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「#23 ラーメンを頼んでも炒飯のスープは来る」
町中華やラーメン屋で炒飯の単品を注文すると、ネギが少し入った鶏ガラベースのスープが付いてくることが多い。
シンプルながらコク深い味わいは馬鹿に出来ない美味しさであり、「せっかくだから、お味噌汁代わりじゃないけどこれどうぞ!」みたいな店側の気遣いを感じるとても良いサービスである。たまに溶き卵や野菜の切れ端などが入ってる店もあり、ちょっと得した気分にだってさせてくれる。
ただラーメンと炒飯の
「#20 粉チーズを小皿で出される誤算」
トマト系のパスタに粉チーズなんて、かければかけるだけ美味しい。
イタリアの偉人がたしかこんな名言を残してはいなかっただろうか、そう思うほどトマト系のパスタと粉チーズの相性は抜群である。初めてパスタに粉チーズをかけたのは、家族でファミレスに行ってトマトパスタを頼んだ時ではないだろうか。父親に「これかけてみろ、うまいから」と言われ食べた時の衝撃を、今でも鮮明に憶えている。
もうすでに完成されて
「#14 また浴衣の女性とすれ違いスマホを開く」
まだ上京したばかりの頃は、知り合いも少なく事務所から振られる仕事もほとんど無かった。バイトの面接を受けても感触は悪く、実際に採用の通知連絡もなかった。たまにしっかりとした会社は不採用でも連絡をくれるのだが、電話を切った後の自分が急に不採用の人となって鏡に映し出されるのが恥ずかしかった。
ようやく合格したのはブラック企業のコールセンターで、バイト全員が恐れ慄く社長の口癖は「人を動かすために最も必
「#13 市民プールの匂いが自転車を加速させる」
自転車用のチャイルドシートに座る僕の視界は、父親の背中で遮られ良好ではない。いっそのこと目を瞑って、聞こえてくる音と、漂う匂いと、肌に触れる感覚を頼りに、自分の周りに広がる景色を把握しようと試みる。自転車が前方に少し傾きスピードを増すと、ぬるく漂っていた空気が頬をさらりと撫で、油の切れた耳触りなブレーキ音と共に、電車の通り過ぎる音が頭上で大きく響いた。駅前の坂を下ってから高架下を通り抜けるこのル
もっとみる「#10 明日のパンとして買われた今日のパン」
幼稚園の帰りに母とスーパーへ行くと、「ほら明日のパン選んでおいで」とよく言われた。好きなパンを選べるのは嬉しかったが、棚にたくさん陳列された「明日の」と呼ばれているパン達が可愛そうだなぁと思っていた。チョコレートでコーティングされたり、ホイップクリームが盛られていたり、チーズやマヨネーズ、大きなソーセージまで挟まれたキラキラしたパン達の前で、「あっ、すいません今日じゃなくて明日のなんです」と申し
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