荒波でも尚

ギラつく個性の荒波でも尚

ここで、本当にやっていけるのだろうか。
不安しかないんだけど。だけど。

ついに、専門学校の入学式。

想定の遥か上を駆け巡るギラつく個性の大渋滞に
もう目が回ってしまう。
隣のお母さんの唖然とした表情、一生忘れない。

全身ショッキングピンクのセットアップ、
何色と言って良いのか分からないカラフルな髪、
地元にいたら「牛」って呼ばれそうな鼻ピ君。

これから服飾を学ぶとは言え、ここまでだとは。

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ミニスカバージン

ミニスカバージン

くるぶし女とは私のこと。

毎日くるぶしが隠れる程の超ロングスカートを履く。
ちょっとでも足が見えようものなら、すぐにペチコートを入れて隠す始末。

そんな私が、中学生ぶりに、膝上スカートを履いた。
2ヶ月かけて自分で作った初めてのスカート。
私だけの採寸の、私だけの型紙の、春らしいチューリップ柄。

完成したは良いものの、ずっとこのスカートを履くのをずーっと躊躇っていた。

だって、恥ずかしいん

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数字パウダー

数字パウダー

今日は、はじめての洋裁教室。
膝丈のスカートを作るために、製図をした。

最初は慣れなかった50㎝の長すぎる定規も、
なかなか真っ直ぐに引けなかった線も、
ちょっとだけ力の入れ方が分かった気がする。

だけど、不思議なのは、いくら合わせても、
ウェストと丈が微妙に合わないということ。

先生と何度も相談しながら、消しては書いてを繰り返す。

それに、洋裁は想像以上に数字を沢山使う。
いや、むしろ数

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魔法使い

魔法使い

こんなにも、心が奪われたのは、踊ったのは、
生まれて初めて。

繊細で美しいビーズと刺繍、
ベルベット生地をふんだんに使ったドレス、
光沢のあるレザーのジャケット、
フェルトのお花をあしらったワンピース、

一瞬でtanakadaisukeさんの虜になった。

そんなtanakadaisukeさんの言葉通り、
このキラキラした服には、アクセサリーには、
彼の魔法が詰め込まれていると思う。

思い出

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私は今も魔女に憧れたまま

私は今も魔女に憧れたまま

小学生の頃、大好きだった本がある。

あんびるやすこさんの『なんでも魔女商会』だ。

腕はピカイチなのに気難しい魔女のシルクと、
可愛いくて誰にでも優しい人間のナナ、
そしてネコで執事のコットンが、
洋服を作って、困っている人を助ける話。

いつも可愛い服をデザインする魔女のシルクが大好きだった。
大人になったら、シルクみたいな魔女になれると本気で信じていた。
魔女になって、可愛い服を作って、みん

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