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東大現代文を解くにあたり、本文を忠実に読み取り、なるべく本文中の言葉を盛り込みつつ、し…

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東大現代文を解くにあたり、本文を忠実に読み取り、なるべく本文中の言葉を盛り込みつつ、しかるべき根拠に基づく簡潔な解答例を作成することを基本にします。そして、そのプロセスを再現可能・応用可能なものとして、具体的に説明します。

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  • 2020年~2024年1問(文理共通)

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    東大現代文の2000年度から2024年度までの第1問(文理共通)をセットにしたものです。

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    東大現代文の2000年度から2024年度までの第4問(文系のみ)をセットにしたものです。

記事一覧

東京大学2024年国語第4問 『クレリエール』菅原百合絵

問題文はこちら 設問(一)「ガラスは薄くなっていくが、障壁がなくなる日は決して来ない」(傍線部ア) とはどういうことか、説明せよ。  傍線部アの「ガラス」と「障壁」は…

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東京大学2024年国語第1問 『時間を与えあう―商業経済と人間関係の連環を築く「負債」をめぐって』小川さやか

 前年の2023年第1問と同じく、文化人類学をあつかった説明文であり、東大第1問のあらたな傾向のあらわれかと思われる。  一方で、女性の書いた文章が第1問に採用…

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3か月前
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東京大学2023年国語第1問 『仮面と身体』吉田憲司

 コロナ禍とはまったく関係ない問題文だが、仮面=マスクということからは、ひょっとして世相を若干でも意識した出題かという疑問が頭をかすめる。あるいはまた、仮面浪人…

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10か月前
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東京大学2022年国語第4問 『影絵(ワヤン・クリット)の鏡』武満徹

 第4問では随想がとり扱われることが多く、著者も圧倒的に詩人をはじめとする文筆家が多いが、今回のように他の分野の芸術家が採用されることもある。これまでには、写真…

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10か月前
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東京大学2021年国語第4問 『子規の画』夏目漱石

 これまでの東大現代文にはなかった種類の問題といえる。これまでは感覚的な問題文もあるにはあったが、それでも少なくとも文中に解答に使えそうなことばが点在していた。…

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10か月前
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東京大学2021年国語第1問 『ケアと共同性―個人主義を超えて』松嶋健

 東大現代文の題材に医療福祉がとりあげられるのはそれほど多くない。問題文の趣旨は明確で、設問もひねったものはないため、素直に、かつていねいに論理関係を整理し、解…

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10か月前

東京大学2020年国語第4問 『詩を考える言葉が生まれる現場』谷川俊太郎

 詩をつくる人がことばに対してもっている感性について書かれた文章を題材としている。文系のみを対象としている問題とはいえ、多くの受験生にとってなじみがあるとはいえ…

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11か月前
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東京大学2019年国語第4問 『ヌガー』是枝裕和

 題材となっている迷い子という体験は日常的ではないものの、第4問にしては、わかりやすい文章であり、だれが読んでも明快といえる問題文である。また、設問もおおむね傍…

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11か月前
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東京大学2019年国語第1問 『科学と非科学のはざまで』中屋敷均

 本問については、きわめて異例なことに、著者自身による解答例が公開されている。(著者オリジナルの解答例を公開!)  これを読んであらためてわかることは、著者の書…

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11か月前
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東京大学2018年国語第4問 『緑の色鉛筆』串田孫一

 筆者が伝えようとする主題が明確には示されておらず(少なくとも問題文中には)、読解の難しい文章である。全体を精読し、さりげなく言及された部分も必要に応じて活用し…

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11か月前
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東京大学2018年国語第1問 『歴史を哲学する―七日間の集中講義』野家啓一

 筆者の野家啓一は、つねに論理にもとづく地道な文章を書く哲学者である。歴史を題材とする本問題文でも、丁寧すぎるくらい、論拠がくりかえし述べられているため、理解し…

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11か月前
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東京大学2017年国語第4問 『藤』幸田文

 筆者の子どもの頃の思い出がつづられている。解答のポイントは筆者の意識が徹頭徹尾、父親および父親からの愛情に向いていたことを見抜き、表現することであると思う。 …

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11か月前

東京大学2017年国語第1問 『芸術家たちの精神史』伊藤徹

 この年における入試形式の変化として特筆すべきことは、120字問題と漢字書き取り問題を除く小問、つまり2行問題の数が、4から3に減ったことである。  小問の数を…

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11か月前
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東京大学2015年国語第4問 『ある風来猫の短い生涯について』藤原新也

 第4問にしては、身近でわかりやすい題材の問題文である。設問もおおむね下線部周辺の内容を要約させるものであり、どう理解するか、どう解答を作成するか途方に暮れると…

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11か月前
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東京大学2014年国語第4問 『馬の歯』蜂飼耳

 きわめて「東大国語第4問的」な第4問である。そして、すべての設問が比喩的表現の説明である。特に、設問(一)の(三)の比喩は難解といってよいだろう。  傍線部の言葉…

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1年前
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東京大学2014年国語第1問 『落語の国の精神分析』藤山直樹

 落語家と精神分析家の類似点を述べるという異色の論考。「人間が本質的に分裂していることこそ、精神分析の基本的想定である」としているが、精神分析に疎い私としては、…

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1年前
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東京大学2024年国語第4問 『クレリエール』菅原百合絵

東京大学2024年国語第4問 『クレリエール』菅原百合絵

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設問(一)「ガラスは薄くなっていくが、障壁がなくなる日は決して来ない」(傍線部ア) とはどういうことか、説明せよ。
 傍線部アの「ガラス」と「障壁」はどちらも比喩であり、外国語の不自由さのことである。
 第2段落には「難解な構文をどう訳すか手を焼く」「辞書を引きながら拙いフランス語でなんとか表現しようとして言葉に詰まる」とあるので、外国語の文章の解釈と表現について難渋している様子

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東京大学2024年国語第1問 『時間を与えあう―商業経済と人間関係の連環を築く「負債」をめぐって』小川さやか

東京大学2024年国語第1問 『時間を与えあう―商業経済と人間関係の連環を築く「負債」をめぐって』小川さやか

 前年の2023年第1問と同じく、文化人類学をあつかった説明文であり、東大第1問のあらたな傾向のあらわれかと思われる。
 一方で、女性の書いた文章が第1問に採用されることはきわめてまれであるように思う。
 2023年は古文の第2問も第4問も女性の書いたものであった。ほとんど男性の著者しか想定できない漢文が出題される第3問をのぞけば、女性によって書かれた問題文ばかりとなったことになる。

問題文はこ

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東京大学2023年国語第1問 『仮面と身体』吉田憲司

東京大学2023年国語第1問 『仮面と身体』吉田憲司

 コロナ禍とはまったく関係ない問題文だが、仮面=マスクということからは、ひょっとして世相を若干でも意識した出題かという疑問が頭をかすめる。あるいはまた、仮面浪人ということばを思い起こした受験生もいたかもしれない。

問題文はこちら

(一)「その意味で、仮面の探求は、人間のなかにある普遍的なもの、根源的なものの探求につながる可能性をもっている」(傍線部ア)とはどういうことか、説明せよ。
 傍線部ア

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東京大学2022年国語第4問 『影絵(ワヤン・クリット)の鏡』武満徹

東京大学2022年国語第4問 『影絵(ワヤン・クリット)の鏡』武満徹

 第4問では随想がとり扱われることが多く、著者も圧倒的に詩人をはじめとする文筆家が多いが、今回のように他の分野の芸術家が採用されることもある。これまでには、写真評論家、演出家、映画監督などがいた。本問においては、著名な作曲家である武満徹である。

問題文はこちら

(一)「私のひととしての意識は少しも働きはしなかったのである」(傍線部ア) とあるが、それはなぜか、説明せよ。
 第5段落中には、「巨

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東京大学2021年国語第4問 『子規の画』夏目漱石

東京大学2021年国語第4問 『子規の画』夏目漱石

 これまでの東大現代文にはなかった種類の問題といえる。これまでは感覚的な問題文もあるにはあったが、それでも少なくとも文中に解答に使えそうなことばが点在していた。しかし本問は、「心情について説明せよ」という設問が二つもあることに象徴されるように、文中のことばから作中の人物の思いを類推しないと解けない設問ばかりである。
 事実、この年の入試問題に関し東大が公表した「出題の意図と解答」の「『国語』の出題

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東京大学2021年国語第1問 『ケアと共同性―個人主義を超えて』松嶋健

東京大学2021年国語第1問 『ケアと共同性―個人主義を超えて』松嶋健

 東大現代文の題材に医療福祉がとりあげられるのはそれほど多くない。問題文の趣旨は明確で、設問もひねったものはないため、素直に、かつていねいに論理関係を整理し、解答に反映させる必要があると思われる。

問題文はこちら

(一)「ケアをする者とされる者という一元的な関係とも家族とも異なったかたちでの、ケアをとおした親密性」(傍線部ア)とはどういうことか、説明せよ。
 傍線部アについては、第3段落に「す

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東京大学2020年国語第4問 『詩を考える言葉が生まれる現場』谷川俊太郎

東京大学2020年国語第4問 『詩を考える言葉が生まれる現場』谷川俊太郎

 詩をつくる人がことばに対してもっている感性について書かれた文章を題材としている。文系のみを対象としている問題とはいえ、多くの受験生にとってなじみがあるとはいえず、文章も簡明とはいえない。
 このような問題文に共通する対処法として、問題文中に出てくることばを無理に解釈しようとせず、もっぱら記号論理的にあつかい、解答を組みたてていくことが有効であるように思う。

問題文はこちら

(一)「作品をつく

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東京大学2019年国語第4問 『ヌガー』是枝裕和

東京大学2019年国語第4問 『ヌガー』是枝裕和

 題材となっている迷い子という体験は日常的ではないものの、第4問にしては、わかりやすい文章であり、だれが読んでも明快といえる問題文である。また、設問もおおむね傍線部の周辺部分を要約すればたりるものとなっている。それだけに、簡にして要を得た解答が求められるだろう。
 なお、筆者は『そして、父になる』や『万引き家族』など世界的に評価の高い映画作品の監督として知られる。

問題文はこちら

(一)「その

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東京大学2019年国語第1問 『科学と非科学のはざまで』中屋敷均

東京大学2019年国語第1問 『科学と非科学のはざまで』中屋敷均

 本問については、きわめて異例なことに、著者自身による解答例が公開されている。(著者オリジナルの解答例を公開!)
 これを読んであらためてわかることは、著者の書いた文面から、著者自身の頭のなかにあったことを読み取ることは、やはり至難なのだということである。

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(一)「自然界ではある意味、例外的なものである」(傍線部ア)とはどういうことか、説明せよ。
 本設問を解くにあたり、傍線部

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東京大学2018年国語第4問 『緑の色鉛筆』串田孫一

東京大学2018年国語第4問 『緑の色鉛筆』串田孫一

 筆者が伝えようとする主題が明確には示されておらず(少なくとも問題文中には)、読解の難しい文章である。全体を精読し、さりげなく言及された部分も必要に応じて活用し、筆者の意図をくみとっていく丁寧な作業が求められる。

問題文はこちら

(一)「お膳立てのでき過ぎた与え方は効果が薄れ、時には逆の効果の現われる虞れもある」(傍線部ア)とあるが、それはなぜか、説明せよ。
 傍線部アのなかの「お膳立てのでき

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東京大学2018年国語第1問 『歴史を哲学する―七日間の集中講義』野家啓一

東京大学2018年国語第1問 『歴史を哲学する―七日間の集中講義』野家啓一

 筆者の野家啓一は、つねに論理にもとづく地道な文章を書く哲学者である。歴史を題材とする本問題文でも、丁寧すぎるくらい、論拠がくりかえし述べられているため、理解しやすく、解答もしやすいといえるだろう。

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(一)「その痕跡が素粒子の『実在』を示す証拠であることを保証しているのは、量子力学を基盤とする現代の物理学理論にほかなりません」(傍線部ア)とはどういうことか、説明せよ。
 傍線部

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東京大学2017年国語第4問 『藤』幸田文

東京大学2017年国語第4問 『藤』幸田文

 筆者の子どもの頃の思い出がつづられている。解答のポイントは筆者の意識が徹頭徹尾、父親および父親からの愛情に向いていたことを見抜き、表現することであると思う。

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(一)「親が世話をやいた」(傍線部ア)とはどういうことか、説明せよ。
 筆者の父親が娘のためにしたことを文中から拾ってまとめればよい。
 まず、傍線部アの直前に「自然と親しむように」とある。それから、「私は三人きょうだい

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東京大学2017年国語第1問 『芸術家たちの精神史』伊藤徹

東京大学2017年国語第1問 『芸術家たちの精神史』伊藤徹

 この年における入試形式の変化として特筆すべきことは、120字問題と漢字書き取り問題を除く小問、つまり2行問題の数が、4から3に減ったことである。
 小問の数を減らしたのは、時間をかけて練りあげた答案を書かせる必要性を感じたせいかもしれない。
 また、この問題文は2004年第1問と同じ著者によるものである。東大入試の国語が現在の4つの大問という形式になった2000年以降、同じ著者による問題文はこの

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東京大学2015年国語第4問 『ある風来猫の短い生涯について』藤原新也

東京大学2015年国語第4問 『ある風来猫の短い生涯について』藤原新也

 第4問にしては、身近でわかりやすい題材の問題文である。設問もおおむね下線部周辺の内容を要約させるものであり、どう理解するか、どう解答を作成するか途方に暮れるというものではない。それだけに、なるべく多くの要素を要領よく拾いあげ、わかりやすい解答をつくることが求められると考えられる。

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(一)「なにか悠久の安堵感のようなものに打たれる」(傍線部ア)とあるが、どういうことか、説明せよ

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東京大学2014年国語第4問 『馬の歯』蜂飼耳

東京大学2014年国語第4問 『馬の歯』蜂飼耳

 きわめて「東大国語第4問的」な第4問である。そして、すべての設問が比喩的表現の説明である。特に、設問(一)の(三)の比喩は難解といってよいだろう。
 傍線部の言葉そのものと、本文中の関係箇所の内容から解答を類推していくしかない。

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(一)「日常のなかに、ずぶりと差しこまれる」(傍線部ア)とはどういうことか、説明せよ。
 筆者にとって、「初対面の人と向かい合う時間」がどういうもの

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東京大学2014年国語第1問 『落語の国の精神分析』藤山直樹

東京大学2014年国語第1問 『落語の国の精神分析』藤山直樹

 落語家と精神分析家の類似点を述べるという異色の論考。「人間が本質的に分裂していることこそ、精神分析の基本的想定である」としているが、精神分析に疎い私としては、率直なところその内容に実感が持てない。
 しかし、人間の精神構造というのは、門外漢にはたやすく理解することのできない複雑さがあるのかもしれない。

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(一)「このこころを凍らせるような孤独」(傍線部ア)とはどういうことか、説

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